13 怪人赤マント
番外篇が入ったので、復習を兼ねて主要登場人物の確認を。
「石川瀬利亜」 A級モンスターバスターにして、風流院高校「雪組」に通う女子高生。しかして、その実態は無敵のスーパーヒロイン・シードラゴンマスク。「熱く燃え盛る正義の心がある限り決して負けない(自称)」
「神那岐千早」 B級モンスターバスターで、「対魔神刀・神那岐の太刀」を操る剣士。一四歳だが飛び級で風流院高校「雪組」に通う「天然巫女」
「錦織 光一」 怪しい関西弁を操る二枚目でおちゃめな風流院高校「雪組」担任教師。情報や様々な道具で仲間をサポートするスーパーヒーロー「電脳マジシャン」
「安倍 清正」 風流院高校「雪組」に通う男子生徒。「魔王の血を引く」はずなのだが…。
「バネッサ・日下部・オブライエン」 風流院高校「雪組」に通う女子高生。「勇者(笑)」
「ドクター・フランケン」 秘密結社「スーパーモンスターズ」幹部を名乗る、おっさん。
「こちらです。」
支配人の案内で小早川充、石川瀬利亜、神那岐千早の三人は園内を進んでいった。
「テーマパーク『アステカ帝国村』存亡の危機なのです。」
初老の支配人は酷いストレスで困憊しきっているようだ。
「開園3年目過ぎて、ほぼ今日まで「アステカ帝国村」は順調にやってこれたといえるでしょう」
(よくこんな「特殊すぎるテーマ」でテーマパークを三年も維持できたものね…)
きょろきょろ見回しながら瀬利亜がひとりごちた。
「なるほど、この『斬新すぎるテーマ』と、その実しっかりしたリサーチとサービスがじわじわお客様を増やした原動力となってきたわけですね。」
充はふんふんとうなずいている。
建前だけでなく、「青年実業家としては優秀」な小早川充は『業界の予想に反してアステカ帝国村がしっかり繁盛』している状況を把握していたようだ。
「しかし、三日前にここ『ゴシックホラーハウス』に『謎の怪人赤マント』が出没してから、現在まで閉園せざるを得ななっているのです。」
純洋風のおどろおどろしい館風のテーマ館を前に支配人がうつむいた。
「他がアステカ風なのに、どうしてここだけ『純洋風』なんですか?ものすごく違和感を感じますけど。」
貴重なツッコミ役がいないので、仕方なく瀬利亜がツッコミに回る。
「最初はアステカ風のホラーハウスでした。でも、アステカ風のホラーでは日本のお客様が全然ピンと来られず、評判が悪かったので、『洋館でごまかし』ました。思いのほか、評判がよかったので、胸をなでおろしていたところです」
(正直な方がいいとはいえ、そこまでぶっちゃけていいものかしら…。)
「で、赤マントがどんなふうに出てきたのかしら。」
いつまでも突っこんでいても話が進まないので、瀬利亜が続きを促した。
「20代のカップルのお客様が最初に遭遇されました。」
山高帽をかぶり、赤い仮面、赤いマントを羽織った男がカップルの前に出てきたとき、カップルはテーマパークのアトラクションだと思い、それほど驚かなかった。
しかし、赤マントが『ある問いかけ』をしてきたときから話が違ったのだ。
「なるほど、そこで赤マントは言ったのですね。『お前が落したのはこっちの金のマントか?それともこちらの赤いマントか?』と。欲張ったカップルが『金のマント』を欲しがったばっかりに…」
「充さん、それ、話がいろいろ混ざってるから」
瀬利亜が何とか話を戻そうとする。
「赤いマントと青いマントどっちが欲しい?」
その問いかけにカップルの女性は「赤いマント」と答えた。
「恐ろしいことにそのカップルは全身を真っ赤に染め上げるように……
赤いペンキを塗りたくられて気絶していたのです!!」
「その話だけ聞くとすごくしょぼい事件ですね…」
瀬利亜がこめかみを押さえながら言った。
「本当に恐ろしいのはそれからです。」
事件が起こり、調査に入った五人の警備員は全身を青いペンキで染め上げられて気絶していた。
その後、調査に入った一五人の警官隊は赤マントを追い回したが、風のように素早く動いて躱され続けた。そしてついにしびれを切らした一人が「赤いマント!」と叫んだかと思うと、あっという間に全員気を失った。
