童話「白雪姫」
私は魔法の鏡を覗き込んで言った。
「鏡よ鏡。この世で最も美しい者は?」
「それは白雪姫でございます。その肌は名前の通り白雪のよう。その美しさは女神の如きこと!」
それで、私は娘を殺そうと思った。
「猟師よ猟師。白雪姫を殺しなさい」
私は命じた。だが猟師は兎の心臓を持ち帰ってきた。
「この戯け者が。私がお前の嘘を見抜けぬと思ったか」
私は命じた。猟師の死を。
私は森に分け入った。小人たちと暮らす娘を見た。少し心が痛んだが、もう私は引き返せない。魔法で老婆に化けて、娘を騙した。
「このリンゴをお食べなさい」
私は言った。娘は何の疑いも無く毒入りのリンゴを齧り、ころりと死んだ。あっけなかった。戻って来た小人たちがどれほど悲しもうと、私の知ったことではない。
もう娘はいない。だが私は満足できなかった。
私は時とともに己が醜くなっていくことに恐怖した。
ある時、自分が醜い老婆に成り下がる夢を見た。夢の中で、私は井戸に身を投げて死んだ。それ以来、私は食事を取らなくなった。私は次第にやつれていった。
私は魔法の鏡を覗き込んで言った。
「鏡よ鏡。この世で最も美しい者は?」
それは愚かな問いだった。今の自分より美しい者などいくらでもいる。だが、私はついに問わずにはいられなかった。どんな名でもよい。その名を聞けば、また生きる望みが湧いてくると信じた。
「それは白雪姫でございます。その目覚めは春の訪れのよう。異国の王子と結婚し、それはなんと幸せなこと!」
私は絶叫し、半狂乱になって鏡を床にしたたかに叩き付けた。鏡は割れた。
私は、自ら毒を飲んで、死んだ。




