3 魔法少女の初陣
「どうやら、まだ気づかれていないようね。
私が突っ込むから、望海ちゃん援護してもらえるかしら?」
「Yes!(了解!) Ma'am!(上官殿!)」
敵要塞を前にして瀬利亜と望海のやり取りを目を点にしながら美佐とアメちゃんが半ば呆然としながら見ている。
((どうしてこうなった??!!))
北川望海は私立神原中学三年生で、前生徒会長である。
スポーツ万能、成績はトップクラスで、大和撫子のようにおしとやかで、明るく面倒見のいい望海は学校のアイドルのような存在であった。
だが、望海には隠れた趣味があった。
生徒会の仕事が忙しく、ひーひー言っていた時期には気分転換にと4つ上の従姉に奨められて始めたサバイバルゲームに完全に嵌まってしまったのだ。
運動神経全般が抜群なうえ、度胸もあり、瞬間的な判断力・洞察力も優れた望海はあっという間に優秀なサバゲー上級者になっていた。
まわりの人の最初は可愛い女の子の参加者を歓迎するくらいの視線から、『信頼できる仲間』へ視線が代わるにつれて、面白さがうなぎ上りになっていった。
もちろん、学業や生徒会の仕事に支障が出ないように行ける時間は限られていたが、それゆえに『予習』をしっかりし、参加した時には『全神経を集中』して、いろいろなものを身に付けていった。
そんな望海が魔法少女になるきっかけは3か月前に今回の瀬利亜と同じように美佐の引き込まれた魔界空間に引き込まれたせいであった。
瀬利亜のように相手を倒すことはできなかったものの、冷静に怪物の手から逃れ、自分より年下の美佐(変身前だった)を守ろうとした望海の勇気と行動力に美佐とアメちゃんが仲間になるように強く誘ったのだった。
望海は魔法少女になることを快諾し、それからずっと二人と一匹で魔法界を暗黒魔王の手から取り戻すために戦い続けていたのだった。
美佐とアメちゃんは知らなかったが、望海は瀬利亜のことは知らなかったものの、シードラゴンマスクがモンスターバスターのブログを書いていること、そしてその活躍をかなり詳しく知っていた。
そのため、変身した姿に疑問を抱いていた後、最初に遭遇した敵を『シードラゴン百列拳』で瞬殺した際にその正体にすぐに気が付いて感激していた。
『まさか憧れの人と一緒に戦えるとは思わなかった』と。
瀬利亜は瀬利亜で服装以外はいつもの『スーパーヒロインモード』で望海と一緒に『爆走』していた。
果たして魔法少女になる意味があったのかというくらい、瀬利亜は拳と蹴りだけで出逢った全ての敵を沈黙させていた。
「どんな怪獣でも、だれよりも早く倒すことができるわ!!」
そんなセリフを『有言実行』できるような人物がまさかこの世にいるとは美佐もアメちゃんも思っていなかった。
少なくとも魔法ではなく、『拳で』それを成し遂げるような人物と『友達になる』のは想定外もいいところである。
重装備の騎士二人が向かって、瀬利亜が動き出すと同時に望海は素早く立ち上がり、歩兵銃を構えた。騎士たちが望海に気付き、抜刀した瞬間、二人の後ろに回り込んでいた瀬利亜が左回し蹴り、続いて右ストレートで鎧騎士を吹っ飛ばし、沈黙させた。
「望海ちゃん!ナイスサポート!!」
(普通は格闘タイプが相手を引きつけている間にガンナーが撃つのが常道ではないのだろうか?)
アメちゃんが首を捻っている。
「ようし!みんなの頑張りで、一晩で相手の主要要塞までたどり着いたね。ここに三将軍の一人がいるわけね!」
瀬利亜が入口を睨みながら言った。
「ええ、ここからは慎重にいきましょう!」
望海が油断なく歩兵銃を構えている。
「……あの……」
「「どうしたの?」」
非常に申し訳なさそうな美佐の様子に瀬利亜と望海の二人は首をかしげる。
「…今晩私、変身した以外『全く何もしていない』気がするんですが…」
美佐の言葉に瀬利亜と望海は顔を見合わせた。
しばし、二人は考えた末、口を開いた。
「ザコにしか遭遇していないから、美佐ちゃんが戦う必要がなかっただけよ。」
「今から敵の本拠の一つだから、美佐ちゃんの活躍はこれからよ!」
二人とも、心の底から本気らしいセリフを言ってくれている。
美佐が今までも、そしてこれからも活躍しようが『そうでなかろうが』心の底から大切な仲間、友人として扱ってくれそうなのは間違いなさそうだった。
…それでも、今までも『望海の方がかなり戦闘では活躍』してきている状況というのはどこか心苦しかったのは事実だ。
そして、今晩瀬利亜が『瞬殺』してきた敵達は今までの経験上『美佐だったらかなり苦戦』しただろうと推測された。
(瀬利亜ちゃんを魔法少女の仲間に引き込んだのは『戦力的』には確かに望外の大成功だった。そして、『人間性』でも…望海ちゃん同様、美佐ちゃんのことを『妹のようにかわいがる』ことは間違いなさそうだし…。
いい人度を五段階で評価すると、二人とも、いや美佐も含めて、三人とも六段階から七段階…いや、下手をするとそれ以上の『お人良し』だ。
それくらいだからこそ、三人とも『魔法少女適性が高い』わけなんだが…。
『可愛い美佐ちゃんに怪我をさせるくらいなら我々が頑張って戦う!!』くらい戦意が高いよね。
ただ、それだと美佐はへこむんだが…だからといって、いじめられるよりは百倍ましだし……まさか、こんな『ぜいたくな悩み』が訪れるとは思ってもみなかった!!)
