10 ラスボス登場?
さて、なかなか面白い試合がしばし続き、うち二試合ほどは終了後に私も解説をした後、第七試合になりました。
ロシアの『ビッグマン』VSフランスの『スカイホーク』です。
「競技も中盤戦に差し掛かり、第七試合も強豪同士の激突です!!
ロシア最強とも噂される『ロシアの重戦士』ことビッグマンだ!!
そして、対するはこちらもかなり名の知れている、華麗なるフランスのエース、『スカイホーク』の登場だ!!
こちらも相当おもしろい試合になりそうです。解説のミラクルファイターさんはどうご覧になりますか?」
ジャネットさんがいつも通りにテンション高くアナウンスをして、解説に振る。
「そうですね、これはかなりいい勝負になりそうです。ただ、ビッグマンに関する情報が少ないので、臨時ゲストのシードラゴンマスクの予測も聞いておきたいですね。」
…ええと…いつの間にか『私の席』が設置してあるのですが…。
参加者に解説をさせるなよ!!
とは言え、大会を盛り上げた方がいいに越したことはないので、真面目に解説します。
「まず、フランスのスカイホークですが、『飛行能力』や『サイコキネシス』を活用したスピード重視の戦闘を得意とします。攻撃にESPのエネルギー弾『サイコショック』を使ったり、防御にESPバリア『サイコバリア』を自在に使い、攻防のバランスのとれたヒーローです。
対するビッグマンは『闘気で身体を徹底的に強化』すると同時に、全身に強烈な『闘気のバリアー』を張っており、さらに『特製のソルジャーアーマー』を着込んでますから、ものすごく防御力がありますね。
凄まじく強化された肉体と、多種多様な武器類を自在に操るので攻撃力は凄まじいものがあります。この試合では使わないでしょうが、自身の闘気をエネルギー弾に変える『サイコブラスター』は海の大怪獣ゴメラを一撃で消し炭に変える威力があります。
単体戦なら同じチームのツインスワンとやり合っても優勢かもしれないです。」
「なるほどね…。では、シードラゴンマスクの予測だとビッグマン有利の面白い試合になりそう…ということでいいかね?」
「ええ、ただし、スカイホークも歴戦の勇者なので、油断したらすぐに形勢はひっくり返るでしょう。」
「なるほど、二人の解説が入って俄然おもしろくなってきた!
おーっと!!いよいよ試合開始だ!!」
試合開始早々スカイホークが宙に舞いあがりました。
そして、空中を高速で飛び回りながら『サイコショック』を断続的に放ち続けます。
ビッグマンはサイコショックの攻撃に耐えながらも時々銃を取り出して撃ちますが、スカイホークはひょいひょいと軽くかわしつづけます。
そのまましばし、スカイホークの一方的な攻撃が続きます。
「おーっと?!ビッグマンの攻撃は全く当たらないぞ!スカイホークの攻撃にたじたじなのか?!お二人はどうご覧になりますか?」
ジャネットさんが私たちに振ってくる。
「うむ、シードラゴンマスクにお願いしよう♪」
いやいや、齊藤警部!解説の仕事してくださいよ!!
「はた目にはスカイホークが圧倒的に優勢に見えますが、二人のオーラや気の流れから見ていると、ビッグマンはほとんど、いや全くと言っていいほどダメージを受けていません。そして、それをわかっているスカイホークの方が焦っているのです。
ですから、現時点では互角、いえ、心理的にはビッグマンの方が優勢かもしれませんね。」
「なるほど!!さすがはシードラゴンマスク!そんな視点で見ることができるのですね?!!素晴らしい!!」
ジャネットさんが思い切り私を褒めてくれて、齊藤警部がこっそり『ほら、任せて正解だろ♪』みたいなアイサインを送ってきます。
いえいえ!!あなた『今回は解説が本職』でしょ?!きちんと仕事してください!!し・ご・と!!
そして、ちまちました攻撃ではらちが明かないと判断したのでしょう。スカイホークが空中でサイコショックのエネルギーを大きく溜めようとした時です!
ビッグマンが加速して飛び上がったのです!!
