38 それでも地球は回る その2
「水音!!帰ってきてくれーー!!」
千早の父、水音の夫の泰蔵が泣きながら入ってきた。
「千早が出て言った後、自分の生活能力のなさを痛感しました!!
頑張って、家事も分担してやるようにします!!ギャンブルも断ちます!!
頼むから帰ってきてくれーー!!」
瀬利亜も含めて、三人とも目が点になった。特に水音は顔が凍りついてしまっている。
「すんまへん!出す予定やなかったのに、泰蔵さんが暴走してもうたんです!!」
光一が謝りながら顔を出して、泰蔵を引きずって退出していった。
「「………。」」
「…すみません!ちょっと手違いが生じたようね。では、今度こそ!」
「お母さん!!なにやってるの!!!」
千早が顔を真っ赤にして怒鳴り込んできた。
「どうして、こんな恥ずかしいことしているの!!恥ずかしくて、みんなに顔向けできないじゃない!!
せっかく瀬利亜さんが『お嫁にもらってもいい♡』て言ってくれたのに…♡」
セリフの最後の方は顔を真っ赤にして声が小さくなっていった。
水音は完全に固まってしまい、瀬利亜も硬直してしまっている。
「すんまへん!今度はちーちゃんが暴走してまいました!!」
「…光ちゃん、わざとやってない?」
「ノンノンノン!そんなことはあらへんです。」
瀬利亜の抗議に光一は真面目な顔で一生懸命謝った。
「…ちーちゃん、お母さんはきちんと説得するから、戻ってくれるかな♡」
瀬利亜が最高の笑顔を作って笑いかけると、千早もぱっと顔を輝かせて素直に戻っていった。
(…瀬利亜はん、さすがすぎや。でも、立てたフラグがより一層大きくなった気がするんやけど…)
千早と一緒に戻りながら光一は一人ごちた。
「すんまへんでした!今度こそ、本命の登場やで!」
光一が『その人物』と一緒に入ると、警戒していたコーザルの顔色が変わった。
『大河内麗華』は真剣な顔でコーザルを見つめて、声を出した。
「黄金マント様…いえ、コーザルさん。心が折れてしまっていた、私を助けていただいて、ありがとうございます。でも、もういいんです。これ以上していただく必要はありません。ご自身を犠牲になさらないでください。」
麗華は優しい視線でコーザルを見つめ続けている。
麗華をじっと見ていたコーザルの顔が麗華の言葉を聞いた途端、優しく変わった。
「麗華よ、ありがとう。だが、この計画は最後まで止めるわけにはいかん。今の地球の文明の状況を誰かが変えねばいかんのだ。」
「コーザル、どうしても引けないというのね!」
「ああ、引くわけにはいかん!」
しばらくコーザルとにらみ合っていた瀬利亜は麗華に歩み寄っていった。
「ふっふっふ、ここで引かないと、『愛しの麗華ちゃん』の命の保障はしないわよ!」
急に『悪い顔』になって、瀬利亜が叫ぶと、すでに完全に固まっていた水音以外の三人も凍りついた。
「あかん!!瀬利亜はんはそんなことをしたら絶対あかん!!」
最初に正気に戻った光一が素早く麗華を瀬利亜から引き離した。
「ええ!!本気で言うわけないじゃない!!ただ、この行動によって『麗華ちゃんへの愛』をコーザルが自覚したりとか、『おもしろい展開』が見られるかもしれないと思って♪」
「それにしても、やりすぎやから!!ちゃんと、麗華はんにあやまり!」
「…麗華ちゃん、びっくりさせてごめんなさい。」
光一が真剣に怒ることもあり、瀬利亜は一生懸命頭を下げた。
「…では、そろそろ全員『地球システム』から出ていっていただこうか。この中で私に勝てるものはいないのだからね。」
緩んでしまった雰囲気を何とか元に戻そうと、コーザルが真剣な顔をして言い放った。
「ふっふっふ、それはどうかしら?黒幕があなただと感じた時からすでに対策は立てていたわ!!名付けて『大リーグ養成作戦』!!」
瀬利亜の叫びにコーザル、光一、麗華が瀬利亜に注目する。
「『透明になって、馬鹿には見えない大リーグ養成ギブス』を1か月前からずっと着用していたのよ!!これを外したシードラゴンマスクの戦闘力を見て頂こうかしら!!
