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この物語は『こうして度の無いレンズは割れた』の後日談となります。3250字のお話ですが、事前にご一読いただければ幸いです<m(__)m>




https://ncode.syosetu.com/n4472hz/3/





床に散らばったレンズの欠片は私の心


拾い集めてゴミ箱行き


せめて


新聞紙で包んであげよう。


“噓で満ち溢れた父”の機関紙で…


私には…逃げ場がない!


どうする?


壊れた心で


あのオトコを咥えるのか


この言葉が頭をよぎった瞬間、


シェリー酒のせいだけでは無い激しい嘔吐に襲われて私はトイレに駆け込んだ。



私はふわふわした便座シートを鷲掴みにしながら頭を突っ込み、吐瀉物と涙を“その中”へ落し続けた。


桜井くん桜井くん桜井くん桜井くん


恋しい人の名前を呼ぶ度に心が引きちぎられ、落ちていく。


もう既に


私が彼の事を想うだけで

彼に迷惑が掛かる。


そう!私は

あんな美咲より

彼にとって

害を成す存在となってしまっていた。


なのに私は


何を脳天気に


メイクして

着飾って

彼に抱かれようとしたのだろう。


ただ唯一の救いは


それが未遂で終わった事。


私の頭の中で


またあの言葉が鳴り響く


『もしも私が!


カネで抱かれるオンナなら!


カレの事を


抱いてあげられたのに!!』


言葉は更に私を揺り動かし


私の中を


何もかも吐き戻そうとさせる。


詰んだ


私はもう


私の周りに立ち並ぶ透明な壁に押し潰された。


だから

自分自身を壊す!!


洗面所で顔をざっと洗い


部屋に戻ってニットを脱ぎ捨て、ブラの肩紐を露わにして


きつめの色でルージュを引き直した。


それからスマホをセルフタイマーにして


泣き腫らした目を両手で塞いで自撮りした。


十数枚の後に、エッチな香りのプロフィール画像を創り上げ、今度は投げ込み先を検索する。



≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁


『☆カラダ記念日☆』


~はじめての日にお金を添えて~


≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁




ここにしよう!



『“デビュー”希望!!(^O^)/  はじめてのお客になって!!♡♡』

のメッセを添えて、私はプロフィール画像を放り込んだ。




--------------------------------------------------------------------


今度は何を始めたのか?…


本当は止めさせたいのだがカレの山っ気は病気みたいなもので…しばしば僕の仕事の手を止めさせる。

まあ、しかし『止め』と『止め』の綱引きは僕の心に火を点けるスパイスにもなっていて…会える日を心待ちにさせる大切な要素だ。


メールで飛んできたURLをクリックすると…



≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁


『☆カラダ記念日☆』


~はじめての日にお金を添えて~


≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁≁



「これはマズいだろう」


雲浮かぶ青空を背負ってパソコンの前で頬杖をつき、画面をスクロールすると蠱惑的なプロフィール画像が次々と流れていく。



「社長!」


向こうで声がして画面から目が離れかけた時、僕は信じられない物を見た。


そこには僕が探し求めていた腕時計が写っていたから…


僕はこれを身に付けている女性に


会わなければならない!!




--------------------------------------------------------------------



こんな私でもたくさんお誘いが来た。


身を投げる勢いでUPしたのに今更だが…


私は怖がりで


選んだのは…


待ち合わせ場所にアマン33階のガーデンレセプションを指定して来た“この人”が一番まともに思えたからだ。


まさかその後、1泊20万以上するであろうプレミアツインに連れ込まれるとは思わなかったけど…


。。。。。。



「僕をご存じですよね」


「ええ…」


「驚かれました?」


「はい」


「僕だと分かっていたらお断りになられた?」


「はい…いえ、分かりません…」


そう、それは本心だった、目の前のこの男はフィアンセの商売敵…とは言っても向こうはこちらの事を歯牙にも掛けないだろうが…そんな男と浮気?できるのならそれこそ私の本望でもあるはずだ。しかしこの男は…事前に私だと気づいていたのか?気づいていないのならそういった趣味の持ち主なのか…


