13 エピローグ
ゲートをくぐって石川邸に戻ると、みんなが安心して出迎えてくれると同時に、ドクターフランケンがいるのにびっくりしていた。
連れて帰ったドクターは自分以外の『秘密結社スーパーモンスターズ』の幹部の正体を明かされて呆然としていた。とりあえず、いろいろ考え直したいそうなので、監察処分にしつつも本人の意思を尊重することにする。
私とちーちゃん、アルさんは心身ともに限界を超えていたので、状況説明をした後はそのままベッドで轟沈してしまった。
翌日の昼過ぎに目を覚ますと、光ちゃんや遥ちゃん、バネちゃんは学校に行っており、巧さんが食事の用意やいろいろ世話をしてもらった。しばらく料理をしていない気がする。腕が鈍っていないかどうか、明日にでも夕飯を作って光ちゃんに味見をしてもらおう。
各国政府には『大魔女リディアとシードラゴンマスクと神那岐の太刀の継承者と地球防衛軍副隊長・土御門美夜の四人がかりで星舟ごと何とか撃退しました。』と説明して無理やり納得してもらった。
心身の消耗は三人とも思ったより酷かったようで、何とか翌日にちーちゃんが、翌々日にアルさんが、四日後にやっと私が学校に復帰した。
本当に久しぶりに学校に行く気がする。
そして、世界を揺るがす騒動から一週間後、放課後の教室で私はへこんでいた。
『物理のテストが赤点』だったのだ。
他の科目ならまだいい、よりによって、今回の騒動でものすごくお世話になった光ちゃんの担当教科だけ赤点なのだ!
恥ずかしいというか、申し訳ないというか、頭が非常に痛い。
ちなみに当初成績が低空飛行で悩んでいたバネちゃんは、『彼氏』のキヨマーや遥ちゃんに教えてもらいだして、かなり成績が良くなってきた。
そのこと自体はいいことなのだが、私一人だけ「赤点で残る」のは実に寂しいものがある。
ちなみにちーちゃんと遥ちゃんは成績はトップクラスだ。特に私と同じように学校に出ていないちーちゃんは成績には全然影響していないらしい。
すごいなあ、ちーちゃん!私も少しは見習おう!…といいつつ、たくさん数式が並んでいるとだんだん何が何だか分からなくなってくるのだ。
同様の理由で数学もたくさん式が並びだすと、途中で何が何だか分からなくなることが多い。数学も苦手だが、物理はさらにその上を行くのだ。
「瀬利亜はん!お待た―!」
光ちゃんがニコニコしながら教室に入ってきた。
機嫌がよさそうなのは非常に幸いである。さも不機嫌そうに入ってこられていたら十倍くらいへこんでいたかもしれない。
「瀬利亜はん、しばらく本当に忙しかったから、なかなか勉強の時間も取れへんで、大変やったね。よう頑張って、赤点を物理だけに留めたもんや!」
「いえ、これでも英語と社会科系は満点に近かったと思うんだけど。」
「ほんまやねえ。ごめんごめん。瀬利亜はんは『実務系』に近いものは非常に得意やもんね。数学とか物理みたいに『理論系』を理解されはるんは少し時間がかかりはるからな。」
光ちゃんがしみじみと言う。うーむ、相変わらず私のことをよく把握してくれているなあ。
「瀬利亜はんの苦手なものをわてが得意でカバーすることが多いから、スーパーヒーロー・ヒロインとして組むんなら全然問題にならへんのやけんどね。
まあ、うちの高校の場合は三年で文系を選択されはるんなら物理も来年からは必要なくなるから、あまり気にせえへんでもいいんでは?それとも『理系の学部』を選択されはるんでっか?」
「うーん、大学行かずに即『モンスターバスター協会』フルタイムしながら、いろいろ学んでいこうと思うからね。私、研究者タイプじゃなくて、『仕事しながらキャリアアップ』する方が性に合っている気がするし。」
「 じゃあ、文系にしといて、無理に物理も勉強せえへんでええんちゃう?」
「いえいえ、光ちゃんの担当教科なんだから、もっと頑張んないと!」
そういうと光ちゃんは照れ臭そうに笑った。
「そう言うてくれはるんは嬉しいんやけんど、いろいろ考えて、来年度から教師やのうて、別の仕事に就こうか思うてんね。」
はい?!なんだって?!