後続隊が駆けつけた時には「真っ赤な警官隊」が一五人気絶していたのだった。
「能力がすごい割にはその『嫌がらせまがい』のセコイ行動は何を意図しているのでしょうね?」
瀬利亜が眉をしかめて、洋館を見ていたが、ややあって、目を細めた。
「敵は複数いるようね。前回のサラマンダー並と思っていた方がよさそうよ。」
敵の気配を感じ取ると、建物を鋭く見据えながら瀬利亜が笑った。
「あの、お化け屋敷ってあまり感じのいいものではないですね。」
本物の(強力な)モンスターがいるとわかっている気持ち悪い建物を進んでいくのは千早にとってもあまりいい気分のものではないようだ。
少し開けた広間に出た時、三人は異様な気配に気づいて身構えた。その眼前に音もなく、真っ赤な装いの男が姿を現した。
「お前が落したのはこっちの金のマントか?それとも赤いマントか?」
「………」
「ほら、瀬利亜さん。私の言ったことが正しかった。」
さすがの瀬利亜もしばし、頭を抱えたが、すぐに立ち直って、赤マントの眼前に躍り出た。
「ふざけてるんじゃない!!」
瀬利亜の左回し蹴りをかろうじて飛ぶすさって躱すと、赤マントは笑った。
「噂通り手ごわいようだ。だが、『われら』に勝てるかな?」
赤マントが叫ぶと同時に後ろの扉から二つの影が飛び出した。
「赤マント!」
「青マント!」
「花柄マント!」
「「「マント三兄弟参上!!」」」
ハモると同時に筋骨隆々の赤、青、桜の花びら模様の帽子・仮面・スーツ・マントのマッチョな三人組が横一列に並んだ。
「 赤・青・花柄 まんと まんと♪
三つならんで まんと まんと♪
ペンキをぬって まんと まんと♪
マント三兄弟♪ 」
「一五年も前のネタを取り出すとは…やるな、怪物ども!!」
「いやあ!!また変態さんです!!」
「踊りの切れがイマイチだわね!」
三者三様の様子を見せつつ、唄って踊り終えたマント三兄弟といつの間にか着替えた(千早を除く)ヒーローたちがにらみ合った。
「シードラゴンのガトリング!!」
百列拳とは似て非なる拳撃のラッシュでシードラゴンマスクは赤マントを床にノックアウトした。
「ゴージャス・ブリリアントクラッシュ!!」
パワーアップしたゴージャススーツのおかげか、青マントをキレのいいアッパーカットでキャプテンゴージャスはノックアウト勝ちした。
「峰打ちです。もう、立ち上がらないで下さい。」
カチッと千早が刀を鞘に納めると同時に花柄マントは床に崩れ落ちた。
(最近、変態さんのあいてばかりしているようなきがしますぅ…)
内心泣きそうになりながらも、千早は何とか平静を保った。
「ふう、どうやら片付いたようだね。」
ゴージャスが歯をキラッと光らせながら言ったが、シードラゴンマスクは首を振った。
「まだ、本命が居るはずよ……来た!!」
神経を研ぎ澄ましていたシードラゴンマスクが天井を見上げた途端、屋根をぶち破って、二つの人影が飛び込んできた。
白いローブ、青いローブをそれぞれ被った男たちは異常な殺気を漲らせていた。
「これで逢うのは二度目だな」
男は白ローブを放り投げると叫んだ。
「我はマント軍団総帥!『黄金マント』だ!」
男の姿を見て、三人はわが目を疑った。
一八〇を超える筋肉質の体。
充とも引けを取らないハンサムで、まっすぐな長い金髪。
その男が『金色のマントのみ』を羽織り、金色のふんどしを締めているのだ!!
千早はあまりのことに完全に泣きそうになっており、瀬利亜すら今までで最大級の衝撃を受けていた。
「そして、私は!」
青ローブの男もローブを投げ捨てると前に出た。
「マント軍団四天王の一人、『ダンスでマント』だ!」
細マッチョの男は青いレオタードを着ており、バレーシューズを履いていた。
「また、変態さんですう!!」
泣きながらもしかし、千早も何とか対峙している。
そして、瀬利亜は…
「『いろいろな意味で』ただものではないわね。でも、熱く燃え盛る正義の心のある限り!シードラゴンマスクは決して負けたりはしないわ!!」
ふっと笑うと、今までで最強の『金色の敵』を睨み据えた。




