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5話

※この章には、戦闘・流血・身体の崩壊描写などの残酷な表現が含まれています。

読む方によっては不快に感じる可能性がありますので、苦手な方はご注意ください。

「ここがお前らの初任務地だ。ここから先、身の安全の保証はない。覚悟しておけ」


荒れ果てた土地に足を踏み入れた瞬間、火薬と腐肉の混じった匂いが鼻を突く。

喉の奥がひりつき、吐き気が込み上げた。


「廃ビルか……足場が悪いな。ファゴサイト相手には不利な地形だ」


聳え立つ廃ビルを見上げ、シンは冷静な分析を始める。分析するのはいいが、天才的に空気が読めないシンに頭痛がする。


「二手に分かれる。廃ビルは第8部隊、周辺は第12部隊が巡回しろ!」


号令と同時に、シンが迷いなく廃ビルへ踏み込む。


中は薄暗く、天井から落ちる水滴と足音だけが響いていた。湿気が肌にまとわりつき、息が重く感じる。


「1階、異常なし……2階に上がるぞ」


――シュンッ、グチャ、グチャ。


血と魚が腐ったような匂い。不快な咀嚼音に、俺たちは一斉に目を向けた。


……ファゴサイトだ。


「……っ」


体表に人間の肉片が溶けて吸い込まれている。初めて目にする光景に、背筋が凍った。


「核が透けている。初級種だ。後ろの三人、距離を取りつつ引きつけろ。俺が核を撃ち抜く」


シンの声は揺るがない。


気づかれたのか、ファゴサイトがゆっくりとこちらを向き――


次の瞬間。


ビュオンッ!!


地面をえぐって跳びかかってくる。


「あっぶないネ!」


マケラが身をひねってかわす。しかしその後ろで――


「うっ、あ”あ”ッ!!」


隊員の腕に、ファゴサイトが張り付いた。

皮膚はロウ細工みたいに垂れ落ち、肉は糸を引きながら黒い粘液に変わった。触れた部分から筋繊維がほどけるように広がり、白い骨が一瞬見えたかと思うと、それすらもすぐに溶解液に呑まれる。


「離れろ!! 動くな!!」

助けようとマケラが動くが、シンがそれを静止する。


隊員は自分の身体が自分のものではなくなる恐怖に、床をかきむしりながらもがいた。


「嫌だ……死にたくないオレはまだやれるんだ

やだやだやだ!! 助け――」


最後の言葉は、口が形を作る前に飲み込まれた。


胸部が沈み込み、腹部が崩れ落ち、骨が一瞬だけ覗く。

瞬きする間に“人の形”が完全に失われた。


床に残ったのは黒い斑点と、溶けきれずに散った武器だけ。

悲鳴が廃ビルに反響し、視界がぐらつく。


俺たちの“初任務”は――

想像していたより、はるかに残酷だった。


その瞬間、奥の闇が湿った音ともに蠢いた。


まだ……いる。


「っ、お前ら、構えろ!!」


息を飲む間もなく、第二の影が這い出してくる――。

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