12 正義の館に集う者たち その3
「ガオーー!!」「キシャーー!!」
瀬利亜と千早が落ちてきた先にはたくさんの支道がある、鍾乳洞になっていた。
そして、巨大な空間にはドラゴン・キメラ等の凶悪なモンスターが何百匹となくうごめいていた。
神話の悪魔のような姿をした巨大な怪物が二人の前に歩き出して叫んだ。
「はっはっはっは!!貴様たちは罠にかかったのだ!お前たち二人ではここを突破することは…、もう一人はどこへ行った!!」
「笑止!!」
天井に逆さにぶら下がった人影からの声が洞窟に響き渡った。
「偽の魔王に罠を仕掛けておいて、落下のダメージを与えつつ、洞窟に敵をおびき寄せよて殲滅しようとは不届き千万!」
銀色の仮面をまとったスーパーヒロインはひらりと舞い降りると叫んだ。
「シードラゴンマスク!!ただ今推参!!
さあ、魔王城の心臓部に案内してもらおうかしら!」
「ふ、ふざけるな!誰がそんなことを!!」
「シードラゴン・ソニックウェイブ!!」
シードラゴンマスクが『気の爆弾』を叩きつけると、怪物たちの大半が吹き飛ばされ、半数が完全に行動不能になった。
「さあ、魔王城の心臓部に案内してもらおうかしら!」
「すみません、案内いたしますので、命だけはお助け下さい。」
ボロボロになった怪物リーダー?は頭を下げて何とか声を出した。
「さあ、魔王!覚悟してもらおうか!!」
一斉に襲い掛かった、魔王の手下たちを瞬殺して、ミラクルファイターは魔王ににじり寄っていった。
傍にいる「魔道王タームラ」は腰が抜けて動けなくなっている。
「貴様のその動き、『トウヨウの格闘家リュウイチロウ』か!?」
タームラは腰を抜かしながら言っているので迫力のないことこの上ない。
「隆一郎は俺の親友兼ライバルでね。今の俺は当時の隆一郎よりさらに強いぜ!」
仮面の下からの射殺さんばかりの鋭い眼光に魔王とタームラは震え上がった。
「魔王を名乗ったということはいざという時の覚悟はできてんだろ。遺言を聞かせてもらおうか?」
「待て!私をうかつに殺すと、元の世界に帰れなくなるぞ!!」
「いやいや、あちこちにゲート(門)があるのは知ってるから」
「魔王城には切り札の巨大ドラゴンが居て、俺に何かあったらそいつが暴れて収集がつかなくなるぞ!!」
「いえ、ゴメラより弱かったんだけど…。切り札か何かあると思ったからわざわざ魔王城まで行ったのに、とんだ無駄足だったわ。」
魔王たちの後ろからシードラゴンマスクと千早が姿を現した。
気が抜けたような顔をしてゆっくりと魔王に近寄っていった。
魔王とタームラはあっけなく気を失った。
「とんだインフレ魔王だったわね。ところで、こいつらどうしようか?」
「バネッサ様がこちらの事情にはお詳しいのでは?収攬していただく先がわかれば、私がリムジンで送り届けても構いませんが」
「待て!!なんで巧さんとリムジンがここに来ているわけ!?」
清正が仰天して叫んだ。
「お嬢様に何かあった時はすぐに駆けつけられるように、シードラゴンスーツには発信機も取り付けてあるのです。」
「それにしても、リムジンで異世界に来れるわけ?!」
「ゲートの専門家の助けをお借りしました。」
長身の巧の後ろから同じくらい背の高い女性が姿を現した。
膝まで届くような長い金髪のふんわりした超絶な美人で、グレーのゆったりしたローブをまとい、頭には三角帽を被っていた。
「アルテアさん!! 日本に来ちゃって大丈夫なわけ!?」
瀬利亜がスーツのままで思わず素に戻って叫んだ。
「イギリスには『分身代わりの人形』を置いて来たからね。少々のトラブルならあれで十分対応できるわ。」
「それもあるけど、よく来日の許可が下りたわね。」
