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ゴメラ VS モンスターバスター  作者: はなぶさ 源ちゃん
モンスターバスター参上
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11 正義の館に集う者たち その2

 「…つ、疲れた…。」

 校門に向かいながら、バネッサがぼやいた。

 「半分以上…いや、七割くらい授業がさっぱりわからない…。

 千早(ちはや)瀬利亜(せりあ)もキヨマーもよく真面目にうけられるよな。」


 最近は瀬利亜、千早、バネッサ、清正と並んで登下校するようになっていた。

 リムジンで(たくみ)に送ってもらった3人が清正の家まで迎えに来て、帰りも同じく清正の家まで間で送っていった後、巧のリムジンに乗って屋敷まで帰っていた。

 おかげで男女を問わずクラスメイト達からの清正に対する視線が非常に厳しいものになっていた。


 「今まで『勇者業』しかやってこなかったんだから仕方ないわよ。逆に3割もわかる方がすごいかもしれないわね。

 ちなみに私も半分近くはわかってないから。」

 「石川、でも、全部の授業真剣に受けてるだろ?」

 隣の席の清正の目から見ても瀬利亜の授業態度は「完璧」だった。

 常に背筋を伸ばし、ノートに向かう真剣なまなざしにはいつも感心させられていた。


 「半分近いわからない授業の時は『内職』をしてました。この通称『バカには見えないタブレット』を活用してます♪なんと、ここのボタンを押すと、私以外には見えなくなります。『内職』と言ってもバスター協会関連の仕事だから、確かに真剣にはやってるけどね。正式にはこっちの方が『本職』とも言えるし。」

