6 遠くの星から来た男
先日のレジウス戦の反省から、アルさんに勇者システムを改造してもらって、単身用小型高速移動システムの開発を進めてもらっている。
また、一人でレジウスと遭遇したら『あっさり捕獲されておしまい』と言うのでは困るのだ。
現時点で、個人の『気や霊力・魔力』をエネルギー源にして、エアカーみたいに時速数百キロで素早く移動できるタイプが出来上がった。
現状では遥ちゃん、ちーちゃん、バネちゃんなら時速二〇〇キロで二~三時間くらい、私や他の超A級モンスターバスターで時速七~八〇〇キロで半日程度稼働させることができる。様々な事件の現場へ急行する際や『正義の直観でなにかを感知』した際にすぐに急行できるのは非常にありがたい。
これで、スーパーヒーロー協会立ち上げにさらに一歩近づくというものだ。
現在私は『事件が間もなく起きそうという直観』に従い、信州の山奥に向かっているところだ。
学校を急遽『早退』して、約一五分、南アルプス連峰を望むあたりに着いた時、上空に青く光る『隕石』のようなものが地上に落ちてくるのが見えた。
その『隕石』からは非常に禍々しい気配がする。
その大きさとオーラから類推しておそらく『宇宙怪獣』だろう。
おそらく「邪悪な怪獣」だと推察して、私はためしに戦闘的な『気』をその青い球に向けて飛ばして様子を見る。
青く光る玉は即座に私の挑発に乗り、その姿を本来の怪獣の姿に代えた。
なんとかくゴメラに似ているが、全体にもっと鋭角的なフォルムをしており、頭には二本の角が生えている。
宇宙怪獣だけあって羽根なくても空を飛べるようで、空中に制止しながらこちらを睨みつけている。
キシャーーーー!!と吠えると口から怪光線を発射してきたが、私は気配を感じて、飛び来る前にさっと避ける。
『たかが、宇宙怪獣』が私に勝とうと思うのは百年早い!!
「シードラゴン、きりもみキーック!!」
怪獣のさらなる攻撃をかわしつつ、頭に『闘気を込めた』蹴りを撃ち込む。
キシャーー!!
怪獣は最後の絶叫を上げるとそのまま墜落していった。
怪獣は山の中腹にめり込むとそのまま動かなくなった。
よし、これで任務無事完了!…そう安心したのが大失敗だった。
背後の「気配」に気付いて振り向いた時には手遅れだった。
青い光球とよく似た大きさの赤い光球が怪獣の頭の上の私の後ろに迫っていたのだ。
その光球が殺気や敵意をまるで持っていなかったため、怪獣との戦いに気を取られていた私は気付くのが遅れてしまったのだ
気付くと、柔らかい光に包まれた空間に私と「その人」がいた。
どうやらここは『精神空間』のようだ。
なんとなく正義の巨大ヒーローザップマンに似たその人は言った
「すまない、犯罪者怪獣バトラーに巻き込まれて死んでしまった君を助けるためにはこの方法しかなかったのだ。」
「え?怪獣との戦闘では私、生きてましたけど?もしかして、『あなたに追突』されて死んでしまったとか?」
「えええええーーーー!あ、本当だ、まだあなたは生命反応があります。では、無理して同化しなくてもよかったのですね。」
「……同化とおっしゃいましたけど、元に戻せば済むんですよね?」
「……こういうケースは初めてなので、『上司が来てくれれば』戻せる…はずです…。」
なんですってーーーー!!!!!
私はがばっと立ち上がると、そこはどうやら南アルプスのすぐそばの山の中のようだ。
先ほど、長野と言ったが、よく考えたら山梨だよね。地元の人に悪いことしたかな…とか『足元の怪獣の死体』の上に立ちあがりながらとりあえずどうするか考える。
怪獣を倒したんだから、素直に帰還すればいいだけか。
すべては無事に解決したんだよね。よかったよかった。
(あ、あの……。)
頭の中から実にすまなそうな声が聞こえる。最近あわただしかったからちょっと疲れているかな。帰還したらとりあえず授業に戻って、放課後はデートでもおねだり…。
(……あのう、瀬利亜さん?)
…く、これ以上現実逃避は無理か!仕方ないので、『彼』の言葉に対応する。
「あなたは一体何者なの?」
(N88星雲から来たザップマンセブンです。)
「……えーと、ザップマンとはどういうご関係で?」
普通に会話をしているのではなく、イメージも浮かべながら会話をしているので、普通の会話よりかなり話が早い。
(『外宇宙防衛隊』の先輩に当たります。先輩が地球で活躍されているという話は聞いています。)
「なるほど…ところで、今回の事件に関してはもう少ししたら『上司』が来てくれて、そうすれば私たちは『無事分離されて』解決…する可能性が高いということね?」
(はい、おそらく…)
自信なさそうな『おそらく』だが……ここで、私の『正義の直観』が反応した。上空から非常にヤバイ物が飛んできている。
まもなく、緑色の『巨大な光球』が空から飛来してきた。禍々しい雰囲気からこれも宇宙怪獣だろう。
(馬鹿な!!どうして、奴が!!)
