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プロローグ
プロローグ
木星軌道に星百合が咲いた。
巨大な百合の花の形をした、無機鉱物のような物質からなる何か。
しかしそれは生きている。
生物なのだ。
星百合は忽然と宇宙のどこかに咲き現れ、星々の間に道をつくる。
ほどなく、その道のゲートとなる空間の歪みが、衛星カリストのすぐそばで発生した。そこから小さな光が飛び出し、亜光速で木星圏を脱すると太陽の方へと進路を取った。
数時間後、はるかに大きな光の群れが歪みの中から姿を現し、小さな光の軌跡を追い始めた。
両者が向かったのは、その太陽系で唯一、文明の気配を放つ星だった。
すなわち、第三惑星へ──