「あなたが目隠しで写っていたものだから、私は驚きました、何しろ山田さんから『オレのフィアンセ』と紹介されたばかりでしたからね」


「貴重なお時間を戴いて大変申し訳ございませんでした。では私は失礼いたします」


席を立とうとした私を引き留めてこの人は言った。


「お待ちください。できればこのままお付き合い願えませんか? あなたの嫌がる事はいたしません」


そうして今、私達は38階のプレミアツインの一室に居る。


和テイストの部屋に彼はエドワードグリーンでそのまま踏み込んだけれど、私は備え付けの黒のスリッパに履き替えた。


「妻とアフタヌーンティーを楽しみたいのでお願いできますか?」


手慣れた様子でチェックイン(部屋で行うのがこちらの流儀なのか)しながらコンシュルジュに声を掛けるこの人の名前が(たかし)だと初めて知った。


路子(みちこ)はダージリンで良かったかな?」


「はい…」

この人、一度きりの面会人の名前をしっかり憶えているんだ…確かに敵に回すと怖い人なのかも…



部屋に二人きりになると碓氷(うすい)さんは丁寧に頭を下げてくれた。


「勝手に妻にしてしまい、話を進めてしまってごめんなさい。でもここのエスプーマはなかなかイケますよ」


「いいえ、お気遣い恐縮いたします。こちらにはよくいらっしゃるのですか? あと、『崇さん』とお呼びしてよろしいでしょうか?」


「ご事情はともかく、そのように呼んでいただき光栄です。ここへは想い人と何回か来た事があります」


「きっと素敵なお嬢様をお連れになるのですね」


「ははは、皮肉ですか? 僕は男色家なんですよ。そしてなにもできない片想い野郎です」


「えっ?!」


この人…今のボロボロの心持ちの私でさえ思わず『もったいない』と思える程のイケメン!! 千景が聞いたら悶絶しそうな話だ…


「『男色家の僕がどうしてあなたにオファーしたのか?』それはあなたが身に着けているその腕時計の為です。この間はしてらっしゃらなかったですね。なのに、あの写真の時と今日はどうして着けてらっしゃるのですか? その時計は…普通では手に入らない物です」


言われた私は薄くため息をついた。


「確かにこの時計は…祖母の形見で…『ここ一番!』と言う時にしか着けないものです。あの夜がそうでしたし今日も…そうです。…山田…フィアンセなんかの為には着けません!」


カレ…崇さんはほんの少しだけ私の腕時計を見つめた。


「これは…何かの(えにし)なのかもしれません。 先程申し上げました通り私は男色家で…あなたをどうこうするつもりは毛頭ございません。何か深いご事情がおありのようですが、私にお力添えできる事はございませんか?」


「どうして?! どうして私なんかの為に?!」


カレは静かに息を吸い込んで、答えてくれた。


「あなたのプロフィール画像に…私が探し求めていた腕時計を見つけたから…いえ!手に入れたいのではないのです。その時計が歩んで来た歴史を知りたいだけなのです。 そしてもう一つは…あなたの爪です」


「爪?」


「整えられてはいるけれど…働き者で、かつ決して人を傷つける事のない手の証のようなその爪を持つ人は、いったいどんなご事情があられるのか? どうしても気になってしまうのです。 ああ、さすがアマンだ! ルームサービスがもう来たようです。先ずはアフタヌーンティーを楽しみましょう!」


その名の通り『氷の人』とある人は揶揄し、ある人は恐れを抱くこの人…『碓氷崇』が私に見せてくれる顔はそれらとはあまりに遠くかけ離れている…


けれども…その顔の下に何があろうと


どうせ身投げを覚悟したんだ!


この私に怖い物など無い!


私はカレを見つめ返して微笑んだ。


「ええ、私もエスプーマを味わってみたいです」






                               続きます。




。。。。。。。。。。。。。。。



イラストです。


亀井路子さん



挿絵(By みてみん)



前作より可愛らしさをUPさせたいのですが…まだまだです(-_-;)


読み切りにするつもりだったのですが、崇サマの王子様度を上げたくて手間取っております(^^;)




ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!<m(__)m>

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