7 黒幕登場
私は小さいころから普通の人には見えないものが見え、聞こえないものが聞こえたようだ。時々、どうしてだか知らないが『先のこと』がわかり、『見えたビジョン』の通りのことが起こったりした。
だから、自分が『両親同様スーパーヒーローになる』ことがなんとなくわかっていた。
父と母は日常はとても優しく、そして非常時にはものすごく強かった。
何があっても、どんな事態でも乗り切れるほど強いと思っていた。
そんな優しく強く素敵な両親のようになれることはとても素晴らしいことだと思っていた。
でも、そんなすごい両親でも乗り越えられない事態はあった。
七年前に「あらゆる時空へ自由に移動できる『時空機』という超兵器」を使って『怪人・ダークファントム』が世界中に宣戦布告してきたときも二人で立ち向かっていった。
そして二人は…帰ってこなかった。
自分の『ビジョン』でも帰ってこないことはわかっていた。
それでも…あきらめずに私は一生懸命両親が帰ってきてくれるのを待っていた。
そして、帰ってこない両親を待って待って、散々待ちわびた時、両親の友達の印をもった『あの人』が来てくれた。
その日から私に家族が出来た。
そして、両親の親友が私の親友になってくれた。
再び私にできた大切な人達を失わないために、私はもっともっと強くなることを決意した。『両親を失った事態』にも対処できるくらい強くなることを決意した。
そして、同時に『同じ痛み』を味わう人のいない素敵な世界を作りたいと思った。
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「巧さん、お帰りなさい。」
魔法少女戦隊が石川家から出撃した少し後に巧が戻ってくると、残ったアルテアが出迎えた。
「いろいろなことをお任せして、申し訳ありません」
巧が詫びると、アルテアはため息をついた。
「そう思われるのだったら、『今回程度の用事』は後回しになさったらいかがですか?
『あの子に逢わないため』に用事を作ったと言われてもしかたないですよね?」
アルテアが巧を見る目はかなり厳しい。
「……申し訳ありません。」
巧がさらにアルテアに頭を下げる。
「お気持ちはわからないでもないですが、『あの子の気持ち』にももう少し配慮してあげたはいかがですか?ご両親、お兄さん共にものすごく優しい方たちなのが幸いですが…。」
「…困りましたね…。もしかしなくても『全部わかって』おられるのですね…。」
「…そりゃあ、親友たちの娘さんのことだもの。きっちり調べますよ。今はその娘さんも心友になったわけですし…。
『もう一人のお父さん』はもっとしっかりしてくださらないと…。」
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竜将軍の要塞に近づくまでに、何人かの『竜兵士』達と遭遇した。
もちろん、全部『瞬殺』である。
剣将軍の要塞を陥落させた時と比べて今のメンツは戦力的には倍くらいである。
普通に考えたら、前回同様今回も楽勝なのだが、もちろん、それを踏まえて敵も動いているはずだ。油断は禁物だ。
……それだけでなく、近づくと、背中がちりちり焼けるような感覚がある。
前回と違い、『かなりの強敵』があそこにはいるはずだ。
私の『直観』が囁いている。
だから、『守りに強く』、戦闘センスは私以上のちーちゃんには美佐ちゃんと望海ちゃんのそばで二人とともに遠距離攻撃に徹してもらうことにした。
本来なら『魔族系』には絶大な破壊力を誇る神那岐の太刀をブンブン振り回してもらう展開なのであるが…。
…そして、要塞突入の模様は図ったように前回と同じような展開になった。
相手が騎士たちよりもう少し手ごわい『竜戦士』達であることくらいか…。
ちなみにこの竜戦士はリザードマンではなく、半竜・半人みたいな存在だ。
大広間に私とバネちゃんが突入すると、前回以上の大歓迎だ。
周りをずらりと竜戦士たちが取り囲み、正面には以前画像で見た高さ三メートルを超す『竜将軍』が立っている。
竜将軍の周りは鎧を着こんだ『竜騎士』が勢ぞろいしており、その少し前には巨大なメタルブルーのドラゴンが二匹こちらを睨みつけていた。
そして、一番問題なのが、竜将軍の隣に控えている「黒装束」だ。
気配を巧みに隠しているが、他の怪物たちと全く異質の気配の内に秘めた殺気と戦闘力は明らかに竜将軍を上回る。
「ちーちゃん、『黒装束』が一番危険だわ!気を付けて!あとは『防御重視』で!」
私は言うなり、中心に突っこんでいった。ここは先手必勝だ!
