38 それでも地球は回る その1
「はーい、瀬利亜ちゃん、準備整ったよ」
勇者の鎧を着たバネッサ、巫女戦士風の千早、なぜか魔法使い風の遥と共にアルテアが瀬利亜に近づいてきた。
「今回は『誰を中心』にする?」
アルテアが嬉しそうに瀬利亜に問う。
「魔王や闇の怪物みたいな相手なら『神那岐の太刀』が絶大な破壊力を発揮してくれるんだけど、今回は『地球システム』が相手だから、『勇者の剣』で風穴を開けるのが有効だと感じるわね。バネちゃん中心の『Sシステム』でお願いします。」
「待ってください!『地球システム』が相手って?!」
瀬利亜の答えに遥が「あること」に気づいて気色ばむ。
「遥ちゃん、よく覚えていたわね。今回のラスボスは『モンスターバスターズの実質リーダー』にして、『地球の守り手』コーザル・ガイアさんです。『ちょっとだけ』手ごわいですが、あのロボットに風穴を開けて、私が突入できればなんとかなります!!」
「ええ!!どうして、そんな人がこんなとんでもないことをするんですか?!!」
遥の叫びに瀬利亜とアルテアは顔を見合わせる。
「最近、やけに『宇宙怪獣が多く地球に飛んでくるようになった』と思わない?」
「????…ええ、思います。」
アルテアの問いに遥は不思議そうに首を捻る。
「あれは、人間が自然に対して破壊行動を取った『反作用』なの。
今までは地球というシステムを破壊する行動を人間が取ってきたときは『地震、台風みたいな災害』が反作用として起こってきていたのね。
けれど、最近は『気象コントロールシステム』の研究が進んで、ほとんど自然災害を起こらなくすることが出来るようになりました。
でも、『ひずみが起こらなくなるわけではない』ので、人間が今の文明を通して行っている「自然破壊」が結果として『宇宙から怪獣を引き寄せいている』わけ。
だから、怪獣を倒すだけではダメで、同時に今の文明をもっと『自然と共存』するように変えていく必要があるのね。
『人と人以外の存在の共存』ももちろん、その延長線上にあるわ。」
遙、バネッサ、千早が真剣になって聞いている。
「コーザルは今のままでは、この文明が滅び、大きなカタストロフが来るからと、それを止めるためにこういう行動を取ったのだと思うわ。」
「で、でも、このやり方では…」
千早が一生懸命語ろうとする。
「そうね、ちーちゃんの言うとおり、コーザルの危機感は間違っていなかったけれど、やり方が根本的におかしいわね。
『勝手に一部の人が突っ走る』のでは、動機は良くてもうまくいきっこないから。」
瀬利亜の言葉に千早、遥、バネッサは強くうなずいた。
「『Sシステム』始動!!」
アルテアが叫ぶと同時に、懐から戦士型の人形を取り出す。
それはあっという間に大きくなり、バネッサ、遥、千早を飲みこみながらさらに大きさを増していった。
そして、身長五五メートルの青白く全身が輝く女性剣士のフォルムで、背中から翼を生やした『勇者ロボS』が完成した。
「適当なところに穴をあけてくれたら、それでいいから!くれぐれも無理はしないで!」
勇者ロボに向かって瀬利亜は叫ぶと、再びシードラゴンマスクの衣装に変わり、地球ロボに滑るように近づいて行く。
「了解!我々も行こう!」
勇者ロボSのメインパイロットである、バネッサが叫んだ。
内部は眩しすぎないくらいの光に包まれた小さな空間があり、三人はそこに立っていた。そして、魔法的にパイロットの動きをトレースするシステムができており、勇者ロボSではバネッサの動きを完全に再現するようになっている。
千早と遙、そして、遠隔でアルテアもそれぞれの霊力・精神力で勇者ロボの存在そのものを支えている。
「今度はちーちゃんがメインの『勇者ロボN』と遥ちゃんがメインの『魔法少女ロボ』も見てみたいわね。ただ、彼女たちが『活躍する機会』そのものは来ない方がいいんだけどね。」
アルテアが勇者ロボの後ろ姿を眺めながらつぶやく。
「だりゃーーー!!!いっくぞ―――!!」
雄叫びを上げながら、抜刀すると勇者ロボは『地球ロボ』に向かって突っこんでいった。
勇者ロボが近づくと、地球ロボの右手のひらから金色に輝く剣が生えてきた。
そして、勇者ロボの剣戟を右手の剣で受け流す。
「だりゃだりゃだりゃーーー!!」
バネッサは断続的に剣戟を繰り返すが、地球ロボは手堅く打ち返す。
サイズは小さいがスピードに勝る勇者ロボは果敢に地球ロボの懐に入り込もうとするが、地球ロボが手堅く守っているので、なかなか近づけないでいる。
(く、防御が固くて、あいつに穴をあけるどころではない!現状では勇者ロボは一〇分しか活動できないのに!!)