 「内職の内容に関しては悪いとは思わないけど、大学進学は大丈夫なのか?」

 そこそこ学業にも力を入れている風流院高校在学とは言え、さすがに授業の半分近くがわからないと進学できる大学も限られてくる。


 「…うーん、就職先は決まっているというか、すでに『就職済み』だから、何のために大学に行くかという話になるのよね。

 万が一モンスターバスターを退職しても、『一〇ヶ国語は話せるから』世界中どこへ行っても食いっぱぐれはないと思う。」

 「待て、それではもしかして、一番真剣に授業を受けないといけないのは俺か!?」

 よく考えれば「特殊技能を持たないただの一般人」の清正が一番いろいろと身に着ける必要があるのだ。


 「はっはっは。瀬利亜さんなら『抜群の仕事能力』に企業に限らず、いろいろなところから引く手あまたでしょう。」

 涼やかな男の声に四人が振り返ると、背の高い「超美形」の青年が歯を光らせて微笑んでいた。

 「理事長先生、お疲れ様です♡」

 風流院高校理事長・小早川充に劣らない華やかな笑顔で瀬利亜が微笑み返した。


 「…キヨマー、だれだ、この人?…」

 清正を引き寄せてバネッサが真っ赤な顔で囁く。

 「…この学校の理事長でいろいろな事業を展開している『青年実業家』の小早川充さんだ。

 石川と女子の人気を二分しているという噂もあるそうだ…。」


 「そういえば、みつ…小早川理事長、お怪我は大丈夫でしょうか?」

 元気そうな充の姿にはっと気づいて千早が声を掛けた。


 「これは、なんてお優しい…。」

 感極まったように眉をひそめると、

 「大丈夫です。あなたたちの治りょ…お見舞いをいただいたおかげで心身ともにピンピンしております。」

 心からの笑顔で充は瀬利亜と千早に微笑むと、そのまま校舎に向けて歩いて行った。


 『すごいモノ』を見て、しばらくあっけにとられていた清正は陶然と充の背中を見続けるバネッサの背中を揺さぶった。

 「おい、大丈夫か?!ああいうタイプは女性の扱いに慣れていて、演技でカッコよく見せていることがほとんどだぞ!目を覚ませ!!」

 「キヨマー、『あの人に限って』そんなことがあるはずが!?」

 既に半分恋する乙女モードに入りそうなバネッサにさらに声を掛けようとした清正を瀬利亜が手で制した。

 「充さんはあれが『素』だから、ある意味(たち)が悪いのよね…。」

 非常に複雑な表情を浮かべながら何とも言いにくそうに瀬利亜は言葉を出す。


 「ええ人度を五段階で表すと、充はんは七~八で判定できるくらいめちゃめちゃええ人なんやけど、『天然度』が瀬利亜はんやちーちゃんの二倍くらいある『ウルトラクラスの天然さん』やからなあ。自覚のない『ジゴロ的な言動』は女生徒の敵やで、まったく。」

 いつの間にか会話に加わっていた光一が後ろから瀬利亜の肩に手をかけて立っていた。


 「ちーちゃんはともかく、私を『ド天然さん』扱いするのには断固抗議します!!」

 瀬利亜がポーズだけブーブー怒ってみせる。

 「瀬利亜さん、私『ド天然さん』なんですか?!」

 千早の悲鳴に瀬利亜は天使の笑顔を返す。

 「あなたは『ド天然さん』ではなくて、『天使のように純粋』なの。言い方が悪かったわ。ごめんなさいね♡」

 瀬利亜の言葉に『バネッサと同じくらい舞い上がっている』千早を見て、清正は思った。

 (石川も理事長と同じくらい『天然ジゴロ』だよな…)


 「ちょっと待て、錦織先生!どうして石川や神那岐とそんなに仲がいいんですか?」

 ふとあることに気づいた清正が叫ぶ。

 「そりゃあ、わても『関係者』やからな。キヨマーもバネちゃんも瀬利亜はんやちーちゃんには言いにくいことがあったらいつでも言いや。教師ならではの「反則技の対応」もいろいろできるさかいに。」

 手をひらひら振りながら光一は校舎に去っていった。



 「やあ、皆さん元気そうでなにより」

 校門を出たところで、止まっていたパトカーから見覚えのある男が声を掛けてきた。

 「さ、斎藤警部!?」

 以前齊藤から長時間の説教を食らった、バネッサが思わず身構える。


 「大丈夫、バネちゃんをどうこうすることはないから。

 キヨマーくんの状態を知りたいだけだから。」

 風貌だけは和製刑事コロンボがニヤニヤしながら話しかけてくる。

 「とりあえず、安倍家まで送るから」

 パトカーのドアを開けると齊藤は手招きをした。



 「とりあえず、何か変なものを感じる以上のことは起こらないわけだ」

 運転して清正の話を聞きながら、齊藤はうなずいている。

 「陰陽師としての才能は皆無に近いからと、大明さんはキヨマーに何も教えなかったそうだけど、『魔王の力』、正確には魔力を扱う魔術的な感覚も今のところほとんど開花してないようだと、聞いているわ。」

 瀬利亜が冷静に話を付け加える。


 「それ、なんか、馬鹿にしてないか?」

 あんまりな?瀬利亜の話しぶりに清正は落ち込みそうになった。

 「本当はある程度『なにがしかの力』が扱えた方が守りやすいのは確かなのよね。今は戦力換算したら『普通の一般人』だから。

 ただ、本人が志願して勇者のパーティや魔王軍に入りました…とかいうわけではないのだから、本人が責任を感じる必要は全くないのだけれどね。

 それにしても、『元魔王の息子』で、もしかしたら『魔王になる才能があるかもしれない』と言うだけで狙われる可能性が高いというのは不憫だわね。

 『現役の魔王』ならともかく、『とっくに引退した元・社長』の、しかも『ただの血縁者を狙います』ということと同列の話なんだから、すごく理不尽だわね。」


 「瀬利亜ちゃんの冷静極まる分析は相変わらずさすがだね。

 ただ、キヨマーくんを鍛えることも考えた方がよくないかね?」

 「父親で一流の陰陽師の大明さんがいろいろな視点から陰陽師としての育成は『完全に匙を投げた』わけだから、『術師方面』としては期待が薄いわね。運動神経も本当に『人並み』のようだし…。

