9 大魔女
両親が出払って間もなく、両親の親友である『アルテアお姉さん』が家に来てくれた。
忙しい中、『イギリス』というところからわざわざ来てくれた。
両親のことはすごく心配だったものの、小さいころからかわいがってくれていた仲のいいお姉さんがいてくれたおかげですごく心が安らいだ。
そして、巧さんが一緒にいてくれるようになってからもアルテアお姉さんはしばしば家によってくれた。
すごく頻繁に、特に両親がいなくなってしばらくは週に1回は寄ってくれたので、『イギリスがいかに遠いか』を知った後は本当にビックリした。
一緒に料理を作ったり、たくさんたくさんいろんな話をしてくれて、もう一人家族が増えたような気がしたものだ。
『私たち、これから家族で親友だよ♪』
すごく年上なのに、すごく色々なことを知っているのに、私と同じ目線でずっと対等な友達と扱ってくれたことが私の心にたくさんたくさんのものを注いでくれた。
だから、私はいろんな人の心に『注いでもらった大切な物を返すため』自分にできることをやりたいと思った。
その後、この『お姉さん』が『童心200%』と大人の知識、配慮でできていて、『ヒッキーで、シャイなニート(自称)』だと判明するまであまり時間がかからなかった。
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魔法少女たちのいた場所が多数の魔法使いの放った業火に包まれても暗黒魔王は油断しなかった。
この程度の攻撃で全滅するくらいなら前回の剣将軍との戦いであれほど簡単に要塞を落とすことなどできなかったであろう。
だから、暗黒魔王は爆炎の前で『阿修羅王』を一旦待機させ、収まると同時に猛攻を掛けさせるつもりだった。
『阿修羅王』は剣将軍と竜将軍の両方を同時に相手にしても楽勝できるくらいの実力がある。だから、竜将軍を仕留めた例の剣士が相手でも十分戦えるはず。
あとは数で押せばこちらの方がずっと有利なはずだ。
そう思っていた暗黒魔王は炎が消えた後に立っていたそいつの存在にわが目を疑った。
(なっ!!なんだこれは??!!!)
爆炎が来ると同時にアルさんは予め張っていた結界を強化した。
同時に結界をすり抜ける力を持つ、ゴーレムを作り上げた。
三メートルを超えるゴーレムはアルさんが作り上げると同時に結界の外に飛び出していった。幸か不幸か、どんな姿をしているか私以外は視認できなかったようだ。
うむ、さすがはアルさん。『この外見』は敵に対して非常に有効だろう。
外見による『心理的な効果』をゴーレムに持たせるとは大したものだ。
まあ、われわれの一人に『かなりのダメージ』が行くかもしれないが、全体で見れば無視できる範囲だろう。
爆炎が晴れ、ゴーレムの姿が周りからはっきり視認できるようになった時、私とアルさん以外の目が…になっているのが見て取れた。
「ミニャーーーー!!!」
そのゴーレムは頭が特に巨大化した『アメちゃん』をデフォルメしたような姿だった。
身長が三メートルを超し、敵の『魔道戦士』より一回り大きいからより『インパクトが強く』感じられた。
「さあ、『巨大SDアメちゃん』!行ってらっしゃい!!」
アルさんが叫ぶと、アメちゃんはその短い脚からは想像もつかない高速移動をし、敵の魔道人形に足払いを喰らわせた。
魔道人形が前のめりに倒れるとほぼ同時に、背中からエルボードロップを落し、着ていた鎧をぶち破った。可愛らしい見かけによらず、『凶悪な破壊力』を持っている。
さらに立ち上がった魔道人形の顔面に飛び蹴りをくらわすと、倒れた魔道人形の顔面にそのまま両足を叩き落として、踏み抜く。
メイン回路を壊されたらしい魔道人形はそのまま爆発四散する。
私とアルさん以外の全員が呆然と見守る中、爆発が収まった後には100体以上に分裂した?SDアメちゃんの姿があった。
SDアメちゃんたちは四方八方に散らばると、魔法使いたち、騎士たちを次々に粉砕し始めた。強いなー、さすがはアルさんのゴーレム!