バネッサは勇者ロボの活動時間制限のことを踏まえて、焦っていた。
「…これに入るわけね。」
サーカスかマジック弾で使うようなレトロ風の大砲を見ながらシードラゴンマスクがつぶやいた。
「そう、一見したところおもちゃにしか見えないからごまかせるようになっているのさ。」
地球防衛軍技術担当「出田哲也」が自慢そうに言った。
「でも、相手の『千里眼で見透された』ら邪魔が入る可能性があるから、ちゃちゃっとやっちゃいましょう。」
シードラゴンマスクは言うが早いか、大砲の後ろから砲身に入り込んだ。
「では、『バリア砲弾』ファイアー―!!」
『強力な小型バリアー』に包み込まれたシードラゴンマスクは砲弾と化して、地球ロボの真ん中あたりに結界をぶち破って突入した。
「やられた!!瀬利亜嬢に侵入された!」
「ここからかなり近い位置のようね!まずは勇者ロボを…」
シードラゴンマスクの地球ロボの侵入に驚いた二人は、ひとまず、勇者ロボを行動できなくした後、瀬利亜に対処しようとした。
だが、シードラゴンマスクが侵入した直後、勇者ロボは姿を消していた。
一瞬あっけにとられた二人だが、コーザルはある事実に気づき、愕然とした。
「アルテアがいろいろ仕掛けてくるぞ!!」
勇者ロボに魔力を送る必要がなくなれば、アルテアは自由に動けるのだ。瀬利亜が中にいる状態で「多彩な魔法や魔法道具」を操るアルテアの行動が全く読めないのは非常に頭が痛い状態だ。
「ここは『地球システム内』だ、なにか仕掛けてこられてもいくらでも対応できる!」
コーザルは自分と水音に言い聞かすように声を出した。
(次の階に二人がいるわけね。)
素早く階段を駆け上がっていたシードラゴンマスクはコーザルと水音の気配を感知した。
(当然、私がすぐ近くまで来ているのは『見て』いるでしょうから、奇襲をかけてもだめだと。では、アルさんから借りた『これ』を活用するときがいよいよ来たわけね♪)
シードラゴンマスクはポシェットから取り出した、マットを広げると、タブレットでいろいろと操作を始めた。
「お久しぶりね!コーザルと水音さん♪」
扉を開けて、二人を確認すると、シードラゴンマスクは言った。
「確かに久しぶりだな。石川瀬利亜。こんなに早くたどり着くとは思わなかったよ。」
「千早がお世話になってます。これからもよろしくお願いします。」
シードラゴンマスクを見て、コーザルは肩をすくめ、水音は頭を下げた。
「もうこれ以上することもないでしょう。そろそろ片づけてもらえるかしら?」
「悪いが地球ロボの中は『絶対防御システム・地球システム』が働いている。私はどんな相手にも負けはしない。怪我をしないうちにとっとと帰りたまえ。」
シードラゴンマスクとコーザルはにらみ合いを続けている。
「そう来ると思ったわ。でも、これを見てもそれが言えるかしら…。」
シードラゴンマスクの言葉の後に入ってきた人物を見て、二人は言葉を失った。
瀬利亜「恒例の用語解説のコーナーです♪」
光一「もう、完全に続ける気なんやね。」
瀬利亜「なんと、今日の用語も『プラシーボ効果』です♪」
光一「…さすがにこれ以上突っこむ気も失せてしもうたし…。」
瀬利亜「モンスターバスターズと言えば、プラシーボ効果。プラシーボ効果と言えば、モンスターバスターズ。みたいになるまで続けたいみたいよ♪」
光一「…それ、未来永劫不可能なんちゃうん…。」
瀬利亜「やらない後悔の方が、やった後悔よりずっと大きい…という言葉があるそうよ♪」
光一「言葉は適切でも、使う場面を完全に間違えとるよね?」




