2 想定範囲外
『あの人が海の大怪獣ゴメラを一人で撃退された』…その情報を受け取った時、さすがの私も一瞬信じることが出来なかった。
いくらなんでも等身大のスーパーヒーローが『巨大怪獣を撃破』するのは奇跡としか言いようのない行動だ!
だが、詳細な情報が入ってくるに従って、情報の信ぴょう性は高まるばかりだった。
追加情報が入ってくるに従って、私はさらに驚愕することになった。
なんと、ご自身の手柄のはずなのに、『地球防衛軍に功績を譲られた』というのだ!!
これが日本の『ケンジョウのビトク』というやつなのか?!
その『精神の高貴さ』が彼女をさらなる高みに押し上げているというのだろうか?!
その上『地球防衛軍の名誉を思いやった』という『オモイヤリのセイシン』を発揮されただけでなく、『地球防衛軍に対する一般民衆の信頼』に『ハイリョ』されて民衆を安心させるという『オモテナシのココロ』を発揮されたらしい。
スーパーヒーローは『普通の人達の心に届く活動をする』ことが大切だと先輩たちからは聞いていたが、彼女はまさしくその『ヒーローのセイシン』を実践されていたのだ!!
そして、極めつけは『ゴメラが泣いて逃げて行った』という驚愕情報だ。
そう、彼女は『改心したゴメラ』を許して逃がしたのだ!!
事実その後そのゴメラの個体は二度と人類の生存領域を脅かす兆候がないそうだ。
これは仏教の『ジヒのセイシン』ではないだろうか?!!
事実それらの素晴らしい『トウヨウのセイシン』を身に付けられていた彼女はそれからもどんどん実力を上げていかれ、彼女の活躍を聞かない日はないというくらいであった。。
だから私も『ZEN』や『ヨガ』を一生懸命学ぶことにした。
最初は何の事だかさっぱりわからなかったが、ZENやヨガの呼吸法や瞑想法を続けていくうちに明らかに気持ちが落ち着いてきたうえに、潜在能力、特に『超能力』がめきめきと上達していくのが感じ取れた。
彼女はその『生き方』に於いてすら、私にお手本を示してくれていたのだ!!
その後、彼女とは二回ほど会う機会があった。
その度に彼女から感じられるオーラがどんどん『偉大になっていく』ことがはっきりと感じられた。
私は会うたびに話をするたびに彼女から得られるもの、吸収できるものはないかと必死になって彼女の言葉に耳を傾け、行動を注視しつづけた。
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『スーパーヒーローオリンピック』の会場であるわくわくランドアメリカは『大魔女リディア』と『邪神ニャントロホテップ』の超技術で本来の予定よりずっと早く施設が完成してしまった。
豊臣秀吉の『一夜城』ならぬ、『一夜テーマパーク』の完成には現地の人達はひどく驚いたそうだ。
ちなみに現在世界各国にモンスターバスター協会とスーパーヒーロー協会の両方がある。
ヨーロッパやアジア諸国はどちらかというとモンスターバスター協会の方が構成員が多く、南北アメリカ大陸、特にアメリカ合衆国はスーパーヒーロー協会の方が構成員が多いのだ。
だから、アメリカで言えば、一二星はカイザスさん一人たが、スーパーヒーロー協会は一二星並の実力者である『アメリカ三銃士』が三人存在する。
また、組織の大きさや構成員の数、質もだいたいモンスターバスター協会の三倍くらいである。
そして、我が日本では…モンスターバスター協会は先日の『秘密結社スーパーモンスターズ事件』により、何人かが引退に追い込まれたこともあり、現在やや、人手不足で、一生懸命人員募集、育成をかけて、何とか仕事をこなしている…という状態だ。
そして、我が『スーパーヒーロー同好会』は……確か少し前にメンバー数が一桁になってしまったような気が…。
「光ちゃん。今『スーパーヒーロー同好会』のメンバーて何人だっけ?」
「うん、四人やね。」
「はっ???……あの、冗談よね?」
「ううん。瀬利亜はん、わて、齊藤警部、充はんでちょうど四人や。」
「えええええええ!!!!……ダイヤモンドファイターとシャイニングレディーは?」
「お二人はんは先月結婚されて、長野に無農薬菜園付きのペンションを開設されはったで。ひなびた場所にあるけど、景色もいいし、料理もすごくおいしいみたいやで。こんど二人で泊まりにいきまひょか♪」
「……えーと、それじゃあ……。」
