召喚の儀式
自室に聖麗は用意した道具を置く。蝋燭、ライター、赤いペン、そして彼のお気に入りだった壊れた傘。
緊張した面持ちで名札の裏に貼り付けた紙を剥がし、手順を見ながら聖麗は儀式を開始した。
手順。まず、逆さの五芒星を床に直径1メートルの大きさで、赤い物で書く。赤い物ならばペンでも血でも、何でも良い。
次に、部屋に灯りがついているなら消し、五芒星の頂点に蝋燭を置き、火をつける。蝋燭の種類は問わないが、短い蝋燭だとすぐに火が消えるので、長い蝋燭が好ましい。
次に、自分の大切な物を逆さ五芒星の中心に置き、供える。1番大切にしているものほど己の念が君の魂の代わりになってくれるだろう。召喚には人の魂を代償にするからだ。
最後に、言葉を唱える。間違えないように、慎重に。もし間違えたなら、願いは決して叶うことはないだろう。
『鬲斐?蜉帙h謌代′鬘倥>繧貞掌縺郁ウ懊∴蜈峨r螟ア縺?ソシ繧偵b縺後l縺溷凍繧後↑遘√?鬘倥>繧』
ずいぶん簡単な儀式でしょう?
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切実に願う者のように呪文を唱え終えた。気がつけば自分の周りだけ世界が隔離されているような不思議な感覚に襲われる。時計の針の音、外の車が通る音、賑やかな鳥の囀り、何もかもが聞こえなくなっていた。
蝋燭の火は何もしていないのに赤く、より血のように真っ赤に赤く燃え始め、風が吹いていないにも関わらず火が揺れていた。
突如聖麗の目の前が黒くなり、胸に激痛が襲う。まるで心臓を鷲掴みにされたかのような、そんな感覚を覚えた。
思わず聖麗はいつもの恐怖とは違う恐れを感じた
怖い。やらなきゃよかった。痛い。助けて。
後悔と救いを求める想いが強くなる。
———そして、逆さ五芒星に置いた傘から黒いインクのような不定形の『何か』が滲み出て来る。
痛みにうずくまり、『何か』を必死に見つめる。
———それは、傘を包み込み、大きな物体へと形造ろうとしていた。
目の前のあり得ない光景に安堵と恐怖が同時に襲う。
———それは、やがて人のような形を作り出す。
胸に襲った痛みが和らぐ。体を起こし、『何か』の変化を見つめる。目が離せない。瞬きすら忘れるほどに。
———黒い物体が液体状になり、『人』が出てくる。
雪のような白い肌、真紅のストレートの長い髪、血のような赤い瞳と、光を吸い込むような黒い瞳のオッドアイ、そしてそれを隠すようにサングラスをしており、
貴族のような豪華な衣装に身を包む、高身長な人物。
衣装は男性もののようだが、容姿は中性的で性別がぱっと見では判断が出来ない。
思わず唾を飲み込む。突然現れたその人物に聖麗は光を見た。藁にもすがる思いで、でもきっと夢物語だろうと少し諦めにも似た感情を抱いていた聖麗にはきっと、この『人物』こそ聖麗を救ってくれる存在だと確信した。
「———ずいぶんと狭い空間だな、私を召喚したのは………は?まさか、子供1人だと?」
淡々と冷静な女性の声で現れたその人物は、周りを見渡し、聖麗を見るなり不思議そうな、驚くような目で見つめる。どうやら男性ではないようだ。
聖麗はその人物を見つめ、問いかける
「あなたは誰なの?」
弱々しく見える人間の子供からの言葉に思わずその人物は一瞬目を見開く。
「……まあ、いいか。人間、よく聞け。
私の名は『ルシエラ・ヴァル=ロト』。
『厄災』の称号を与えられた者。
魔の王の血を引く、“純血の悪魔“だ。」
ルシエラと言う人物は続ける。
「私を召喚するほどの魂の強さには賞賛しよう。」
空気が重々しくなる。灯っていた蝋燭が突然消え、部屋が真っ暗になる。
「だが、力は貸さん。私より遥かに弱い人間如きが、私の力を利用しようとするなど、反吐が出る。」
聖麗は現れたその悪魔に威圧感を感じた。プレッシャーに押し潰されそうだ。だが、せっかくつかんだチャンスだ。
聖麗はもう一度、勇気を振り絞る。きっとこの悪魔なら僕を救ってくれる。なぜかそう思うのだ。
「助けて。願いを叶えてくれるんでしょ?」
閲覧いただきありがとうございます。
ようやくルシエラの登場まで書くことが出来ました。




