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第11話 落下

 ラボ調査用の地下シェルターがほぼ完成し、ラボ内への潜入調査が可能になったと孝由さんから連絡があった。俺と風花様は、あの日以来、溜まりに溜まった鬱憤(うっぷん)を吐きだすかの様に、連日、愛の営みを続けていた。一線を越えた風花様が、なんかどんどん俺好みの女性になっていく様で、年上なのだが可愛くて仕方がないと言う感じになっている。


 そしてついに、領主様の作業現場視察の日程が具体化した。

 それには、風花様はもちろん、孝由様、皐月嬢も同行し、俺も孝由さんの助手という事でご一緒させていただく。表向きには、『旧青葉区地域・都市鉱山発掘現場視察』とされていたが、実際にはもちろん、みんなでラボの中に入るのだ。


「よう鏡矢君。ひさしぶりだな」

 視察当日。現場で父の明さんに半年ぶりに会った。

「お父さん、ごめんなさい。でも俺もこのプロジェクトに関わっちゃっているとなかなか……」

「いいよいいよ。分かってるから。あんまり他の人には言えない事だしな。でも、拓真君が怒ってたぞ。全く連絡くれないって。たまには連絡してやれよ」

「そうだね……今回の視察が落ち着いたら、連絡してみるよ」

 まったく、拓真には申し訳ないの一言しかない。だが、このところずっと風花様とラブラブで、正直、拓真の事はちょっと飛んでいた。


 そして明さんに案内され、作業着とヘルメットを着用した面々は、一人ずつウインチに付けられたブランコの様な棒に座って、下のシェルターに降りていった。最初に俺が降り、続いて孝由さんが降りて来たが、孝由さん、何か大きなリュック背負ってるな。


「うぎゃー! 暗いー! 狭いー! 怖いー!」

 直径一mほどの管の中、途中に灯りはなく、約八十mを三分くらいかけて降りるのだが、風花様は、途中でずっと大声を出して騒いでいた。

 最後に皐月嬢が降りて来て、四人そろったところで、下で待機していた作業員の人達と合流した。

 下のシェルターは直径二十m位の半円ドームで、縦管をとおして電気と空気が地上から送られていた。そして調査に必要と思われる機材や道具が並べられていた。

 そして、脇の方にそこからさらに地下に向かって地面が掘られていた。

 そしてそこに梯子(はしご)がかけられていて、下に降りられる様になっている。


「ここが、ラボの入り口になります。正規の玄関は、まだ下で埋まってますので、二回の屋根から入る感じですね」現場の人がそう説明してくれた。

 すでに、ラボの中は一通り、明さん達が調査してくれており、危険はないとの事だ。案内され二階フロアと一階フロアを見たが、見たところ、そんな大仰な機器とか実験器具が有る感じではなく、どちらかというと学校の様な雰囲気だ。そして机や本棚はたくさんあるがどれも空っぽだ。


「これは……」孝由さんも、思っていたものと違うのか、ため息をついている。

「どうやらこれは……研究所といっても、実際の研究・実験をしていたというより、理論を詰める作業の様な事をしていたのかな? それとも管理部門? イブ・メイカーはまだ理論の検討だけで、実際の実験は進んでいなかったという事なのか……」がっかりしている孝由さんに風花様が話かける。

「それに、この本棚とか……すでに誰かが中身を持ち去ったんだよね。百年前の段階でどうだったんだかは判らないけど……」

 二人の落胆が俺にも感じられ、なんだか俺も悲しくなってきた。でも、こんな状況なら最初に言ってくれれば、別に領主様みずから視察しなくてもよかったんじゃないかと、こっそり皐月嬢に気持ちを伝えてみた。

「そうね。でも……二人とも自分の眼で見ないと納得しないタチでしょ?」

 皐月嬢がそう言うと、彼女の携帯端末が鳴った。


「ああ。上で明さんが呼んでるわ。何か私が判断しないとならない事かな。

 風花様。私一旦上に行って、また戻ってきますね。どうか納得いくまで視察なさって」皐月嬢はそう言って、シェルターに戻っていった。


「どうします? 孝由さん。私達も一旦上に戻りますか?」

 しばらく周囲を観察したが、目新しい事は何も発見できず、風花様はそろそろ上に出たいみたいだ。

「ああ。だけど僕はもう少し調べてみるよ。どっかに隠し扉とかないかな……」

「それじゃ、鏡矢。ついて来て。一緒に戻ろう」

 風花様の後について、俺もシェルター室に戻った。


「あれ? 誰もいないの?」シェルター室に戻ってみると、さっきまでいた作業員さん達が誰もいない。そばの壁にあるインターフォンで上に話掛けてみると、お昼休憩なので、みんな上に上がっているらしい。今、ブランコを降ろしてくれるとの事なので待つ事にした。


 やがて降りる時に使った一人乗りブランコが降りてきたので、まずは風花様を乗せる。しっかりベルトで固定して、大丈夫だからと途中騒がない様釘を刺した。

「もし、落っこちたら下で受け止めてね」

「そんな、無茶な……それじゃ、上げて下さーい」

 インターフォンにそう声をかけた。

 

 やがて、ブランコがゆっくりと上昇を始める。

 下から見ていると、遥か上方に出口の光が有るのがわかるが途中は本当に真っ暗でよくわからないな。そんな事を考えているまさにその時だった。


 ドドーーン!! 


 突然、大きな音がして、足元が大きく揺れた。えっ? 地震か!?

 揺れは収まる様子もなく、頭の上の方でバキッ、ガツンッといった物が壊れる音がする。これって、縦管が崩れてる!? 


 そう思った瞬間! 「キャーーーーーーーーーーー!」

 ものすごい悲鳴と共に、風花様の乗ったブランコが真っ逆さまに落ちてくる!


 えっ!?

 俺は思わずそれを両手でそれを受け止め様としてしまったのだが、耐えきれず横に吹っ飛ばされた。

 ドゴーーン!! ものすごい音がして、風花様が地面に墜落したのが分かった。


「風花様!!」俺は駆け寄ろうとするのだが、飛ばされた衝撃で、足を痛めてしまった様だ。思う様に立ち上がれない。風花様は気を失っているのか? ご無事なのか? そして動かない風花様の上にパラパラと上から砂や砂利が落ちて来て……いかん! これは、縦管が崩落するんじゃないか!? なんとかしないと風花様が……動け俺の身体!! ああ……


 ガラガラガラ・・・ドーン。

 上から大きな金属片が落ちて来て、俺は思わず目をつぶってしまった。


「……風花様……」

 そしてゆっくり目を開けると、風花様をお姫様抱っこしている孝由さんが目の前に立っていた。


「あっ、孝由さん……」

「鏡矢君。君は大丈夫か? 動けるか? とにかくここは危険だ。上が崩落して来かねない。すぐにラボの中に入るんだ!」

 俺は、がむしゃらに身体を動かし、這いずり回りながらなんとかラボの建屋に逃げ込んだ。

 ちょっとして、上から大きな土砂の固まりが落ちて来て、シェルターは完全に埋まってしまった様だった。だが、電源はまだ通じている様で、各所の工事用ランプがまだ点いているのはありがたかったのだが……これ、脱出出来るのか?



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