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少年の日常

導入編です

梅雨のジメジメとした雨の降る夕方、子供達が傘を差し、楽しそうに話しながら下校している。中には傘をひっくり返して雨水を溜めていたりと、無邪気な日常風景。そこに変わった子供がいた。雨が降っているにも関わらず傘を差さず、俯いて1人でトボトボと歩いて下校している少年。制服はどこかボロボロで袖口から見える肌や顔には無数の痣、ランドセルも使い古したというよりは痛めつけたかのようにボロボロだった。その風貌から分かるように学校ではいじめられ、孤立している。彼を見た周りの子供達はクスクスと嘲笑い、避けるように通りすぎる者もいれば、わざとぶつかって謝ることなく去っていく者もいた。

一方、周りの大人はそんな少年を見てみぬふりをするか、少年の陰口をわざと聞こえるように言い合っていた。

「まあ、あの子の痣。私だったら絶対!外に出ようと思わないわよ」

「先生は一体、どんな対応をしているんだか。」

「通報してもいいけど、何かあったら困るしねえ…」

「やめときなさいよ、ああいう子供には関わらないのが1番よ」

少年を助けようとする大人など皆無だった。教師でさえも、無関心を貫いていたほどに。

彼にとってはいつもの事なのだろう。濡れたアスファルトの匂いがより寂しさを強くするが、涙を流しても雨で分からなくなるため、雨が嫌いではなかった。彼にとっての雨は、殴られた痛みを包んでくれる優しい雨だった。

「今日も傘、壊されちゃったなあ。お気に入りだったのに…これじゃ怒られちゃう。靴も濡れてグチョグチョだ…明日までに乾くかなあ…」

小さく、とても小さくつぶやいた声は震えていた。

彼の名前は中西聖麗なかにしせいれ。友達も、仲間もいない。そんな可哀想な彼にも夢があった。

『友達を作ってたくさん話したり、遊びたい』

“今日の給食が美味しかった”

“一緒に鬼ごっこしよう”

“テスト何点だった?”

子供であれば当たり前のような光景。たが彼には、よくある「宇宙飛行士になりたい」や「ケーキ屋さんになりたい」と同等な願いだった。

どれだけ重い足取りでも、いずれ家に着く。古いアパートの一室のドアの前で聖麗は父親がいない事を願う。

心臓がバクバクと脈動するのが分かるほど緊張し、手が震える。覚悟を決めて鍵を開ける

「た、ただいま」

声が暗い家に反響する。返事が返ってくることも、テレビの音、物音ひとつ聞こえない。聞こえるとするならば、時計の秒針がカチカチと響くくらいだ。

……どうやら家には誰もいないようだ。

肩の力が抜け、ほっと安心して息を吐く。

父親がいれば、濡れた体で家に入ろうものなら怒鳴り声を上げ、締め出すだろう。安心した聖麗は家に入る。グチュっと濡れた不快な靴を脱ぎ、机に置かれた酒の缶や脱いで散らかした散乱した服などを通り過ぎて急いでタオルで体を拭いた。その後に着替えて、濡れた床を拭いた。最後に濡れたランドセルも拭いて濡れる要因を無くした後、自室に入る。そこには勉強机や本棚、ベッドなどシンプルな物が置かれたまるで普通の子供部屋だった。

父親は実は最初から暴力を振るう最低な人物ではなかった。数年前までは優しく、色んな所に連れて行ったり、誕生日プレゼントを買ったりと、普通の家庭を築く優しい父親だった。

母親が突然帰ってこなくなってから数日後、突然父親の聖麗に対する態度が豹変し、暴力や食べ物を与えないなど、虐待をするようになったのだ。

「どうしてお父さんあんなに怖くなったんだろう…」

自室に入るといつも疑問が浮かぶ。しかし、考えても理由が分からない。今日もこの謎を頭の隅に追いやり、ベッドに入る。体が冷えてしまってとても寒い。宿題をする前に、少しだけ横になろうと目を閉じる

「今日は少し辛かったなあ…」

休憩時間に階段から突き飛ばされた今日の光景が浮かぶ。突然背後から押され、転げ落ちた時のことを。激痛に思わずうずくまり、呼吸を忘れそうになるほどだった。聖麗を突き飛ばした子は助けてくれるわけではないが、いじめる子ではなかった。いつも本を読んでいて、周りの空気に無関心な子だった。クラスのみんなが聖麗を「わー菌が付くー!」と言って逃げたり、連絡帳を置くときも「うわー、あいつの下に置いた人かわいそー」「ねえ、次誰が置く?菌が付くから私は嫌だよ!」

と騒ぐのに、その子は嫌な顔ひとつせず聖麗の連絡帳の上に重ねて置いた。

そんないじめてこない子が今日、聖麗を突き飛ばしたのだ。心の中では味方と思っていたのに。涙が溢れそうだった。

どうして、僕が何をしたの?

長編初投稿です。元は没にしてたのですが、思ったより想像が捗ってしまいました…オチはまだ決めてないけど、最後まで書ききりたいなと思ってるので、よろしくお願いします。

感想を書いていただけると、よりモチベーションが上がるのでよかったら、お願いします。

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