7 どこの誰かは
シードラゴンザップマンに変身後、東京近くまで飛んで戻った後、単身用小型高速移動システムを使ったので、あっという間に学校まで戻った。
戻る旨を伝えておいた光ちゃんが、焦ったような感じで私に語りかけてきた。
「瀬利亜はん!ザップマンの仲間はんと合体されたようやけど、いったい何がありはったん?!」
うん、予想通り、その情報が入ってきてたわけね。では、当然その先も予想通りみたいだね。
「話すと長くなりそうだから、地球防衛軍基地で詳しく話すわ。まもなく『迎え』が来てくれるんでしょう?」
(え?なんで、いろんなことがばれている上に、いろいろ話すような展開になっているのですか?!)
同化しているザップマンセブンが動揺する。『最重要機密』のはずのことが、『現地人に色々発覚』していそうなうえに、さらにばれます…という流れだもんね。
((ごめん、ザップマンセブンさん。基地についてからまとめて話すわ。その方が理解が早いと思うから。))
(で、でもいろいろ大切な機密事項が…)
((…結論から先に言えば、ザップマンさんの機密事項のかなりの部分はバレてしまった後、彼を大切な仲間として処遇しているの。詳しい内容はザップマンさんご本人から聞いた方が早いと思うわ。))
「…あのう、瀬利亜はん?!」
私が黙ってしまったので、光ちゃんがやや不安そうになる。
「ごめんね。今大切な『脳内会議』をしていたの。おっと、早くもお迎えが来たようね。それも時間重視で美夜副隊長の『式神・雷速』で、必要な人だけ乗ってくださいなのね。」
学校の上空に現れた『銀色の怪鳥』を見上げながら私は言った。
「「「婚約おめでとうございます!!」」」
隊長たちがクラッカーを鳴らしながら私と光ちゃんを祝福してくれた。
確かに婚約後に初めて基地に来るわけだね。
嬉しいことは嬉しいが、『重大な問題』を抱えているので、喜びつつも、手早く本題に移った方がよかろう。
私は順を追ってザップマンセブンと合体した経緯を話し始めた。
ちなみに基地に行ったのは私と光ちゃんとアルさんだ。そして地球防衛軍側が風魔自来也隊長、土御門美夜副隊長、北壁誠也隊員、出田哲也隊員、速水梓隊員だ。
しばらくぶりなので、解説しておく。
◎風魔隊長は大概の怪獣以上にでかくて強い大ガマを呼び出したり、さまざまな忍術を駆使して闘う元御庭番棟梁だ。忍術で怪獣の怪光線を反射するのは反則だと思う。
◎土御門美夜副隊長は最強の陰陽師で私同様最強のモンスターバスターでもある。
あまたの怪獣を強力な式神(一〇八の式神をあやつるとか)で『瞬殺』する、地球防衛軍の要でもある人だ。長い長髪の落ち着いた美女でもある。
◎北壁誠也隊員は実はザップマンが地球人に化けた姿だ。地球防衛軍の隊員の一人に成りすまして、こっそり活躍…予定が、『速水隊員以外全員』に正体がばれていたという残念な結果に終わっていた。ちなみに最近美夜副隊長と『男女のお付き合い』をされている。
◎出田哲也隊員は『マッドサイエンティスト』の名にふさわ
しい、天才技術者で、光ちゃんの従兄でもある。研究に打ち込みすぎて彼女ができないのが悩みの種で、よくそのことで光ちゃんとじゃれ合っている。
◎速水梓隊員は天才的なパイロットで、あらゆる怪獣の攻撃を戦闘機でかいくぐるという離れ業を披露してくれる。少しウェーブのかかった赤髪の可愛らしい女性だ。出田さんによると、気の強いツンデレ僕っこなのがいいのだとか…。
「……かくかくしかじかというわけなのよ。」
私の説明が終わると、気まずい雰囲気に包まれた。私へのというより、ザップマンセブンさんへの『刺さるような視線』を感じる。
「では、私が瀬利亜ちゃんと、ザップマンセブンさんの分離がうまくいくかどうかの調査を進めてみるわね。」
『顔は』にっこり笑いながらアルさんが答える。
「今のところ、どんな感じ?」
「時間を掛ければ、多分、無事に分離できるとは思うわ。まあ、『ザップマンセブンさんの無事を考慮しなくていい』なら、そんなに難しくはないのだけれどね。」
目を青白く光らせながら、極力抑えた口調でアルさんがさらっと怖いことを言う。
うん、これはめっさ怒っていらっしゃるね…。凄まじい怒りに気付いたザップマンセブンさんが私の中で震え上がっておられます。
「そうねえ、まずは上司の方が来られるのを待ちながら、アルテアさんに分離の方法を探ってもらいましょう。」
美夜さんも『一見冷静』に口を開かれた。
「もし、上司の方に適切な方法がないのであれば、『とっとと強硬策』を使わせてもらうことも考えましょうね。」
……こちらもめっさ怒っておられました。最初は同じように怒ってくれていた光ちゃんの顔色が青く変わってます。
うん、『絶対に怒らせてはいけない二人』が心底怒ってますからね…。私のために怒ってくれているとはいえ、ザップマンセブンさんを責めればいいと言うものではないし、彼は現在『怯えた小動物状態』なのでさすがにかわいそうになってきたもので。
