⑤
さんざん私の相手をしていただいたせいか…
昨日も…
今日のこの時間を作っていただく為に夜遅くまでお仕事をなさっていたそうだし…
碓氷さんはいつの間にかソファーに身を埋め寝入っておられた。
つまらない私の為に…貴重な時間を使わせてしまった…
でも、もし…この申し訳ないと言う気持ちを口に出してしまったら…
碓氷さんは…
『ご自分の事を“つまらない”などと言ってはいけません』と諫めてくれるのだろう。
『よくわかってんじゃねえか! だったら早く奉仕しろ!!』と
私の髪の毛を掴んで剝き出しの“下半身”を押し付けて来た“山田”とはまったく違う!!
これがもし桜井くんなら…何と言ってくれるだろう…
私の脳裏に…
あの“クリスマスの夜”が思い出される…
カレの言葉が…
『あ、そう言えば、聞いたよ。結婚するんだって?!
たまたまオレの得意先のオーナーが亀井さんのフィアンセさんでさ、
おかげでオレに声を掛けてもらったんだ。
ありがとう。
今日は亀井さんを酔うまで付き合わせたりして、申し訳ないね…
ホント、オレってダメダメだよ…』
桜井くんに山田の愚痴を言っても困らせてしまうだけだ…
そして…私の発言の否定はしないで…
「亀井さんは頑張り屋だから、ダメと思う事もきっとクリアできるよ」
って言い方をするのだと思う…
それは優しくはあるのだけど…
ここまで考えて私は大きくため息をついた。
私ごときが何を言ってるの?!
もし仮に…自分が誰かに愛されていたとしても 他人をこうやって評価する事は軽々にすべきではない!
ましてや…誰からも愛されない私などが、許されるべきではないのだ!
その出自から言っても…私は自尊感情など持てる人間ではないのに!!
幼い頃の勘違いは…まだ目が瞑れる
しかし!
“過去の自尊感情”に恥じ入る今の私は、また恥の上塗りをしてしまった。
生きる気力が失せる…
私は風に舞い上げられ、最後は泥にまみれ風化していく虫食いだらけの落ち葉。
早くこの“行く末”に辿り着きたい!!
もう疲れた!!
疲れた!
疲れた…
その時、
突然
碓氷さんが唸り声を上げて
私はビクン!と我に返る。
うなされてる?
何かを掴もうと伸ばされた碓氷さんの右手に
思わず差し伸べてしまった私の右手は一瞬ためらってしまって…
事切れたようにストンと落ちたカレの手を掴み損ねた。
『!!』
私の心に後悔の文字が浮かぶよりも早く、カレは苦し気に左右に首を振る。
まるで何かに溺れてもがき苦しんでいる様な彼の頭を、今度はこの胸にしっかりと抱いた。
抱かれても苦しそうに蠢くカレを胸の中に感じて…
事もあろうに私は…
“オンナ”をノックされていた。
そう、私は!!
あの山田と“同類”で
下品で卑しい
だから私は
自分のめしべに
ヤツの下品な“花粉”を擦り付けたのだ。
何度も何度も何度も
いけない!
こんなものを
碓氷さんに擦り付けては…
私は体を固くして
そっと身を離した。
カレの目がうっすら開いて
目の焦点が私に合って来て…
「すみません!」
いきなり背中に平板を差し込まれた様に彼はピン!と背を張る。
「あなたに大変失礼を…」
頭を下げながら額に触れた自分の指で
カレは自分の状況を悟ったようだ。
「みっともなく寝落ちしてしまいました。寝汗までかいてしまって…着替えて来ます」
席を外そうとするカレに私は慌てて声を掛ける。
「いえ! 大丈夫です!! 私、慣れてますから!!」
ああ!! 私、何を口走ってるのだろう!!
カレ!怪訝な顔してる!!
「慣れてる??」
「あ、はい! その…山田の世話で…男性は…慣れてますから…」
ああああ!!! 意味不な上塗り!!
「余計な心配はなさらないで結構ですよ」
サクッ!!
何とか形をとどめている砂山に
バカみたいにピーカンの夏空の光を照り返したナイフを落とされた。
全ては幻想
全ては幻想
こうまでして
私は
自分の何を守りたいのか?!!
砂山はざらざらと割れ崩れ…
泣くまい泣くまいと唇を嚙みしめているのに
あなたの目がこちらへ向けられると
涙が滲み出す。
言いたくはない繰り言が
くちびるから漏れ出す。
「私はさっき…あなたに抱き留めてもらえました。なのにあなたが苦しんでいる時に、私は何もしてはいけないのですか?」
「…僕が苦しむ?」
「はい、ソファーで寝入ってらっしゃる時に…」
「…それは…みっともないですね…」
その言葉に私の“堰”は完全に崩れた。
「あなたがそれをみっともないとおっしゃるのなら…さっき、あなたの胸で大泣きした私はそれより遥かにみっともない!! そうおっしゃているの同じです! 苦しんだり悲しんだりする心の根っこは、男だろうが女だろうが関係ない! そうでしょう?!」
カレはシニカルな笑みを口の端にためて少し視線を落とす。
「そうですね…」
私は今度こそ、しっかりとカレの右手を取って言い聞かせる。
「この部屋には…この世界には…今、あなたと私の二人きりです。 あなたの心の内を他へ洩らすことは決していたしません!! だからどうか…今だけは…私にあなたの心の内を投げ出してみてください! そうだ! 私の為に…これから、オトコを客として生業にしていこうとする私を助けると思って…!」
ここまで言い掛けた私は、カレにいきなり抱きしめられた。
「それはいけません!! あなたこそ! これ以上身を心を痛めてはいけないのです。絶対に!!」
言葉が正しいかどうかは分からない。
ただ、頭に浮かんだ
『情で抱かれる』
何て!!
強く!
優しく…
温かいのだろう
「この世界に二人だけの…二人の事を…二人で考えましょう」
抱きしめた私の…こめかみ辺りに頬を寄せて囁いてくれたカレの言葉に…
カレに包まれた私は
何度も何度も頷いた。
続きます
う~ん…
読み返すと
ラブシーンぽくもあるのですけど…
なかなかうまくいかないし うまく書けません(^^;)
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