……ちょっと待ってね。これ外すの意外と面倒くさいの…。」
「あかん、瀬利亜はん!!ギブスを外すためとはいえ、人前で服を脱いだらあきまへん!!」
光一が慌てて駆け寄って、着ていた上着をかけようとする。
「ごめんごめん!シードラゴンモードになると『羞恥心が完全に飛んで』しまうもんで。コーザル、ごめんなさい。ちょっとだけ待ってね。」
「……。」
五分後、ようやくコーザルとシードラゴンマスクは対峙した。
「では、大リーグ養成ギブスの成果を見てもらおうかしたら!!」
「…わかった、やってみるがいい!!」
大きく下がったテンションを何とか元に戻すと、コーザルをシードラゴンマスクを睨みつけた。
二人とも闘気がだんだん上がっていくが、瀬利亜の気の上昇が特に凄まじいものがあった。
「大リーグ養成ギブスでなんで気が上昇するんやろうか?」
光一の疑問には扉から現れたアルテアが答えた。
「ふっふっふ、それはね。体に負荷がかかった分を無意識に『気』で増強することで対応しているからです。あのギブスは私が作ったんだけど、ちょっとだけ心身に負荷がかかるように自在に調整できるようになっているの。自然に過ごすだけで『気の力を引き出すトレーニング』をしているようなものね。
ただ、こうして見るとちょっと不便みたいだから、『気に対してだけ負荷がかかる』ギブスみたいなのにしてもいいみたいね。」
「…最初から『気だけ鍛える』ようにしていればよろしかったんでは?」
「…ごめん、今気づきました。」
「シードラゴン流星拳!!」
「コーザル、クラッシュ!!」
そうこうしている間にも二人のほぼ互角の攻防戦が始まった。
それをじっと見ていたアルテアが言った。
「ここはしばらく放っておいて、周りの後始末とか片付けとか始めましょうか♪」
「え?!いいんでっか?」
「この流れだと『二人とも気力を使い果たしてノックダウン』の流れになりそうだから。もし、瀬利亜ちゃんが負けそうになったら、私がコーザルちゃんを『ノックアウト』するから大丈夫。さあ、まずは水音ちゃんを片付けちゃいましょう。」
言いながら、アルテアはケンタウロス型ゴーレムに水音を乗せて運び出していった。
一二時間後、クロスカウンターを撃ち合い、シードラゴンマスクとコーザル・ガイアはダブルノックダウンした。
それに伴い『地球ロボ』を覆っていた土砂や木々は剥がれ落ち、完全に動かなくなった『都庁ロボ』がそこに残った。
行動不能になった瀬利亜とコーザルは運び出され、アルテアと出田の手によって、再起動された『都庁ロボ』が近辺の復興に大きく役に立った。
エピローグ
締めは私、瀬利亜が話します。
都庁ロボはいざという時は使えるように設定されつつ、都庁ビルに戻りました。
今回の一連の事件はもちろん、世界的に大きな問題になりましたが、私が護衛についた『大魔女リディア』の説得で、各国政府の首脳たちは『不問にする』ことに決めてくれました。
「各国政府が環境破壊を放置し『たくさんの宇宙怪獣を呼び寄せておきながら有効な手を打たなかった』状況で、なおかつ放っておけばさらなる自然からの反作用でこの文明が終わる可能性が高かった」ことを『大魔女リディア』が理詰めで『説教』したので、各国首脳は口をつむがざるを得ませんでした。
もちろん、無理なくできる範囲で『環境重視及び、人以外との共存を目指す政策に変更』することも約束させています。
一連の会議終了後、アルさんが「心労で五キロやせた」とか、「瀬利亜ちゃんがいてくれなかったら『あんな怖い人達』とまともに話ができなかった」とか言ってくれました。
三人の首謀者、コーザルさん、水音さん、マルクさんはしばらく謹慎になりました。
一連の事件で死者が出なかったこと、事件の後始末をモンスターバスター協会がきっちりしたこと、動機が地球や人以外の存在を救いたかったことなどが斟酌されました。
三人が抜けた分、仕事が増えたので、私とアルさんはひーひー言う羽目になりましたが、
今回の『スーパーヒーローたちの活躍』で、『スーパーヒーロー同好会』が『協会』へ格上げになる日も遠くなさそうです。
麗華ちゃんは元の学校に戻りました。
お父さんは今の学校でも構わなかったようですが、幼馴染の神崎美晴ちゃんが、『泣いて頑張った』ので、麗華ちゃんは戻ることに決めたそうです。
ちなみに、魔法で作った「専用ゲート」を使って謹慎中のコーザルにいつでも会いに行けるようにアルさんが、設定してくれました。
ニブチンのコーザルが早く「想いを自覚」することをアルさんと二人で祈っています。
光ちゃんは三週間前に彼女が出来ましたが、昨日振られて思い切りへこんでました。もう少し「寛容な相手」を選べばいいのに…。
まあ、「彼氏いない歴」=「年齢」の私が偉そうに言えた義理ではないですが…。
ちなみに恋をしたことがないのではなく、「素敵だと感じた人」が例外なく彼女がいたり、奥さんがいたりしただけの話なので。
「瀬利亜ちゃん、大変!!謎の宇宙海賊がやってきて、地球防衛軍が壊滅したそうよ!」
タブレットに文章を打ち込んでいたら、アルさんが部屋に駆け込んできました。
「美夜さんと自来也隊長は?!そうか、今火星に行っていたわね!!
了解!行きましょう!!」
そして、アルさんと二人で出撃しました。
「熱く燃え盛る正義の心がある限り!シードラゴンマスクは決して負けたりしないわ!」
第一部完
瀬利亜「最終回も用語解説のコーナーやります♪」
光一「…さすがすぎてコメントしかねますわ…。」
瀬利亜「『予定通り』今日の用語も『プラシーボ効果』です♪」
光一「…最後の最後までそれで通すんやね…。」
瀬利亜「『大リーグ養成ギブス』の件といい、作品のテーマ自体が『プラシーボ効果』と言えるかもしれません♪」
光一「…すごく嫌な作品のテーマやね…。」
瀬利亜「 『願えよ、さらば叶えられん』。『夢を持つことで人生が動き出す』という話につながるようね♪」
光一「…その言葉とこの作品は全く関係ないのんがごっついと感じまんな…。」
瀬利亜「というわけで、第一部は今回で終了です。
ですが、作者はまだまだやる気のようですので、引き続き第二部をお楽しみください。」




