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いきなりの路子さんからのキス。


僕は戸惑いながらもそれを受けてしまっている。


今、僕はこの胸にカノジョを抱いているはずなのに、カノジョに抱かれている。


遠い昔……高校時代に


 夜露に当てられた僕を抱きしめてくれた“あの逞しい腕”とはまったく違う、このしなやかな腕に僕の体は絡め取られたとでもいうのだろうか。


僕は激しくその“熱”を欲している。


僕が努めて帯びて居ようとしている“氷の殻”を、僕の皮膚は溶かしたがっているのか??


そうでなければ僕の体がこの様な反応を起こすのは……?


『「!!」』


お互いの舌が触れてしまって

僕は……

僕たちは、慌てて身を離した。


「すみません!!」と謝る僕に


「いえ!」

と、頬を上気させ額に掛かる前髪の乱れを手で梳きながら

路子さんは僕を見上げる


「これで覚悟ができました。」



ああ!! 僕はこんなにも、この人に負担を掛けてしまっているか?!!


「僕の申し出がそんなにもご負担なら……」


「いいえ、そうではないのです!」


言い掛けた僕の言葉を路子さんは強く否定する。


「今の私の“不躾な行い”に対し、崇さんはご自分の出来得る限りの誠意を下さいました。これで私は何の瑕疵(かし)も無く父母や山田と対峙することができます!! 私にその力を与えて下さり本当にありがとうございます」


こう言って頭を下げる路子さんは、何と背筋の伸びた人なのだろう!!


こうまでして、この人は、自分の心に嘘を置きたくないんだ!!



僕は……カノジョの愛をその身に集めている桜井さんがとても羨ましく思えた。

しかし、その桜井さんの愛も一方通行。

そして僕自身も颯太に片想いをしている。

人の心はままならない物。

だからこそ……その事を、身をもって知っている路子さんだからこそ……

僕はカノジョの想いを大切に守ってあげたい!!



「それには及びません。“あの山田”からあなたを略奪するのは他ならぬこの僕です。矢面には僕が立ち、あなたには決して“流れ矢”など当てさせません!!」



 この美しく正しい人が僕の傍に居てくれる間は、僕にはカノジョを守る責務がある!その為なら僕は何をも厭わない!!


そう!僕の胸をいっぱいにし始めた彼女への想いは“家族愛”なのだ!!


僕は何か言おうとしたカノジョの指に人差し指を当て


「僕の願いを聞き届けていただき、僕の家族になって下さる……感謝を申し上げるのは僕の方です。本当にありがとうございます。そしてよろしくお願いします。」


凛とした空気が、お互いがお互いを見る優しいまなざしに徐々に温められてゆき……


僕たちはいつしか手を繋ぎ、微笑み合っていた。





                                     続きます


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