「ザップマンセブン、知っているの?!」
(あれは親玉犯罪者怪獣グレートバトラーです!!犯罪者怪獣バトラーより十倍以上強いというとんでもない奴です!私やザップマンさんでは全然相手にもなりません!悔しいですが、ここは…)
「ふふ」
私は笑った。
(え?)
「ここで行かなければ、いつ行くというのかしら?あいつは『私たち』を狙っているようね。そういう気配がビンビンに伝わってくるわ!
さあ!いくわよ!!」
私が叫ぶと、あたりが真っ白な閃光に包まれた。
なろほど。奴を見ながら『私』は思った。
『バトラーより十倍以上強い』どころか、二〇倍を超えるくらい強いかもしれないわね。
でも……今の『私』の敵ではない!!
山の上からグレートバトラーを見下ろしながら、『私』はグレートバトラーを指さした。
「親玉犯罪者怪獣グレートバトラー!!!
その方、宇宙の各地を手下どもとともに荒らしまわり、逃亡先のこの星、地球でも悪事を働かんとすること許し難し!!
シードラゴンザップマン!ただいま推参!!」
叫びながら、『私』はグレートバトラーの眼前にふわりと舞い降りた。
「天に代わって、悪を撃つ!!」
よっしゃ!この体は瀬利亜同様『私』の思った通り、自由自在に動くようだわ!
グレートバトラーが口から吐く怪光線を軌道を見切って、やすやすと躱すと、やつの左わき腹に回し蹴りを叩き込む。
倒れた怪獣が何とか起き上ったところで、頭にかかと落しを叩きこむと、もんどりうってひっくり返る。
……うーむ、シードラゴンザップマン形態になると、肉体的に頑強過ぎて、少々強いくらいの怪獣では全然相手にならないようだ。
ここはあっさり止めを刺してしまおう!!
「シードラゴン・ソニックウェイブアッパー!!」
ふらふらしながら立ち上がったグレートバトラーにアッパーをかますと、怪獣は宙高く舞い上がった。
「ファイナル・シードラゴンザップフラッシュ!!」
適当に『でっち上げた技名』を叫んで、両手を組み合わせると、手から金色の閃光が怪獣に向かって放たれた
『親玉犯罪者怪獣グレートバトラー』は光線を受けると爆発四散した。
「この世に悪の栄えたためしなし!!」
『私』は叫ぶと空の彼方に飛んで行った。
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私たち夫婦は定年後もよく趣味だった登山旅行に一緒に行った。
もともと大学の登山部で知り合った私たちは結婚後もたびたび連休などを利用して二人で登山に行き、友人たちからよく冷やかされたものだ。
「夫婦でそんなに話がよく続くな」と。
いやいや、その気になれば話す話題なんていくらでもあるよ。『なんでもない話題を二人楽しく語り合える関係』を作ることが大切なんだよ。
…そう言ってもなかなか理解してもらえない。
そんな感じで結婚四〇周年に登った秋深い登山の折、私たちは奇妙なものを見た。
休憩に空を見上げていたら、青く光る奇妙な球体が近くの山に向かって空から落ちてきたのだ。あまりに不思議なのでビデオカメラを回していたら、その球体は怪獣に変わった。
びっくりして凍り付いていたが、怪獣は何か小さなものと戦っていたようで、まもなく、墜落して山の中にめり込んでいった。
一体何があったのだろう?
妻と二人でしばし立ちすくんでいると、今度は空からさらに大きな緑色の光が飛来してきて、さらに大きな怪獣に変わった。先ほどの怪獣の二倍くらいはある。
怪獣が動き出すと同時に辺りに閃光が走り、光が消えると山頂に巨大な影があった。
青と銀を基調にしたメタリックな巨人は…有名なザップマン?!いや、フォルムが非常に女性的だ。ザップマンの女性タイプなのだろうか?
その女性のザップマンは怪獣に向かって指を指すと叫んだ。
「親玉犯罪者怪獣グレートバトラー!!!
その方、宇宙の各地を手下どもとともに荒らしまわり、逃亡先のこの星、地球でも悪事を働かんとすること許し難し!!
シードラゴンザップマン!ただいま推参!!」
『シードラゴンザップマン』は怪獣の眼前にふわりと舞い降りてさらに叫んだ。
「天に代わって、悪を撃つ!!」
そして、シードラゴンザップマンは怪獣を圧倒してあっという間に打ち破ってしまった。
私は年甲斐もなく興奮し、ビデオを撮り続けた。
なんということだろうか!我々は結婚記念に『あのシードラゴンマスク』とザップマンのコラボの映像を映すことができたのだ!!
ありがとう!!シードラゴンザップマン!!今までで最高の結婚記念日だ!