「と、ところでだね。」
とりなすような口調で、自来也隊長が口をはさむ。
「ザップマンセブンくんが分離するまで、いや、分離した後もできればなのだが、瀬利亜さんに地球防衛軍の臨時隊員になってもらうことを考えてくれまいか?」
自来也隊長の話が熱を帯びてくる。
「ザップマンが『瞬殺』されるクラスの怪獣を逆に『瞬殺』できる隊員がいてくれれば非常に心強い。
ちなみに…合体しているうちに例の「レジウス対策」とかはできないのかな?」
「学校へ行きながらでいいのであれば、『合体中』に臨時隊員になる件は構いません。
また、分離後には『ダーリンと一緒にスーパーヒーロー協会の立ち上げという夢』を追求する予定がありますので、せっかくのお申し出は有難いのですが、お断りさせていただきます。
そして、『レジウス対策』という点は…ほとんど意味をなさないのです。
巨大化することで『物理的な攻撃力は大きくアップ』しますが、ザップマン形態での攻撃はレジウスに当たらない上に、『強力な魔法』がかえって回避しにくくなります。
レジウス対策はモンスターバスター協会全体で短期・長期の視点の両方でする方がいいでしょう。
……さて、早速合体した効果があったようです。宇宙怪獣が地球圏に侵入してきたみたいです。」
…説明せねばなるまい!ザップマン達は『ザップマンセンサー』という第六感で怪獣や凶悪宇宙人の危険などを察知する能力を持っているのだが、私と合体したことで、『私の正義の直観』との相乗効果が出て、今までの地球防衛軍の探知網よりずっと早く察知することができるのだ!
「瀬利亜ちゃんが察知してくれたおかげで、こちらでも詳細情報が早く入手できたよ。では、映像を映すよ。」
出田隊員の操作で大モニターに映った映像を見て、誠也さんと私の中のザップマンセブンさんが悲鳴を上げる。
「これは、N89星雲のゴールドスターを一夜にして滅ぼしたという怪獣、『破滅の宇宙竜』と言われる『八岐のヒドラ』じゃないか!!」
画面には八つの首と巨大な翼をもつ巨竜の姿とともに、全長二四〇メートル、体重二万トンというデータが出ている。
「あのグレートバトラーよりもさらにずっと強い怪獣です!!慎重になりすぎてもおかしくないくらいの対応をしましょう!」
誠也さんが必死にみんなに訴えている。確かにグレートバトラーよりは凶暴さもパワーも段違いのようだ。
「了解です!では、その辺を踏まえた上で、ちょっと『退治して』きますので、あとはよろしくお願いします。」
私が指令室から出ようとすると、誠也さんが私にすがりつき、頭の中でザップマンセブンさんがパニックになっていた。
「瀬利亜さん!人の話をちゃんと聞いてましたか!?」
「もちろん!!」
私は胸を張って答える。
「『ザップマンセブン・センサー』で見ると、先日やりあった『闇の皇帝竜』と同じくらいのエネルギーを扱う怪物だから、細心の注意が必要な相手だわね。
幸いなことにザップマンセブンさんが詳細情報を持っておられるから、それを踏まえて戦わせてもらうわね。
あとは念のためと、被害防止のために美夜さんが控えておいてくれたら大丈夫だと思います。では、行ってきます!」
呆然としている誠也さんを置いておいて、私は指令室から駆け出した。
名古屋上空に現れた『八岐のヒドラ』との対決は、結論から先に言えば、『楽勝』でした。扱う力の大きさは『闇の皇帝竜並』とはいえ、知能の低い怪獣の攻撃をかわすのはそう難しくなく、約五分間、一方的にボコってあげたら、戦意喪失して逃げていきました。
今まで、自分より強い相手と戦ったことがなかったのでしょう。
ケンカに負けた犬がきゃんきゃん逃げるような感じです。
あのゴメラが三時間にわたって私と死闘を繰り広げたのと違い、ヘタレぶりが酷いです。
野良怪獣全般に言えることですが、私に負けたゴメラが最近ではマリアナ近郊で『大人しく暮らしている』のと同様、『八岐のヒドラ』も大人しくなってくれる可能性が高いと思われます。
え?万が一地球に『リターンマッチ』に来たらどうするかですか?
怪獣を含む獣類は人間と違い、基本復讐戦などは考えないものですが、もし、また地球にくるようであれば、今度はきちんと引導を渡してあげましょう。
その頃には『ザップマンセブンさんとは分離』しているでしょうが、レジウス戦で装備も含めて大幅にパワーアップしてますので、私一人でも十分対応できます。
大きく威力のアップした二丁拳銃で蜂の巣にしてあげましょう。
ちなみに、名古屋上空という鋭すぎる場所で戦闘を行ったせいで、戦闘シーンをバッチリテレビ局が録画してくれて、その晩には『臨時ニュース』が流れ、数日後には『シードラゴンザップマン特集番組』を放送してくれるというとんでもない事態になってくれました。
翌日はもちろん、数日後も学校で皆さんの視線がとても痛かったです。
……ザップマンセブンさんと早いところ分離してほしいものです。




