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七剣徒

クルルは死んだ魚のような目をしていた。


「うんー、事情は分かったから伝えてみるよー」


了解の返事を貰えたが棒読みだ。


「厄介だと解ったばかりなのに……ごめん」


「いや、トウヤ君のせいじゃないし、それに放置しておくと危険なのは解ったから」


大切な事なのに申し訳なさそうにするトウヤにクルルも同じ気持ちになってしまった。


「まあ上も無能ではないから動くとは思うよ?危険な芽を早めに摘んでおくのもわかるし」


「仮にも十年以上潜伏してここまで仕上げてきたんだ。現実味があるよね」


「そうね」


クルルも相手の脅威を理解した。だからこそ協力してくれている。


「ねぇ、七剣徒(セプトレア)ってどんな人がいるの?」


「癖の強い人たちばかりだけど、魔導士としては私よりもずっと上の存在よ」


クルルより上。まだクルルの実力を全て把握していないが、前に見た融合は

かなり強力に見えたし、不死鳥(フェニックス)の超回復は誰にも真似出来ないだろう。


十分強力に思えるがそれよりも上となると想像がつかない。


いったいどんな魔法、いや異能を使うのかは気になる。


「七人いるんだよね?一人くらい協力的な人はいないのかな?」


「う、うーん……桃姫(ももひめ)の、いや、君影(きみかげ)の……う~ん」


悩むあたり、どれも似たり寄ったりなのだろう。


「じゃ、じゃあ七剣徒(セプトレア)の人たちのことを知ることは出来るかな?」


「それくらいなら」


第七位・君影(きみかげ)の君、リヤナ・リリーベル

第六位・覇王樹(はおうじゅ)の君、カクタス・ロフォフォラ

第五位・桃姫(ももひめ)の君、スプニール・ネリウム

第四位・現幻(げんげん)の君、アイマ・コカ

第三位・笏弓(しゃくゆみ)の君、クネニ・アララギ

第二位・融雪季(ゆうせつき)の君、ニゲル・ヘレボルス

第一位・紅狐(べにぎつね)の君、サラバンド・ローザ


以上七人が今の七剣徒(セプトレア)だ。


今のと言うのは定期的に入れ替えがあるという意味だそうだ。


「その中でも、さっき名前の出た桃姫(ももひめ)の君と君影(きみかげ)の君が協力的なんだね?」


「え、ええ」


桃姫(ももひめ)の君、スプニール・ネリウム……あれ?ネリウム?」


「前に話した桃竹(ももたけ)の君のご令嬢よ」


「次の麗王(れいおう)候補じゃん!」


「ええ。ついでに言うと融雪季(ゆうせつき)の君も候補だし、

笏弓(しゃくゆみ)の君、紅狐(べにぎつね)の君は近親者。

君影(きみかげ)の君は白酔馬(しろすいば)の君の養子よ」


厄介も度を超すと笑えてくる。


「近親者が多い中で、そうでない二人が異質に感じるな」


「異質なのは現幻(げんげん)の君だけよ。

あの方は何十年も姿がよくわからない存在だし」


「よくわからない?」


「全員、会ったのに姿が思い出せないのよ」


「記憶を操作する魔法を使うのかな?」


「だとしても痕跡が残るはず。でもそれすら無いからよくわからないのよ」


魔法も異能もすべて解明されているわけではないし、

地位の高い人間なら能力を隠すのも頷ける。


「とにかく、私からも報告しておくわ。藤躑躅(ふじつつじ)の君も動いてくれているなら、

可能性はまだある方だから、追って連絡するわね」


「ああ、お願い」


そう言うと、クルルは急いで報告しに行った。


ある意味クルルの理想通りの関係が築けてる気がする。


危険なものはしっかり共有し、国を守れるように動く。平民も貴族も関係なく。


(その架け橋が俺なのか?)