とっさに避けようとしたスカイホークですが、闘気を思い切り込めた強烈な右パンチは何とか躱したものの、左手に持った巨大な銃から放たれたサイコブラスターの直撃を受けて、場外に叩きつけられました。
スカイホークは何とか立ち上がったものの、残念ながら場外負けです。といいますか、場外でなかったらビッグマンはさらに猛攻撃を続けたに違いありません。
「…ビッグマン…強いですね…。」
「ええ。あの畳み掛ける凄みは確かに超一流です。単体ではロシアで最強かもしれませんね…。さらにサイコブラスターの威力を強すぎないくらいに適切に調整しているあたりスーパーヒーローとしての心配りも只者ではありません。」
言った後、ロシアチームを見やると…おおっ!!ナースチャが闘志を燃やしているぞ!!あのお姉さんは『武人』だから、相手やライバルが強いほど『心が燃える』タイプなのだよね…。そこは本当にスゴイと思います。え?
私ですか?その辺は『あまり深く考えず』に適当にその時の気分で動きます。
実は『個人石川瀬利亜』はあまり戦闘向きではないのですよ。いざとなったら『シードラゴンモード(無敵モード)に切り替わる』から、それなりに戦闘もこなせてますが、本来はアルさんほどではないですが、マイペースなゆる系なのです。
戦うよりは仲のいい友達とゆったりまったりしている方がずっと好きですから♪
試合終了後はビッグマンとスカイホークが握手を交わして別れていった。
プロレスだとこういう時すごく悔しがるレスラーがいたりするけれど、スーパーヒーローはそういうタイプは少数派だよね。
あ!叔父さんや齊藤警部がすごく悔しがるタイプだよ。後で二人にぐちぐち言われそうな気がするけどそこは華麗にスルーするとしましょう♪え?すでに齊藤警部に勝った気になってる…ですか?ええ♪いろいろ『秘策』がありますから♪
ええと、そんなこんなで…結局最終試合まで私はずっと解説してました…それもいつの間にか私がメインの解説になってるんですが?!!
さて、ついに最終の一六試合です。
忍びの国『スーパージライヤ』Vマジックキングダム『リリカルアルテア』です。
…マジックキングダム(魔法界)はともかく、忍びの国…国じゃないじゃん!!
それは置いておいて、今までで最高の熱戦になると予想されます。
ん?こんな時にメールが…着信音からしてリリカルアルテアことアルさんからじゃん!
…なになに…『以下の要項を解説でばらしてくださいね♪』ですか?!!
…うわお!!『マジックキングダム=魔法界』と『リリカルアルテア≒大魔女リディア』等など…これはえらい騒ぎになりますがな!!
ちらとアルさんを見やると、嬉しそうに私に手を振っております。
予想通り、『魔法界のことを知らしめる』のが参加の最大の目的だったのですね。
確かにこの大会で『大魔女のお墨付き』で魔法界が紹介されたら地球と魔法界の交流が平和的に大きく進むようにもって行くいいきっかけになりそうです。
ただ、これまで表に出てこなかった『大魔女』の名前が世間に大きくクローズアップされることにもなります。…これは、私もイベントの後いろいろフォローさせてもらう必要がありそうです。
そして、今度は地球防衛軍副隊長の美夜さんからのメールです。
…なになに?今度は自来也さんに関して以下のことをバラしていい…ですか?!
あっ!美夜さんがいつの間にか光ちゃんの隣の席に座ってるじゃないですか!!そのさらに隣には旦那さんの誠也さんまで居られます。
もしかして、関係者全員で私が解説になるように仕組んだのですか?!!
「さあ、これも無名とはいえ『実力者同士』の対決ですね!
おや、メイン解説の瀬利亜さん、なにやらスマホを難しい顔でご覧になられていたようですが、なにがあったのでしょうか?」
私、いつの間に『メイン解説』になったのでしょうか?!!
