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ザップマンの憂鬱 その1

 「怪獣出現!地球防衛軍出動!」

 地球防衛軍の隊員である北壁誠也(きたかべせいや)は防衛軍戦闘機「スーパーファルコン一号」に乗って出撃した。

 怪獣は某県の父母湖(ちちははこ)に現れたという報告が入っている。


 富士山麓の秘密基地から某県の父母湖までは、マッハ3のスーパーファルコンだとあっという間に到着する。


 「キシャーーー!!」

 湖面から巨大な直立歩行の巨大なトカゲのような怪獣が姿を現した。

 「ゴ、コメラ!?」

 以前防衛軍が戦った、海の大怪獣ゴメラにそっくりの怪獣がこちらを見つけて吠えている。

 色は赤みがかってゴメラより一回り大きいようだが、おそらく同じ種類なのだろう。

 赤ゴメラは誠也の攻撃の意志を感じたのか、口から「謎の怪光線」をスーパーファルコンに向かって吐き出した。


 「危ない!?」

 かろうじて、直撃は避けたものの、後部尾翼と左翼が吹き飛ばされ、機体のコントロールが出来なくなった。

 「くそ、このままでは!?」

 スーパーファルコンが落下を始めたその時、不意に機体が金色の光に包まれた。


 金色の閃光が晴れると、そこには身長五七メートル、体重五五〇〇トンの赤ゴメラとほとんど変わらない大きさの巨人が立っていた。

 青と銀色を基調にしたスーツを着ているようなシルエットのヒーローN88星雲から来たザップマンだ!


 「キシャーーー!!」

 赤ゴメラが吠え、再び口から怪光線を発したが、ザップマンは右手にバク転しながら光線を避け、一気に赤ゴメラの懐に飛び込んだ。

 「ショワ!!」

 ザップマンは水平チョップを叩きつけ、ひるんだところをキックにかかるが、赤ゴメラのしっぽに弾き飛ばされた。

 ゴメラが再び怪光線を吐くが、空中に飛びあがって(かわ)すと、再び赤ゴメラの(ふところ)に飛び込み、がっぷり四つに組む。

 (よし、前回のゴメラとの戦いより、ずっとうまくいっているぞ!)

 ザップマンは一人ごちた。



 一年前、ゴメラに惨敗した時、ザップマン=誠也は想像を絶するほどの精神的ダメージを受けた。自分に代わって、「等身大のスーパーヒロイン」がゴメラを撃退したということがさらに追い打ちをかけた。

 あの日以来、誠也は今までの何倍も肉体的な習練を積んだ。

 前回は格闘戦でボロボロだったのが、今回は優勢に立っている。ザップマンフラッシュの威力も一年前よりさらに上がっている。

 赤ゴメラのしっぽの攻撃をかわし、うまく回し蹴りを叩き込んだところで、ザップマンは勝利を確信した。まさにその時!

 (ザップマン!! 危ないから後ろに下がって!!)

 女性からのテレパシーメッセージがザップマンの頭に響き、足元から強烈な殺気が近づくのが感じられた。


 ザップマンが慌てて飛び退ると、水面下から巨大な影が赤ゴメラの周りに現れ、あっという間にゴメラを包み込んだ。

 (陰陽術の式神!? 土御門(つちみかど)副隊長か!!)

 ザシュ!ガツガツ!!ボリボリ!!

 真っ黒でとても地球上の生物とは思えない形状の異形の式神がどうやら赤ゴメラを捕食、かみ砕いているようだ。


 (ザップマン、ありがとう!! おかげで怪獣が市街地に出る前に食い止められたわ。

 死傷者ゼロで済んで、本当によかった。)

 土御門美夜(つちみかどみや)からのテレパシーメッセージは非常に嬉しそうだったが、ザップマン=誠也は何ともやるせない気持ちでいっぱいだった。



 「全く何やってんだ!! あれくらい避けろよ!!」

 防衛軍基地に戻ると、同僚隊員の(あずさ)が怒鳴った。

 速水梓(はやみあずさ)は誠也の一つ年下の二四の女性隊員だが、操縦センスが世界中の地球防衛軍でもずば抜けており、怪獣の怪光線すらすいすい避けてしまう。

 「速水隊員、せっかく北壁隊員が無事に戻ってくれたのだから、もっと労わってあげないと。」

 副隊長の土御門美夜が梓をたしなめる。一つ年上の魅力的な女性上司に労わられる状況というのは普通の状況ならむしろ嬉しいくらいなのだが、ザップマンになってすら活躍できなかった誠也にはさらに落ち込む原因になった。


 「あと、飛行機でひょいひょい光線を躱せるのはあなた位だから。それ、一種の超能力だから、自覚しないと」

 「でも、土御門副隊長は『式神』で怪光線とか防いじゃいますし、風魔隊長も『忍術』で光線を無効化しますよね。」

 「そうね、風魔隊長の無効化の仕組みはどうなっているのかしらね?」


 途中から隊長の風魔自来也(ふうまじらいや)の話になったので、誠也は二人の話の矛先からそれることになった。

 ただ、風魔隊長の話になって、誠也はさらに落ち込むことになった。

 (おかしい!ここの連中全員おかしいから!!どんだけ、チートなメンバーなわけ!?)

