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ゴメラ VS モンスターバスター  作者: はなぶさ 源ちゃん
番外編 『 悪役令嬢とモンスターバスター その2 』
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仮面舞踏会と悪役令嬢 3

 ヤバい!!相手の動きから躱しきるのが難しいと感じ、俺が半ば覚悟を決めたその時、セリア嬢が俺と狂戦士ダイナムとの間に割り込んできた!!

 待て!!危険すぎる!!

 俺が叫び声を上げようとした時、セリア嬢が両手を前に突きだすとダイナムは後方に吹っ飛んでいき、数メートル転がった後、ピクリとも動かなくなった。

 ……え?!今なにがあった??!!…確か、東方の彼方の武術で、『体内に流れる気』と言うエネルギーを放出し、小柄な武闘家が巨大な相手を吹き飛ばすというのがあったことを思いだした。

 セリア嬢が使ったのはもしかしてそれか?

 しかし、五つ星の中でも最上位に近いくらいの猛者である狂戦士ダイナムを素手であっさり吹っ飛ばすとか、人間技じゃない!!


 「セリアさん、すごいにゃ!!さすがだにゃ!!」

 「いえ、とっさに動いたらああなったの。多分、『火事場のくそ力』というやつよ。」

 いや、絶対に狙ってやっただろ!!今の流れるような動きは高度な習練がないと絶対にできないぞ!!


 「でも、セリアさん。相手が死んだら失格になるにゃ。」

 「大丈夫、ちゃんと『峰打ち』にしたから。数時間気絶した後、目を覚ますと思うわ。」

 待て!峰打ちって、そういうものじゃないだろ!使い方がおかしいよな!?


 とりあえず、ようやく声が出せるようになると、俺は口を開いた。

 「あんたは一体何者なんだ?!」



★★★★★★★★★


 俺の本名はグレン・ライアン。地方の貧乏子爵の次男坊だ。

 隣国のプリズム王国と違い、うちの国は国王が能力もやる気もないグータラであるため、政治が乱れきっている。

 その中で両親も兄貴も真面目すぎて、正論だけで動こうとして損ばかりしているお人よしだ。


 俺は愚直すぎて失敗ばかりしている両親や兄貴にも、それ以上にうちの国自体に愛想を尽かして家を出奔した。

 それから二年、俺は戦闘・魔法・盗みに関する様々な技術を身につけた。

 冒険者としていろいろなパーティに参加することもあった。


 そんな折、俺は『ダークサイド紳士録・アイボンの書』を手に入れた。

 実際の役に立つだけでなく、さまざまな人物の由来に非常に興味が引かれた。

 特に俺の目を引いたのは隣国プリズム王国を陰から牛耳るという『悪役令嬢・セリア公爵令嬢』だ。不器用な俺の家族と違い、知略と魅力をフルに使い、巧妙に立ち回ることで王国をわがものにするだけならまだしも、その上で一般庶民には一切危害をくわえないというある種の潔さが気に入った。


 そんな折、この怪しさたっぷりの舞踏会の招待状を受け取ると、俺は自分を試すためにも喜んで参加した。


 俺自体が『怪盗』とはいえ、心の底まで真っ黒な堕落した奴らと話すのは面白くない。そんな中で、明らかに他のメンバーと毛色が違う二人組を見つけた。

 いかにも無邪気な獣人の女の子と、その主人らしい品のある若い女性だ。

 こんな中で平気で料理をぱくつく女の子の心臓もすごい。

 そして、周りとは明らかに違う悪にあまり染まらない品性のあるその主人の女性も周りにしっかり目配りをして、この『いかがわしい危険な場所』で涼しい顔をする神経はどう見てもただものではない。


 非常に興味を魅かれて話しかけると「あの悪役令嬢セリア公爵令嬢」ではないか!!

 俺は内心狂喜した。

 たしかに聡明そうではあるが、人を利用するようなタイプには見えないことがさらに俺の好奇心を刺激した。いったいどうやって王国を実質掌握したんだ?!

 俺はわくわくしながら一緒に行動して、その謎を解こうとした。


 そして……謎は解けるどころか深まるばかりだった…。


 「あんたは一体何者なんだ?!」

 「…通りすがりのただの公爵令嬢よ♪」

 「いやいや、ただの公爵令嬢が『五つ星メンバーでも最強クラス』を素手で瞬殺できるわけないだろ!!」


 「ふっふっふ!セリアさんを甘く見過ぎだニャ♪」

 セリア嬢が冷や汗をかいている中、猫娘のトラミ嬢が口を挟んできた。


 「セリアさんは『普通の悪役令嬢』とはわけが違うにゃ。普通の悪役令嬢は『知略』と『美貌』を駆使して、物事を思い通りに動かそうとするにゃ。

 セリアさんの場合は『軍略』と『腕力』と『根性』で物事を進めていくにゃ。

 物理的な力を駆使するセリアさんは『悪役令嬢(物理)』と表現するのが適切だにゃ♪」


 俺はトラミ嬢の言葉に頭をガツンと殴られたようなショックを受けた。

 『悪役令嬢(物理)』て何?『軍略』と『腕力』と『根性』で物事を進めていく…それって悪役令嬢と表現すべき存在なの?!



