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後半

で、部屋に戻り鍵の掛かっていない玄関からそっと中を覗くと案の定そこには俺のニセモノがいた。で、俺としてはこいつもぶん殴って東京湾にでも沈めてしまおうかと思ったのだが、こいつの体自体は俺のモノかも知れないので思い留まる。

そう、俺は今の俺の体である『ミサ』という女性と意識だけが入れ替わっただけかも知れないからな。


あれ?となると今俺の部屋にいる俺のニセモノって中身は『ミサ』って子になるのか?

実際、部屋の中にいるニセモノは俺の体ではあるが立ち振る舞いが全然俺っぽくない。例えるならばどこぞのご令嬢みたいな仕草だ。


なので俺は駄目モトでニセモノの前に姿を晒した。するとニセモノは突然部屋に入ってきた俺に驚く様子も見せずにこう言ったよ。


「あら、早かったわね。不安にかられて水道の蛇口をひねりつつ部屋の鏡を覗いたり、猫を撫でつつスマホを見たり、カブトムシを放ちながら駄洒落を言ったり、再放送のドリフのコントを観つつオナラをぷぅ~っとしていると思っていたけど、割りと冷静に対処したのかしら?」

いや、十二分にパニくったよ・・。と言うか俺の顔でお譲さま言葉を喋んないでくれよ。なんか自分が新宿二丁目の住人になった気分になるじゃないか。


と言うか、この一言で俺は俺の体の中は『ミサ』という女の子がいる事に確信を持った。しかもこいつは多分、今回の事に関して俺の知らない事を知っている。でなけりゃこんなに落ち着いてニンゲンドーのゲームを手だけで操作しつつ、足で白いフェレットを弄繰り回したりしないだろう。


と言うか、そのゲーム機ってどこから出てきたんだ?俺は持っていなかったぞ?当然俺のアパートはペット禁止だからフェレットもいないっ!


と、突っ込もうと思ったがそれをすると肝心な事から話が逸れそうなので俺はいきなり今回の確信を問い質すべく一歩前に進んだ。

勿論その際のバックミュージックは『スモーク・オン・ザ・ウォーター』だ。

と言うか、ディープ・パープルの諸君。君たちそこまで髪を伸ばすのに何年掛けたの?


「挨拶は省かせてもらう。そもそもその体は俺だからな。俺が俺に挨拶するってのもおかしな事だし。で、多分俺の体の中にいるあんたは、今の俺が憑依しているこの体の本来の持ち主で『ミサ』って子だと思うんだけど、間違いないな?」

「あはははは、自分の顔と声でそんな事聞かれるのって中々シュールね。でも正解よ。私はミサ。そしてあなたは名もなきサブキャラ。強いて名をつけるとすれば『俺』君かな。それとも『俺』様?」

くっ、自分の顔と声で聞かされたのでなければぶっ飛ばしてやりたいところだが、それをやっちゃうとダメージを負うのは俺の体だからな。なので我慢だ。


「名前に関しては取り敢えず気にするな。で、なんで俺とあんたは入れ替わったんだ?その余裕っぷりから見るにあんたは知っているんだろう?」

「モチのロンよ。あなた昨晩ネットの某素人小説サイトで開催されている某個人企画に投稿されている作品を読んだでしょ?」

ミサの言葉に俺はちょっと前にマンションの部屋で留守番をしに来たという女の子に言った言葉を思い出した。


『最後にこれはとても大事な事なんだけどネットの某素人小説サイトで開催されている某個人企画だけは閲覧しないで。』


そうだ、確かに俺はあの恋菜とか言う女の子にそう忠告していた。そしてミサの言うように昨晩俺はその某素人小説サイトで開催されている某個人企画に投稿されている作品を読んでいた。

更に俺は恋菜とか言う女の子に『私もこの部屋を契約した時に管理人からそう言われただけで詳しくは知らないんだけど、その企画の作品を読むととんでもない事が起こるらしいのよ。だから私も一度もその個人企画にはアクセスしていないわ。』とも言っていた。


「いや、待てっ!俺がその某個人企画に投稿されている作品を読んだのは、この俺の部屋でだぞ?でも先の警告内容から解析すると、とんでもない事が起きるのはあのマンションで読んだ場合だろうっ!時系列、いやこの場合は因果関係と言うべきか?どちらにしても俺はこの怪奇現象の発動基準を満たしてはいないはずだっ!」

「そうね、でも世の中には不思議な事があるの。例えば科学の世界には『量子もつれ』という現象があって、深く結びついたふたつの量子は片方の状態を観察するともう片方がどんなに離れていても、同調しているからそちらの状態が判ると言われているわ。まぁ、これはミクロな状態で起こると考えられている予想なのだけど、それがマクロな状態では起こらないという結論も出てはいないの。そしてたまたまあなたのこの部屋と私の部屋が一時的とは言え情報空間を共有しちゃったと考えれば辻褄は合うわ。なのであなたの行為があのマンションの禁忌事項に抵触しちゃったってのが今回の原因だわ。」