「 いえいえ!一体なにがあったの??」
「モンスターバスター協会の中のシステム構築や、トラブル解決時にサイバー技能を駆使したサポートメンバーをやろうと思うんや。で、将来は『スーパーヒーロー協会』を瀬利亜はんや何人かと立ち上げて、それを本職にするんや!」
「なにそれ!すごいじゃん!!」
光ちゃんが教師を辞めたら、一緒の時間が減るかも…と思いかけていた私の左ななめ上を行く答えが返ってきた。
「じゃあ、私も負けないように頑張らないとね!」
「そうそう、勉強って、わかるようになった方が楽しいのは瀬利亜はんもようくご存じの通りや。今からゆっくり時間を取って解説するさかい、じっくり聴いといてな。」
一時間半が経過し、私は灰になっていた…。
「光ちゃん、送ってくれるんだ!ありがとう!」
「一週間前は死ぬほど活躍されはったからね。さらに言えば、夕飯をアルテアはんが作ってくれはるとかでわても石川邸でご馳走になるねん♪」
なに?!そんな話があったのか!!なんとなく、妬ける気がする!私の料理も食べろ!……いやいや、何を変なことを考えてるんだ、私!
「そういや、ほんの一週間で朝晩が急に寒うなってきたなあ。あっという間にクリスマスが来そうやねえ。」
その話を聞いて、アルさんの最後の激励を思い出した。
「そうだ、光ちゃん!アルさんが『ここを乗り切れば、瀬利亜ちゃんは素敵な聖夜を過ごせるみたい♪』というビジョンが見えたそうなのよ!今年はスゴイチャンスが!光ちゃん、どうしたの?」
なぜか、私の話の途中で光ちゃんが固まってしまった。おーい!大丈夫か??
「そうや、ホンマに間もなくクリスマスやな…。」
そういや、光ちゃんは今までは毎年上手にクリスマス前には確実に彼女を作っていて、毎年ラブラブの聖夜を過ごす、リア充だったよな…。うーむ、私にもそのリア充ぶりをおすそ分けしてほしいものだ。
「な、なあ、瀬利亜はん。よかったら、クリスマスパーティを一緒にやらへんか?」
あれ、今年は私に振ってきたよ?どういうこと?
「いやあ、よく考えてみたら今まで一度もクリスマスパーティは一緒にやったことがあらへんやん。今年は『世界を救ってくれはったご褒美』に特製のクリスマスパーティにご招待や♪」
「うわー、それは嬉しいな♪じゃあ、クリスマスは私の手料理を振る舞ってあげよう♪」
「いやいや、瀬利亜はん、招待される側が料理を作りはったんじゃ悪いやん。」
「あら、光ちゃんは私の『愛妻料理』が食べたくないとおっしゃるんですか?」
あれ、光ちゃんさらに固まったぞ?
「…瀬利亜はん、大人をからかってはいけないと学校で習われはってないんでっか?」
「ごめんなさい、習ってないんです♪」
「そら、困ったな。まあ、そこは今からの流れ次第てわてが『愛夫料理』を作らせてもらうかもしれへんから、臨機応変ということにしときましょう。」
「わかりました。『旦那様』♪」
「瀬利亜はん、その言葉をわてが本気にしたら、責任とってくれまっか?」
「もちろん、ばっちり取らせていただきますよ♪」
笑いながら二人で言葉のやり取りをする。
ちなみに光ちゃんが『教師を辞めた真の理由』と『クリスマスパーティの行方』が私の予想の斜め四五度はるか上をいくとはこの時の私には知る由もなかった。
第二部完
世界を最も震撼させた1週間
一日目 ドクターがレジウスの封印を解く。ルーリーくんも起きる
二日目 瀬利亜、ルーリーくんを従属竜から助ける。
三日目 瀬利亜、レジウスと初対決。
四日目 瀬利亜、記憶喪失になり、看病される。
五日目 星舟、世界を震撼させる。瀬利亜復活
六日目 瀬利亜たち星舟に突入
七日目 神は安息日を決めたもうた♪