 …対戦相手の残りの二人はあっさり戦意を喪失し、降参した。


 それだけでなく、残りの六チーム全て棄権して、俺たちのチームが優勝した。

 ウンそうだろうね。俺だって対戦相手だったら棄権していると思うわ。

 セリア嬢、トラミ嬢、あんたらいったい何者なの?



 表彰式が終わり、パーティ終了後、俺たちは賞金の授与のために奥の部屋に通された。

 玉座の間には痩せた長身の男が座っており、黒猫の仮面を被っている。


 「ようこそ、おいでくださいました。優勝おめでとうございます。そして…。」

 男がぱちんと指を鳴らすと、俺たちの周り中から真っ黒なロープのようなものが何十条と現れ、あっという間に俺たちを拘束した。


 「これからの『魔人としての新しい人生』をお楽しみください♪」

 猫の仮面から背筋が凍るような冷たい視線を漂わせながら男は言い放った。


 「一体何のつもり!!」

 セリア嬢の叫びに男はからからと笑った。


 「私は邪神『這いよる黒猫・ニャントロホテップ』と申します。十年以上の年月をかけて、アイボンの書をあちこちにばらまき、準備を進めた甲斐がありました。

 あなたたちのような優れた『素材』が私の手駒になってくれるのですから。


 今から『儀式』を済まして、あなたたちは『私の下僕』となって、世界に破壊と混沌を広める役割を果たして頂きます。もちろん、今よりずっとたくさんの地位・名誉・財産等も『結果的に手に入る』でしょうから、損はなさらないはずですよ。『私の命令に逆らえない』以外はあなたたちの自由ですから♪」


 くそう!まさかこんな怪物が糸を引いているとは!拘束を引きちぎろうとして、俺、そして、トラミ嬢にニャントロホテップまでが驚愕した。

 今一緒に拘束されていたはずのセリア嬢の姿がいつの間にか消失していたのだ。

 そして、いずこから飛来したたくさんの投げナイフが俺とトラミ嬢を拘束していた黒いロープを切り裂いた。


 「驚いたわ!まさかここまで大がかりな計画だったとわね!!」

 俺たち、そして、ニャントロホテップは部屋の上部からの響いた声に顔を上げ、さらに驚愕することになる。

 体にフィットした銀色のへそ出しのスーツを着用し、同じく銀色のアイマスクを被り、銀髪をたなびかせた若い女性がシャンデリアの上に立っていたのだ。

 「邪神ニャントロホテップ!!その方、「アイボンの書」という悪書で多くの人を惑わし、さらに『破壊と混沌の魔人』を使って、世界を破滅に導こうとは不届き千万!!

 シードラゴンマスク!ただいま推参!!」


 叫ぶと同時にシードラゴンマスクは俺たちとニャントロホテップの間にふわりと舞い降り、ニャントロホテップを睨みつけた。

 「天に代わって悪を撃つ!!」


 俺とトラミ嬢、そしてニャントロホテップまでが完全に固まっていたが、敵意を向けられたニャントロホテップが最初に我に返った。

 「く!!出でよ、『名状しがたき猫!』我を守れ!!」

 ニャントロホテップの叫びに応え、その横にドラゴンほどの大きさの漆黒のライオンが姿を現した!いや!それ、猫じゃなくて、ライオンだよね?!


 「シードラゴン・ソニックウェイブ・ラリアート!!」

 ライオンはシードラゴンマスクの左腕の一閃で壁まで吹っ飛んだあと、めり込んで動かなくなった。……どんだけチートなんですか…。


 「さて、ニャントロホテップさん。」

 シードラゴンマスクは満面の笑み、それも目が全然笑っていない『戦慄の笑顔』を見せながらニャントロホテップに迫った。

 「アイボンの書にいろいろ好き放題書いていただいたようですね♪」

 「え?いや、あのですね……。」

 「歯―食いしばれ―――!!」

 そして、ニャントロホテップの悲鳴が城中に響き渡った。


 『多くの魔王や怪物を素手で屠る血も涙もない怪物。』…アイボンの書のこの部分は正しかったようだ…。


 そして、シードラゴンマスクは高笑いしながら、風のように姿を消した……。

 え??お連れのトラミ嬢は??!!



 「トラミちゃん!大丈夫だった?!」

 しばし呆然としていたところ、『悪役令嬢・セリア公爵令嬢』が戻ってきた。

 「セリアさんも無事だったのにゃ!!」

 トラミ嬢が泣きながら、セリア嬢に飛びついた。


 「二人で白々しい芝居してんじゃない!!」

 俺が叫ぶと、トラミ嬢はきょとんとし、セリア嬢は気まずい表情で顔を反らした。

 いやいや、トラミ嬢、セリア嬢の正体を知らんかったんかい!!


 「まあ、とりあえず、事件が解決してよかったわ!では、アデュー!」

 気まずそうな表情のまま、セリア嬢は左わきにトラミ嬢を抱えると、風のように去っていった。




 「はーい、またうちのクラスに転校生です♪」

 ニコニコしながらアルテア先生が背の高い男子生徒と一緒に教室に入ってきた。

 その細身の顔立ちの整った顔は…ま・さ・か!!

 「グレン・ライアンと申します!隣国トーテムからの留学です。みなさまよろしくお願いします。」

 にっこり笑ったグレンは、私の方を見てウィンクしたのであった。


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