 今、本部と相談でいろいろな可能性を探って入るんだけど…。」

 清正にとっては聞いているだけで無力感にさいなまれそうな話がふっと途切れた。


 「仕掛けてきたようよ!」

 瀬利亜が叫ぶと同時に、パトカーの窓から見える景色が、霧に包まれたように見えなくなった。同時に、齊藤はエンジンを止め、周りの様子を伺いだした。

 瀬利亜、千早、バネッサもあっという間に臨戦態勢に入った。


 間もなく霧がさっと引き、周りが岩だらけの殺風景景色に変わっていた。

 前方には西洋風の巨大な薄気味悪い城がそびえている。


 全員がパトカーから下車すると、城の門から何人もの人影が出てきて、清正たちの前に立ちふさがった。

 「よくぞ、ご招待に応えてくださった。新魔王城へようこそ。」

 真っ黒なマントをした精悍な男が声を上げると、周りにいた、大男や巨大な怪物が

前に踏み出してきた。

 「魔王の血を引く『ザコ』と、鍛え不足の勇者。丸腰のおっさんと、女子二人に何ができるか楽しみだな。

 この新魔王『ザシュラ』様の初陣には少々役者不足のようだが、勇者の名前だけならちょうどいい生贄になってくれそうだな。」

 魔王が合図を送ると同時に魔物たちが動き出そうとしたその時には瀬利亜と千早は早くも魔王の眼前にまで迫っていた。

 魔王のまわりの怪物たちをあっという間に吹っ飛ばすと、魔王の眼前には瀬利亜の右拳が、首筋には千早の太刀が突きつけられていた。


 清正とバネッサは二人のあまりの反応の速さに呆然としていた。

 「ちーちゃんもやるねえ♪瀬利亜ちゃんが太鼓判を押すわけだわ」

 斎藤は清正の傍で油断なく身構えながら、にやにや笑って様子を見ている。


 「できれば、魔王の称号の返上、少なくとも戦争の停止をしてもらえると嬉しいのだけど」

 右手の拳に「膨大な気」を込めながら、瀬利亜は魔王を睨み据えている。


 「ここまでこんなとんでもない化け物とはびっくりしたな。だが…」

 突然魔王の瞳が金色に輝くと、魔王を中心に直径二〇メートルほどの穴がぱっくりと開いた。瀬利亜と千早は魔王や魔物たちと一緒に『奈落の底』に落ちて行った。


 「ち、まさかこんな手の込んだ仕掛けがしてあるとはな!」

 斎藤が苦々しげに一歩踏み出すと、門の陰からいくつかの人影がゆっくりと現れた。


 「思ったよりずっと恐ろしい相手で肝を冷やしたよ。魔道王・タームラの助言を入れてよかった。」

 二〇代半ばに見える顔の青い冷酷そうな優男が声を出した。

 その横に控えるローブをまとった初老の男がさらにうなずく。

 「勇者の仲間『銀髪のガンナー・エリシエル』によく似た娘がいたので、警戒していて正解でした。しかもその娘が『トウヨウの格闘家リュウイチロウ』と同じような戦い方をするとは、偶然とは言え恐ろしい…。」


 「あんたらが魔王と、側近か?」

 苦々しげに齊藤がつぶやく。


 「その通り、私が本当の魔王ザシュラだ。」


 「想定範囲内の行動を取ってくれて嬉しいぜ!」

 薄笑いしていた魔王は齊藤の表情・雰囲気が豹変したのに仰天した。

 斎藤は、羽織っていた外套を脱ぎ、「コロンボ風のデスマスク」をはぎ取った。

 鋼のような肉体にフィットする青と黄色のボディスーツを着、口だけ見える銀色のマスクの男は全身から凄まじい『闘気』を溢れさせながら口を開いた。

 「奇跡の超人・ミラクルファイター!! 悪あるところに即参上!!」


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