アメちゃんの内心の苦悩はさておき、三人と一匹は『二人の活躍』ですこぶる順調に要塞を攻略していった。
人がいなさそうなお広間に踏み入れると、後ろの扉の前に巨大な金属の扉が落下してきた。出口がふさがれた格好だ。
「はっはっはっは!魔法少女ども!貴様らの快進撃もここまでだ!
我は暗黒魔王三将軍の一人、剣将軍だ!!ここが貴様らの墓場だ!!」
入ってきた入口以外の壁が全て下がると、周り中を大勢の騎士たちが取り囲んでいた。
そして、美佐が何度が見たことがあるひときわサイズが大きく、邪悪なオーラに包まれた剣将軍が正面に立っており、剣将軍のすぐ目の前には高さ五メートルほどの六本腕の金属製の魔法人形が強烈な魔力をほとばしらせていた。
「やれ、バーサーカーゴーレム!奴らを八つ裂きにしてしまえ!」
六本腕のバーサーカーゴーレムがその腕すべてに巨大な剣を持ち、美佐たちに向かってその巨体からは信じられないくらいの速度で動き始めた。
だが、その直後、瀬利亜はあっという間にバーサーカーゴーレムの眼前まで迫っていた。
「瀬利亜さん!!危ない!!」
美佐が悲鳴を上げた直後、バーサーカーゴーレムは……二〇メートルくらいある高さの天井に『突き刺さって』いた……。
「シードラゴン・ソニックウェイブ昇竜拳!!」
拳を降ろした瀬利亜はあまりの事態に呆然としている剣将軍たちを睨み据えた。
「暗黒魔王旗下の剣将軍よ!
その方、平和に暮らしている魔法界の人達を虐げて、さらには配下に加え、あまつさえ、魔法界を制圧後、地上界への侵略の拠点にせんと企てるとは不届き千万!!
『魔法のバトラー・マジカルシードラゴン』ただ今推参!!
天に代わって悪を撃つ!!」
「…くっ!何をしておる!奴らを仕留めんか!」
瀬利亜の『スーパーヒロインオーラ』にしばし、たじたじとなっていた剣将軍と暗黒騎士たちだが、剣将軍の怒声で我に返って動き出す。
「シードラゴン・流星拳!」
しかし、瀬利亜はそのまま、剣将軍と親衛隊騎士たちに向かって突っこんでいくと、『闘気の拳撃』を何十回と撃ち込んでいった。
剣将軍だけはその場に何とか踏みとどまったものの、他の騎士たちは後方に次々と吹っ飛んでいった。
「よっしゃあ!次は私たちだ!」
騎士たちの動きが乱れたのを見て取った望海は『両脇にガトリング銃」を構えると、左右に撃ちまくっていった。
「わ…私も頑張ります!!マジカル・ワイド・トルネード!!」
美佐も一息遅れたが、魔法の旋風叩きつけ、騎士たちの足止めをすることで、望海の射撃の援護をした。
「さあ、自慢の軍団も残るはあなた一人のようね!覚悟してもらいましょうか!」
「ふざけるな!剣将軍をなめるな!!」
瀬利亜と剣将軍はお互いに突っこんでいった。
そして、三秒後、剣将軍は広間の壁に『めり込んで』動かなくなっていた。
「うーむ、幹部クラスの割にはずいぶん『弱い』わね…。」
「瀬利亜さん!!その人、魔法界の人が『暗黒魔王の魔力』で魔界戦士に変えられているのです!そこまでやったら、再起不能になっているのでは…。」
望海の声に瀬利亜の顔が明らかに『やっちまったぜ』という表情に変わった。
「……『峰打ち』にしておいたから、大丈夫だと思うわ!……多分……。」
「そうですか!瀬利亜さんがおっしゃるならまちがいありませんね♪
それでは、ヒーリングを掛けてあげましょう。」
明らかに瀬利亜に騙された?望海はニコニコしながら『元剣将軍』に近寄っていった。
こうして、魔法少女三人の初陣は三将軍の一角を崩すという大戦果を上げたのであった。