ポーラが言っていた外部の協力者と繋ぐ役割を担う才能。


確かにあるんじゃないかと疑ってもいい状況に一番驚いていた。




一日ほど、これは貴族にとってかなり早い対応である。


それほど脅威と判断して対応に移ったと言うことだ。


現在の麗王(れいおう)をとりまとめている白酔馬(しろすいば)の君はかなりの切れ者。


しっかりと危険を読み取り対応に移っている。


中には臆病風に吹かれたと言う人もいるが、事態を正確に認識する力をもつ長に相応しい人だと思える。


七剣徒(セプトレア)第七位、リヤナ・リリーベルです」


お嬢様然とした少女は、貴族としての挨拶を済ませると集まった人々を見回した。


顎が前に出て、少しニヤッとしながら目を細めている。


地球では相手を見下している態度と言われているが、ここではどうだろうか?


色白の肌と白をベースとしたフリルの服装に白に近い金髪には白のリボンとシュシュ。


見た目は可愛らしい、綺麗と思えるが、

全てが白に統一された姿から見える碧眼は細めてもどす黒く見えた。


そして……


「……同じく第五位……スプニール・ネリウム……」


こちらは無関心、面倒と思っているのがよくわかる。


トロンとした顔は眠気に誘われている様子だ。


だがそんなところで寝ないでほしい。


そんなマイクロビキニも白旗を上げるような恰好は、

風邪をひくのでは?と心配になると同時に目のやり場に困る。


「こ、今回の天使討伐のクエストに桃姫(ももひめ)の君と君影(きみかげ)の君がご助力に、

そして補佐役として私、クルーエル・アマリリスとこのミイナが加わります」


クルルが申し訳なさそうに挨拶をする。


「高貴な方々にご助力いただけることを感謝します」


集まりの中から代表してステラが感謝の言葉と共に一礼した。


だが


「せいぜい足を引っ張らないように動いてちょうだい」


リヤナの返事は頬をヒクつかせるようなものだった。


“ここは何を言っても無駄”と場の空気が物語っている。


ギルドマスターにこの態度。


先が思いやられる反面、それだけの絶対的な自信は上位貴族だからと言う理由だけではないと信じたい。


(これは補佐役のクルルの苦労は相当だろうな)


参加してくれる、それだけでも良しとしよう。


そう友人の体調を心配してると甘い香りが漂ってきた。


「……!?桃姫(ももひめ)の君!?」


気配も無くトウヤの隣に立っていたスプニールに驚くと、顔を覗き込まれた。


「……あなた、名前は?」


「な、名前!?ほ、ホシノトウヤです」


「ホシノ……トウヤ?」


さらに近づかれる。


明るい桃色の髪から覗く大きな瞳は、不思議なものを見るようだった。


一応男なので、半裸の女の子に近づかれると緊張して目のやり場に困ってしまう。


起伏の無い体なので何かの拍子にいろいろと見えてしまいそうで変な汗も出てきた。


スプニールは一通り品定めするように見回すと、何事も無かったように戻った。


(な、なんなんだよ!)


無気力で感情に乏しい顔は、何を考えているのか理解するのに難しい。


この先しばらく一緒にクエストを熟すと思うと先が思いやられる。


クルルの言っていた癖の強い人たちばかりと言うのは、こういう事かと納得し、

もう一つの評価である魔導士としてはずっと上と言うことに期待した。




七剣徒(セプトレア)のお二人には天使の討伐をお願いしますが、

その他は極力皆さんの方で対応をお願いしますとの言伝です」


「承知しました。やはり天使のみですか……」


「はい……すみません、私もあまり言える立場では無いので……」


「いえ、当初の予定通りです。星歌(ほしうた)の君が気に病むことではありません」


クルルとステラの会話になると話がスムーズに進んでいる。


リヤナよりも貴族らしい二人と感じるのは気のせいではないだろう。


「お二人には私経由でになります。万が一に備えて早め早めの連絡をお願いします」


「承知しました」


一番の障害と思えた七剣徒(セプトレア)参戦はクリアされた。


残りの問題は相手の明確な居場所のみとなる。


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