「今からの『有事』に備えて、日本に拠点を移しなさいという『神託』が下りたからね。
もちろん、『他の管理者』の了解は得てますよ。」
「まじっすか!?相当いろいろ準備が必要ね。」
「なにかまずいことでも?」
頭を抱えている瀬利亜にバネッサが恐る恐る声を掛ける。
「今回のザコ魔王のことは全然問題ないのだけど、世界でも最高峰のバスターの一人が日本に増援に来なければいけない事態が起こるという予測がでたの。
悪いけど、キヨマーにも徹底的にトレーニングしてもらう必要がありそうね。
最低、自分の身は自分で守れるくらいに。」
「えー!!さっきまで俺が強くなるの無理だとか言ってなかった!?」
情けなさそうに清正が叫ぶ。
「そりゃあ、巻き込まれてあっさりお陀仏になっていいなら構わないけど。
可能なら、ゴメラに勝てるくらいにはなって欲しいな♪」
「無理無理無理無理無理!!!というか、ゴメラに勝てる人間なんて、どれくらいいるっていうのさ!!」
「ここだけでも五人いるよ。」
えっという顔になって清正とバネッサが顔を見合わせる。
「私と、斎藤さんと…」
「斎藤さんのコロンボの顔って、デスマスクだよね!?」
清正が思わず突っ込みを入れる。
「ブッブー!マスクの下もコロンボ顔でした。」
笑いながらマスクを取ると、先ほど見たのと同じ和風コロンボの顔がニヤニヤしていた。
「ちーちゃんと、アルテアさんと、それから巧さんね。」
「お褒め頂いて、ありがとうございます。」
巧が嬉しそうに頭を下げる。
「あのう、巧さんて一体?」
バネッサが恐る恐る聞くが…。
「石川家の執事として当然のことです。」
「…いったいどういうことなんです?」
清正が聞きやすそうなアルテアに囁いた。
「…いろいろな経歴をお持ちだったのを瀬利亜ちゃんのお父様の龍一郎さんがスカウトされたという風に聞いているわ。」
(これだけ桁違いにすごいメンバーが集まって、なおかつき切り抜けるのが大変というのはどういう事態なのだろうと、不安が増していった。)
「あら、そこに倒れているのは魔道王タームラじゃない。この連中は彼らの出身地の王様のとこまで私が届けてくるわ。」
アルテアは懐に手を突っ込むと赤い鳥の人形を取り出した。
アルテアが人形を上に投げ上げると、鳥はあっという間に翼長10メートルを超す、巨大な鷲になった。
「では、また後で逢いましょう」
アルテアが浮かび上がって、わしの上に乗ると、わしが魔王たちをつかんで空に舞い上がった。
鷲はしばし羽ばたいた後、全身から真っ赤な光を放つと空を滑るように高速で飛んで行った。
「しかし、よく考えると魔王が退治されてしまったことで、私の勇者としての仕事は終わってしまったのだろうか?」
リムジンが家に着いた時、バネッサは今日のことを振り返った言った。
「あら、魔王候補の動静を見張るという大切な仕事が残っているでしょう。今度は違う連中がキヨマーを利用しようとするかもしれないし。
今のキヨマーでは利用以前という話もあるけど…。」
「そういう言い方マジでへこみそうだからやめて。」
特訓要請のこともあり、すでに十分へこんでいる清正がぼやいた。
「あら、電気がついてるわ?」
ダイニングのあかりが付いているのを瀬利亜が不思議そうに見ている。
ドアを開けると、紅茶とキッシュのおいしそうな香りと、エプロン姿のアルテアがみんなを出迎えた。
「お帰りなさい♪キッシュとブリティッシュミルクティーはいかがでしょうか?」
「アルテア…さん?」
「瀬利亜ちゃん、できたらここを『日本での拠点』にさせてもらえると嬉しいな♪」
「正義の館」の素敵なメンバーがさらに一人増えたようだ。