その他何人か名前を挙げてみたが、全員引退されていた。
「どういうことなの?!なんでみんな引退してしまうの??!!」
「…んーーー、言いにくいんやけど、最大の原因は瀬利亜はんやね…。」
「ええええええええ!!!!私なにかやったっけ??!!!」
「瀬利亜はんが『悪い』わけや全然あらへん。むしろ、瀬利亜はんの必死のスーパーヒロイン活動、モンスターバスター活動により、多くの人が助かったことは確かや。
ただ……『正義の直観』に基づいて瀬利亜はんが『多くの事件を芽のうちに解決』されはるんで、瀬利亜はんが成長しはるに連れてモンスターバスター達はまだしも、スーパー―ローたちの出番が結果的に激減してもうたわけや。
ついでに言えば、スーパーモンスターズの動きやレジウスはんらの動きに従って弱小の悪の秘密結社は、特に日本に於いては活動そのものが激減した…いう背景もあるようや。
せやから、引退しはったスーパーヒーロー、ヒロインのみなはんはさらさら瀬利亜はんを恨んだり、文句を言わはるどころか、『瀬利亜さんのような素晴らしいスーパーヒロインに後を任せられてうれしい』て言うてはるで。」
うーーむ…充さんにはやや不安はあるものの、齊藤警部の強さ、光ちゃんの参報としての適切な助言があれば、今回のオリンピックには十分成果が出せそうな気がするのだよね。
あと一人をどこから引っ張ってくるか……ちーちゃんにお願いしようかな♪
魔法少女形態のちーちゃんなら様々な視点から実力面でもビジュアル面でもどこから見ても恥ずかしくない素晴らしいスーパーヒロインだ!
日付があと一〇日後という急なスケジュールだが、急な任務が入ってこない限り、ちーちゃんは大丈夫だろう。
今回のオリンピックはスーパーヒーロー同好会をスーパーヒーロー協会へ格上げするための絶好のアピールチャンスだ。無理に優勝する必要はないのだが、おそらく優勝候補のダントツの筆頭であるアメリカチームに善戦すれば、政府(国連)に対する非常にいいデモンストレーションになってくれるだろう。
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「ごめんなさい!!その日はどうしても抜けられない用事が入ってしまったんです!!」
登校後に教室で一生懸命謝ってくれるちーちゃんを前にして、私は事の重大さに完全に固まってしまっていた。
ちーちゃんが出てくれるものと当て込んでいた私は他にアプローチを掛けていなかったのだ!
なんてこったい!!
「大丈夫、ちーちゃん。安心して♪ここからが『人たらしの瀬利亜ちゃん』の面目躍如だから!
私の人脈と事態を打開する能力をとくとご覧あれ!」
落ち込むちーちゃんを前にして、私は満面の笑みを浮かべる。
もちろん、内心は冷や汗をだらだらとかいている。
素早く他の候補になりそうな人を念頭に置いて、どうやって勧誘するかを必死で頭の中でシミュレートし続けた。
「光ちゃん、どう?とりあえず、今日一人アポを取ったのだけど…光ちゃん?」
放課後物理準備室に打ち合わせのために行ってみると光ちゃんが真っ青な顔をしている。
一体何があったというのだろうか?
「充はんも齊藤警部もどうしても抜けられない仕事がある言うてはって、二人とも無理なんやそうな…。」
はーーーーー??!!なんだってーー??!!!
かたやさまざまな企業の命運を握る青年実業家。
かたや『殺人事件』を担当する有能な警部。
いくらスーパーヒーローの重要なイベントとは言え、お祭りよりも優先する仕事をお持ちであることはやむを得ないことではある…。あるのだが、四人しかいないチームからさらに二人抜けられるのは非常に痛い!痛すぎる!!
あとたった九日でどこに出しても恥ずかしくない『日本に相応しいスーパーヒーローを三人』見つけなくてはいけないわけですか?!
どんな無理ゲーですか??!!
……やむを得ません。もはや『手段を選んでいる』場合ではありません。
どんな手を使ってでも『実力派のヒーロー(ヒロイン)』をゲットしようではないですか!!
「あの、瀬利亜はん?なんか、『悪い顔』してはるように見えるんやけんど…大丈夫でっか?」
…大丈夫です!光ちゃん!
『二人の夢実現』のためなら『世界中を敵に回しても』絶対に素晴らしい仲間をゲットしてみせますから、『ご安心』ください!!!
ふっふっふっふ!!