「…ええ。関係者からの連絡が入って、両対戦者に関して『重大ないくつかの事実』を明かしていいという話なのです。」
「おおっ?!素晴らしいサプライズです!!シードラゴンマスクさんにメイン解説になっていただいた甲斐があるというものです!ぜひお願いします!」
「では、まず忍びの国のスーパージライヤ選手に関してです。
最初に地球防衛軍で活躍中ということでかなりの人が察しておられると思いますが、地球防衛軍日本支部長の『自来也隊長』です。格闘術はモンスターバスター一二星並で、さらに強大な各種の忍術を扱い、怪獣を単体でバッタバッタなぎ倒す実力者です。
忍術も加えれば同じチームの『雷電忍者』と並んで、世界最強の忍者と言えるでしょう!」
ここで、会場が大きく沸き立つ。
再び会場が『ジライヤコール』に包まれます。
みなさん本当にノリがいいですね♪
「なんと?!スーパージライヤ選手は地球防衛軍で怪獣を次々と倒していく超実力者だったのですね!!本当にビックリしました。
そんな相手と対戦するのではあの可憐な『リリカルアルテア』選手は大変ではないでしょうか?」
「それに関して、マジカルキングダムのリリカルアルテア選手の説明をします。
まず、参加国のマジカルキングダムですが、地球に隣接する『魔法界』のことです。」
「えええ!!!これはスゴイ情報が入ってきた!!!なんと、隣接する世界からわざわざリリカルアルテア選手たちは来られたわけですね?!!」
「いえ、少し違うのです。リーダーの『マジカルクイーン・シルビア』は実際に魔法界の女王なのですが、他の四人は地球出身のサポートメンバーです。
そして、リリカルアルテア選手は『モンスターバスター一二星の大魔女リディア』です。」
「はい??!!!」
私の言葉にジャネットさんが完全に固まってしまいました。
一般には全然知られてませんが、モンスターバスターやスーパーヒーローで世界最高の魔法使いである『大魔女リディア』の名前を知らない人はいないはずです。
ただし、自称『シャイでヒッキーなニート』の歴代大魔女は可能な限り表に出てこなかったため、存在は知っていても、顔も見たこともなく、具体的にはどんな人かわからない…という状態が続いていました。
モンスターバスター一二星でも最強に近く、『二〇〇〇年間不老不死』とか、『歴史を陰で操った』などという不気味な噂が独り歩きしている『大魔女』がこうして大会に出てきたわけですから、ジャネットさんでなくてもびっくりされますよね…。
「…あの、世界最高の魔法使いで、モンスターバスター一二星でも最強に近いというあの、『大魔女リディア』さん…ですよね…。」
「はい、その通りです。魔法界からどうして参加されたかは『大会終了後』に公式に説明されるそうです。
それから、一二星でも最強に近いという話ですが、今回のように『自作ゴーレムをかなり持ち込まれている状況』では、最強と見ていいでしょう。」
「じゃ、じゃあ…もしかして全参加者中最強と見て…。」
「ええ、懐に『大量のゴーレムが仕込んである気配』がしますから、最強と見て間違いなさそうです。
というわけで、ミラクルファイターさん。ぜひぜひ『対戦をお願い』しますね♪」
「パス!!」
えええええ!!!即答で断ったよ!!!
「ミラクルファイターさん、強敵とやり合いたいとおっしゃっていたじゃありませんか?」
「それは、格闘者としての話!!大量のゴーレムととんでもない魔法の嵐をかいくぐるとかどんな拷問なわけ?!!」
「えええええ??!!自分の得意以外の分野でもチャレンジャーでいないと早く老けちゃいますよ?行きましょうよ、チ・ャ・レ・ン・ジ♪」
「嫌!嫌ったら嫌!!」
斎藤警部、急にわがままになっちゃったよ?!!
ん?私にまたアルさんからメールが来たよ?
……なになに…『ほら、私ってシャイだから、なるべく特別対戦とかない方が嬉しいな♪』……いやいや!!!あなたも何のために出場したんですか??!!それから、こんな時にのんびりメールとかしないでください!!
なんで、みんなこんなにわがままなの?!!
……ええと…とりあえず、一回戦最大の対戦は始まりを迎えたのでした。