 防衛軍のメンバーのことを思い浮かべながら、誠也はクラクラしそうになった。


 二年前、宇宙怪獣が急に地球に数多く飛来するようになり、世界中に「地球防衛軍」の支部がいくつか作られた。なぜか日本にとりわけ多く飛来することから、日本支部のメンバーは特に強力なメンバーが集められた。


 メンバー選考は最強の陰陽師にして、世界のトップモンスターバスターの一人でもある土御門美夜を中心にチーム作りが進んだ。

 ただ、外部折衝・イメージ・組織をまわす上で隊長は『元御庭番の風魔自来也』がなった。そして、国連軍の天才パイロットとして将来を嘱望されていた速水梓。

 科学技術隊員に『マッドサイエンティスト』出田哲也(いでたてつや)まではすんなりと決まった。

 そして、難航した五人目に宇宙怪獣から地球を守るために飛来していた北壁誠也が「ザップマンパワー(という超能力)」を駆使して、五人目に選ばれたのだ。


 地球の人間に擬態(ぎたい)して、地球防衛軍に入隊し、隊員で現場に駆けつけやすい状況にしつつ、ザップマンとして地球を守るという当初の計画は予定以上にうまくいった。

 うまくいきすぎるくらいにうまくいった。

 地球防衛軍のメンバーそれぞれがザップマンの想定をはるかに上回って強かったのだ。

 怪獣は合計で一〇〇体以上出現したが、その状態で死者がゼロ、負傷者が合計で数十名という完璧と言えるくらいの活躍だった。


 ただ、ザップマンにとってはいくつか誤算があった。

 北壁誠也があまり活躍しないだろうとは予想していた。

 しかし、ザップマンすらあまり活躍しないのは想定範囲外だった。

 出現した怪獣の半数以上を美夜の式神が屠り、残りの怪獣は隊長・梓・ザップマンがほぼ同数くらい倒していった。

 隊員北壁誠也が倒した怪獣は「ゼロ」だった。

 そして、そのことを梓以外のメンバーは全く責めず、常に優しく接してくれていることもかえって誠也の負担になった。


 (今日はもう休もうか…)

 休憩室に行くと、先客が二人いた。

 「誠也遅かったね。スーパーファルコンが墜落したって聞いたけど、どこか体には異常はないか?」

 椅子にもたれて目の前の女の子と話していた、技術担当の哲也が言った。

 「見た感じは何ともなさそうだよね。友達がスコーンをたくさん焼いたんだけど、誠也さんも食べない?」

 銀髪の少女が腰掛けてスコーンを頬張りながら言った。


 「体の方は全然問題ないよ。そうか、瀬利亜さん来てたんだ。」

 「イギリスの友達がうちに下宿するようになってね。ハーブ料理とかいろいろ教えてくれるから、めっちゃありがたいわ。

 ところで、せっかく来たんだから『組手の』お手合わせする?」

 「……そうだなあ、お願いします。」

 しばし、悩んだ末、誠也はうなずいた。



 一年前、ゴメラに格闘戦で惨敗を喫し、誠也は格闘技を身に着けることを決意したが、防衛軍内に適切な武術の指導者がいなかった。

 風魔隊長は格闘も想像を絶するほど強かったのだが、忍術は特殊すぎて素人に身につけられるような代物ではなかったのだ。

 近くに道場があるわけでもなく、困っていた誠也に美夜は同じ「モンスターバスター仲間」の石川瀬利亜が通う道場を紹介してくれた。

 道場は基地から少々遠かったが、スーパーヒロイン・シードラゴンマスクとしてゴメラを文字通り「殴り倒した」瀬利亜が身に着けている武術を身につけることはとてもうってつけに思えた。


 以来一年近く、誠也は毎週一回道場に通っており、用事で師範代でもある瀬利亜が基地に寄ってくれた時は道場に通う代わりに基地で指導を受ける時もある。


 そのおかげもあって、パイロットスキルもザップマンとしての格闘も確実にレベルアップしてくれてはいる。いるのだが…それでも活躍の追いつかない現状に誠也の悩みは深かった。


 「誠也さん、えらい元気ないわね。」

 柔道や空手などができる「畳の部屋」に向かって二人で歩く途中、瀬利亜が不審そうな視線を向ける。

 「なかなか思ったように活躍できなくて…。」

 「そうなの…美夜さんに告白して、玉砕したわけじゃないのね?」

 瀬利亜の爆弾発言に誠也はひっくり返りそうになった。

 「武道の師範代とは言え、大人をからかわないように!」

 真っ赤になって抗議する誠也に瀬利亜はしれっと答えた。


 「えー、真面目な話ですよ。『行動しない後悔』と『行動した結果の後悔』では、行動しない後悔の方が圧倒的に大きいそうですよ。」

 「後悔するとか、しないの話でなくて!!」

 「二人の雰囲気を見ていて、真面目に推測したの。

 ちなみに心当たりがなかったら、『そんなこと全然ないって♪』くらいにかるーく否定すると思うのだけれど…。」

 「…………」

 地球人としては二五ということになっている誠也であるが、「設定上」八歳年下の女の子に完全に見抜かれていて、誠也は言葉を発せなくなった。


 「ちょうどいいチャンスだから、玉砕覚悟で告白いっちゃいましょう♪」

 「いや、待って!ちょっと待って!!」


 「ここで、特別情報を教えちゃいます♡

 先ほど、私が美夜さんに同じ話をしたところ、『完全に固まって』しまわれました。

 これは『脈がある』どころの話ではありません!間違いないです!!」

 嬉しそうにガッツポーズを取る瀬利亜に誠也は思わずしがみついた。

 「そんなこと今まで考えたこともなかったから、ちょっと待ってってば!!」


 「今まで、考えたこともなかったなんて、なんて純情なんでしょう♪

 よかったら、私がこの愛を『全力サポート』するわ!!」

 瀬利亜の目にらんらんと炎が輝いている。どう見てもやる気マックスだ!!


 「頼むから一人でじっくり考える時間をください!!」

 指導もそこそこに誠也は拝み倒してとりあえず瀬利亜に帰ってもらった。


 ザップマンの憂鬱(ゆううつ)は深まるばかりである。(笑)


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