「お前、説明がなげぇよっ!270文字も使って小難しい事を言うんじゃねぇっ!そんなんだから5千文字制限に引っかかったんだろうがっ!」


「あら、やだ。そうゆうメタな発言は控えて欲しいわ。どうしてもしたい場合は感想欄でして。」

「いや、あんたの発言も十分メタだと思うんだが・・。」

うん、俺と話している相手が中身はミサという女の子だと頭では判っているんだが、俺の顔で言われるとカチンとくるよ。

でもそこまで知っているのならば、この子は絶対この現象を元に戻す方法も知っているはずだ。なので俺は気持ちを切り替えて下手に出る作戦をとった。


「で、そこまで知っているのならばあんたは元に戻す方法も知っているはずだ。それとも何か?俺の体が気に入っちまったのかい?」

うん、どこが下手なんだろう?でも俺の置かれた立場になれば、誰だって嫌味のひとつ位は言いたくなるよな。

で、実際ミカはその方法を知っていた。


「モチのロンだわ。その方法とはネットの某素人小説サイトで開催されている某個人企画『朝起きたら貧乏人になっていた』で投稿100作目を踏む事よ。」

「ちょっと待ったぁーっ!俺は『朝起きたら○○になっていた』という企画は知っているが『貧乏人になっていた』なんて企画は知らんぞっ!」


「ふふふ、ネットでは一旦何かが流行ると二匹目のドジョウを狙って似たような企画やテンプレ作品が大量に這い出してくるのよ。因みにこれがその企画のアドレスよ。」

ミサはそうゆうとスマホの近距離赤外線通信で俺のスマホにアドレスを送ってきた。なので俺は直ぐにそのアドレスをクリックして内容を確認した。


サイト名:小説家になにぬねのっ!

個人企画:『朝起きたら貧乏人になっていた』

ジャンル:SF。しかも宇宙モノ限定。但し宇宙人が出てくるのであれば舞台が地上でも可。

企画期間:100作品目が投稿されるまで

文字数制限:100万文字以上っ!

投稿作品数:1作品 PV33 pt:0 感想:1件


「100万文字以上なんて投稿出来るかぁーっ!なんだこの文字数制限値はっ!以上ってなんだよっ!異常の間違いだろうがっ!」

企画の概要を読んで俺は思わず突っ込んでしまった。いや、突っ込みどころはそこだけではないのだが、もうなにから何まで駄目だめな企画である事だけは判った。

そんな駄目企画に100作品が投稿されないと元に戻れないだと?それってどんな無理ゲーだよっ!


だが、何故か1作品が投稿されていた。しかも感想まで付いている。なので俺は不思議に思ってその感想欄を覗いてみた。

するとそこにはこんな感想が贈られていたよ。


作品タイトル:『百億円の昼と千億ドルの夜』への感想一覧

日付:3333年33月33日33時33分

投稿者:日本SF素人作家倶楽部代表


感想:ばーかっ!


返信:ありがとうございますっ!次もがんばりますっ!


うん、SFモンたちの感覚ってよく判らないな・・。

しかし100万文字以上作品を100作品投稿すれば元に戻れるのならば俺もやらねばなるまい。

なので俺はミサのマンションに戻ってそこにある超高性能量子コンピュータを使ってAIに宇宙空間を舞台にした100万文字越えのSF作品を99作品生成させた。


うん、さすがは量子コンピューター。100作品生成するのに1秒とかからなかったよ。

因みに部屋に留守番に来ていた女の子は、俺が戻った時には冷蔵庫の中にあった食料と酒を全て食べ且つ飲み尽くして満足げに腹をぽっこりさせて寝ていたよ。


と言うか、あの量の食料と酒を全部飲み食いしたのか・・。すげぇな。

まぁ、この子の事は置いておこう。そもそもこの異常事態が元に戻ったならばもう会う事もないだろうからな。


で、俺は直ぐに生成された99本のSF作品を連続投稿した。

うん、連投するんじゃねぇっ!なんて意見は聞かない。俺は今、それどころじゃないんだよっ!なんだったら替わってやってもいいぞっ!


で、99作品目の投稿が受理された途端にこの世界は崩壊した。いや、実際には俺が寝落ちしただけかも知れないが、まぁ目が覚めた時には俺は俺の部屋に戻って・・、いなかったよっ!

なんだっ!なんかメカメカしい装置や計器類が所狭しと配置されている場所にいるぞっ!なんだ?ここは何処なんだよっ!


<ピッ、お目覚めですか艦長。一応ご説明しますが、ここは大銀河帝国33方面第33艦隊所属のオンボロ級駆逐艦『タイヤキくん』の艦橋です。あなたは幸運にも33万人の中から選ばれこちらの世界へ転移して来た使い捨ての駒です。ですががんばって戦果を挙げれば元の世界へ帰れますよ。>

俺の心の叫びを何故か読み取ったらしい、多分多機能AIと思しき声が俺の疑問に応えやがったよ。


なるほど、これって所謂『繰り返しモノ』だな。ひとつの世界で問題を解決するとまた別の世界へ飛ばされるってやつだ。

つまり馬鹿正直に戦果を挙げても俺は次の世界へ跳ぶだけのはず・・。うんっ、そんなのやってられるかっ!俺は現実逃避中の中坊じゃねぇんだよっ!


と言う事で俺はオンボロ級駆逐艦『タイヤキくん』の推進エンジンに鞭打って戦線を離脱した。目指すは裸体の少女が祈りを捧げているはずの『テレポート星』だっ!

うん、俺はこの世界の島大介になってみせるぜっ!


-お後がよろしいようで。-

ガンダムバージョンも考えたんだけど、私ってあんまり詳しくないので諦めた。

でも次の『ザブングル』バージョンは当然西部劇だぜっ!←嘘です。書きません。

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― 新着の感想 ―
よくわからないけど面白かった(*´ω`*)
PV33が妙にリアルですね……。 (´;ω;`) 投稿がスパム行為で垢バンされる流れかと思いきや、ちゃんと宇宙船に移乗したのは驚きましたw (´ε`) 一番のパニックは5000文字以内の企画なのに…
100作品なのか!?99作品なのか!? それは……シュレディンガーの猫ッ! 手動ならきつすぎる。
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