正直あれとまともにやりあったら今の私でも五分でやりあえるかどうというくらい強い。
元米軍の人達が残していったらしい10体の『魔道機械兵士?』達もSDアメちゃんと一対一では戦闘にならないようだ。
暗黒魔王だけが、何とかアメちゃんたちの猛攻をしのいでいる。
それを見たちーちゃんが結界を抜けて、暗黒魔王に向かって突っ走っていった。
「暗黒魔王覚悟!!」
神那岐の太刀が暗黒魔王の闇の魔力に反応し、その威力を大きく増してきている。
相手によっては最大10倍くらいの威力になるはずの太刀は現在も最大に近いくらいの輝きを放っている。
数合斬り合った後、剣ごと暗黒魔王を叩き斬ると、魔王はそのまま白い炎を上げてその姿が消えていった。
暗黒魔王が消えると同時に要塞に漂っていた闇の雰囲気は急速に薄れ、倒れていた魔導師や騎士たちも本来の魔法界の住民の姿を取り戻していった。
すごいなあ、アルさんとちーちゃん。
ちなみに私は『例の黒ずくめ』に対応するためにずっと警戒を続けていたとはいえ、『解説』以外何もしてません。
アルさんの張っている結界内には転移は不可能なのだから、もう少し動いてもよかった気もするが、『SDアメちゃん』が予想以上に強かったから仕方ないよね♪
ちなみに『SDアメちゃん』に関しては……望海ちゃんは『可愛い♪また出してみて♪』と非常に好意的に捉えてくれたようだが…、美佐ちゃんはアメちゃんのことを慮ってやや、微妙な表情を見せていた。
うん、『若いのに』きちっとした気配りができるすごい子だ。
そして、アメちゃんは……少々トラウマになっているようなので、みんなで相談の上で、そっとしておいてあげることにした。
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「暗黒魔王は『魔道騎士』に監視カメラ、観測器が仕込んであるのに気付いていないようですね。」
モニターを調整しながら白衣のアンドリューが苦笑いしている。
「こんな様子では暗黒魔王はモンスターバスター達に勝ちようがないな。
ここまで頼りにならない奴らとは…まったく、われわれは撤退して正解だったようだ。」
ラスニールが肩をすくめている。
それでも、ラスニール、アンドリューと5人の部下たちは暗黒魔王と魔法少女たちの戦いが始まると、少しでも詳細な情報を得ようと画面を食い入るように見つめていた。
そして、『SDアメちゃん大暴れ』のシーンでは……全員の目が点になった。
((俺たちの兵器を強化改造したものが『こんなの』にやられるとは…))
全員『この物語はフィクションであり…』を映像につけてほしいと心から願った。
そして、千早に暗黒魔王があっさりぶった切られると、全員大きなため息をついた。
「あの…、いくらなんでも暗黒魔王あまりに弱すぎないですか?」
アンドリューが半ば呆然としながらようやく口を開く。
「あれは、暗黒魔王が弱いというより『神那岐の太刀の継承者』が強すぎるのだ。
『闇の眷属、魔族に対して爆発的に威力を増す刀』という情報は確かなようだ。
放射エネルギーを見ればわかるが、刀から放出されるエネルギーが暗黒魔王に近づくと跳ね上がっている。
魔王クラスでない、普通の相手となら先日やり合った『シードラゴンマスク』の方がかなり手ごわいはずだ。」
ラスニールが苦虫を潰したような表情をしている。
「それから、あのゴーレムの見た目に惑わされているようだが、操る魔力の膨大さとゴーレムの多彩な強さから、あの結界の中に『大魔女リディア』の分身か使い魔あたりが加わっているはずだ。」
「待ってください!7年前、『米軍抹殺部隊』をコーザル・ガイアと二人だけで殲滅したというあの大魔女がいたのですか!!」
アンドリューが目を剥く。
「そうだ、連中のおかげであの時は我々は生き延びたわけだが、今回は危うく命を失いかけたわけだ。
10星の他のメンバーはともかく、コーザルと大魔女リディアは『正体がつかめない』ことも含めて非常にヤバイ。」
「『二千年生きて、世界を裏から支配している』という噂も聞きますよね…。」
アンドリューが身震いしながら答える。
「そうだ、だから、大魔女に可能な限り接触しないように、『最低限の後始末』をしたら魔法少女たちからは手を引く。」
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「待ってください!どうして『大魔女リディア』が仲間にいるんです!!
大魔女と言えば、『二千年生きて、世界を裏から支配している』というじゃないですか!」
正気を取り戻した、元魔道将軍こと魔法博士がぶるぶる震えている。
「ええ?!それデマですよ!!」
怒っているのかどうかわからないくらい『ゆるい』怒り方で、『リリカル☆アルテア』が口をとがらせている。
「はい、完全なデマです!」
私がきっぱりと断言する。
「歴代を含めると全部で2000年超えますが、世界を支配どころか、2000年間歴代大魔女はこの通り『ゆるふわ』で過ごしています!!!」
「「「2000年ゆるふわ!!!」」」
「美佐ちゃんもいい加減ゆるふわ系ですが、アルさんのゆるふわ指数はそんな『生易しい』ものではありません。美佐ちゃんのゆるふわ度を10とすると、ちーちゃんや望海ちゃんが15。そしてアルさんは軽く30は超えるでしょう!!
『二千年生きて、世界を裏から支配している』という偽情報を流して、変な人が近寄らないように工作し、歴代大魔女は『ゆるふわライフ』を堪能してきたのです!!
ゆるふわを心の底から愛している『ゆるふわマスター』の私の目に間違いありません!!
ちなみにだから私と美佐ちゃん、ちーちゃん、望海ちゃん、アルさんは一緒にいてこんなに仲がいいのです!!」
私が心の底から断言すると、『ゆるふわメンバー(魔法少女群)』は全員嬉しそうににこにこしているが、アメちゃんと魔法博士は呆れたような視線を向けている。
ちっ!!『求道者』というのはいつの時代も受け入れられるまでは時間がかかるものだ。
暗黒魔王は何とか倒したことだし、いよいよ女王を復活させに幽閉されたお城まで行くことになった。