「シードラゴン・ダブルソニックウィブ!!」
両手に込めた『闘気の爆弾』を火炎を吐こうとしていた二匹のドラゴンにいきなりぶちかます。
攻撃は最大の防御なり。敵の大砲は最初に沈黙させるに限る。
二発の闘気の爆弾はドラゴンたちとその背後の竜戦士たちを吹き飛ばし、要塞を突き抜けてそのまま外へ巨大な穴を二つ穿ってしまった。
この要塞を解放した後、魔法界の人達の修理が大変そうだが、これくらいは勘弁していただこう。
後方では美佐ちゃんと望海ちゃんがそれぞれ『遠距離魔法』とマジックバルカン砲を連射して竜戦士たちを一掃し続けている。
それをかいくぐろうとしている竜戦士や竜騎士は近づいた途端にちーちゃんにぶった切られている。
バネちゃんはあっという間に玉座に駆けていき、勇者の剣で竜将軍に断続的に斬りつけて圧倒している。
さすがは『異世界勇者』!半端ないっす!
出逢った頃は『ドジ属性』『暴走属性』が酷かったが、今ならゲームで言う竜王あたりを一人で倒せるかもしれない。
一緒にバタバタやっているうちにいつの間にか本物の勇者になっていたようだ。
そして、警戒していた『黒装束』は、気配を消してなんと美佐ちゃんたちの方に肉薄しようとしていた!
竜将軍は置き去りかい!…しかし、これはどういうことだ?!
もちろん、あらかじめ警戒していたちーちゃんが黒装束の動きを捉えて対峙している。
そして、神那岐の太刀の斬りこみを黒装束は二丁のアーミーナイフで何とか捌いている。
今の神那岐の太刀は『魔王すら一刀両断』するのだが、それを受け流す腕と、アーミーナイフも両方とも半端ではない。
先日似たようなことを『スーパーモンスターズ』のブレイドデスという変態強怪人がやってくれていたが、今のちーちゃんは剣の威力も腕前もずっとアップしている。
とりあえず、黒装束はちーちゃんに任せてまだたくさんいる竜騎士たちの制圧を優先させることにする。
一〇体程度の竜騎士を吹き飛ばした時、背筋に非常にかすかだが強烈な殺気が不意に現れるのを感じ、とっさに右回し蹴りを放つ!
ガシーン!!と金属製の私のブーツと剣が弾き合う音がして、不意に現れたその相手と私はお互いに距離を取り合う。
なんだ!こいつは!?
音もなく滑るような滑らかな動きをするそいつを私は睨みつけた。
全身黒ずくめで覆面を被り、右手に妖気の漂う長いサーベルを構え、左手には分銅がいくつも付いた網状の武器を持った長身の男が立っていた。
男の持っているサーベルからは呪われた凄まじい魔力が漂っており、全身からは泡立つような殺気が満ち満ちていた
動きと雰囲気からこいつと黒装束は両方とも『軍人』だ。そして、先ほどまでは全く気配を感じなかったことから何らかの『瞬間移動』能力を持っている。
瞬間移動してすぐの『逆の不意打ち』になる私の蹴りに対応できるとは、想像を絶するくらいの身体操作能力の高さだ。
こんな芸当ができるのはモンスターバスター一〇星でもアナスタシア位だろう。
「驚いたな!完全な不意打ちかと思ったら、逆にカウンターを喰らわせてくれるとは!!では、こいつはどうだ!!」
男が網分銅を私に投擲すると、私はさっと後退しつつ、懐から取り出した『二丁拳銃』から打ち出した『念弾』で分銅を弾き飛ばした。
思い切り私の気を込めた念弾で壊れないとはあの分銅はどんな作りをしているんだ。
網状の武器を素早く回収した男は再び身構えながら言った。
「その二丁拳銃、閃光のエリシエル!?いや、『時空機』とともに次元の狭間に消えたはず!その銀髪!そうか、お前は…そういうことか!!」
…『閃光のエリシエル』?『時空機とともに次元の狭間に消えた』?
この男は一体何を言っているの?!
『あの人達は行方不明』としか私は聞いていないのに!!
では、この男は!!!
「これ以上は無理だ!下がるぞ!」
男の声に黒装束は男の隣に戻り、そのまま、二人とも姿がかき消すように消えていった。
今までに感じたことのないくらい真っ黒な感情が荒れ狂った後、私は何とか周りを見回すことができた。
周りは魔法少女たち以外はすべて、気を失っているようだった。
要塞は結果的に楽勝で陥落させることができた。
それでも…私の心に達成感はひとかけらも感じられなかった。




