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望まぬ再会

胸が締め付けられるような気分だ。


走っているからじゃない。これからに不安を覚えている。


「セレス、大丈夫?」


「……わからない。まだ上手く戦えるか不安だ」


相棒に不安がっているところを気付かれたようだ。


これから苦手としている相手と対峙する。


映像なんかで訓練したが、まだ足が(すく)む時がある。


局のサポートがあると言えど、油断した場合は死に直結する。


それでもやらなくちゃいけない。


いや、自分がやりたい。


そう奮い立たせている。


「ヤバくなったら無理矢理でも帰らせるよ?」


「ああ、そうしてくれ」


ここで死ぬことは父親も望んでいない。無理はしないつもりだ。


そう自分に言い聞かせて目の前に集中する。


ふと開けた場所にたどり着いた。


「ここは、何かの部屋か?」


だが周りには瓦礫があるだけで何も無いように見える。


「瓦礫が邪魔で通路が確認出来ないわね」


二人で確認するには少し時間がかかってしまうほど広い。




カラン




小石が瓦礫を転がる音がしたので警戒する。


すぐ戦闘に入れるようデバイスを構える。


音のした方から人影のようなものが見える。


「あ……」


セレスはその人影に見覚えがあった。


いや、見間違えるはずもない。


「おとう……さん……」


セレスは涙を流し、ティアはあまりの出来事に驚きすぎて固まってしまった。


その影の主は間違いなくアルフォートだった。


「お父さん!!」


セレスは大声で呼ぶ。


死んだと思われてた父親が生きていた。こんなにも嬉しいことはない。


あまりの嬉しさに涙を流しながら駆け寄っていた。


「生きてた……いぎ゛でだんだー!」


そしてティアも大粒の涙を流しながら大声で泣きだした。


ただただ自分の嬉しい思いのまま父親に抱きついた。




ドス!




セレスの腹部に鋭い痛みが走った。


「え?……」


腹部を確認するとナイフで刺されたようだ。


なぜ?


ナイフは何処から?


刺さるナイフの柄は目の前に立つ父親が持っていた。


(なぜ刺された?)


その答えはすぐに目の前に現れた。


アルフォートの背中から現れたのは例の翼だった。


「あっ……」


あまりの光景に力が抜け、ナイフが抜けると同時にへたり込んでしまった。


「ああ!……っ!」


ナイフが抜けたことによる痛みで我に返る。


「セレス!!」


アルフォートからの翼の出現。セレスが倒れたことで分かったナイフの存在。


そしてそのナイフが血で汚れていることが分かったティアは駆け出した。


目の前のアルフォートは敵、相棒は刺された。


信じられないが切り替えなければ。


その切り替えに集中し過ぎたせいか、アルフォートの移動に気づくのが遅れてしまった。


セレスの血で汚れたナイフが顔に襲い掛かる。


ティアは手に持っていたデバイスの側面でナイフを受け流す。


走っていた途中なので受けの体制になりきれず、

そのままバランスを崩し地面を滑るように横になる。


だが滑る勢いを殺さず体を横に回し肘で地面を叩きつけると、

上体を起こしまた走る体制に戻す。


今はアルフォートと戦っている場合じゃない。


セレスの傷を見なければ、場合によっては致命的になる。


さらに動けないならいい標的になるので守らなければならなくなる。


そう判断し駆け寄ろうとしたが、横槍が入った。


ナイフを躱されたアルフォートはそのまま切り返しティアの横まで移動していた。


そして今度は蹴りで応戦してきた。


死角からの攻撃だが、目の端で足をとらえられたのでティアは腕を構え防御の体制になる。


「ああっ!」


蹴りは魔法で強化した腕で防いだ。


しかしあまりにも大きな力だったため、そのまま蹴り飛ばされたしまった。


そしてそのまま壁に叩きつけられてしまう。


「――!?」


意識が飛びそうになってしまった。


魔法で強化していた。腕を構え受けることも出来た。


それでもこれだけの威力。


アルフォートの訓練、そして一緒にクエストを受けたことがあるが、

その時とはまるで別人のかけ離れた力が出ている。


不意打ちとはいえ、ティアはすぐに立てずにいた。


「おやおや、父親でしたか。父と娘の感動の再会ですねぇ」


突如男の声が響き渡る。


「そこの金髪が危険そうだったので鬼を使いましたが、

それ以上の結果が得られそうですねぇ」


クスクスと笑っているような不快な声が響く。


「……誰?」


ティアは絞り出すように問いかけた。


「これから逃げようというのに身分を明かすわけないでしょう。

この程度もわからないとは、実に残念なお方ですねぇ」


馬鹿にした物言いだが、その通りである。


「だが感動の再会のお礼にそいつについて教えてあげましょう」


相手が自慢気に情報を教えてくれるようだ。


ティアは黙って聞いて先ほどのダメージの回復にあたることにした。


「そいつは()()を操作して動かす生体兵器だ。

と言っても死んでいるので生体と言うのも可笑しな話ですがねぇ」


聞きたくない単語が入っていて涙が溢れる。


やはりアルフォートは襲撃の際に殺されていたのだ。


「そして特別な魔法で生きていた時と同じ魔法が使えるようにし、強化魔法、

操作魔法を組み合わせ、生きていた時よりも強力な兵器に仕上げているのですよ。

強さは元の人間に依存してしまいますが、潜在能力を余すことなく使い切る、

これほど完成度の高い兵器は人造人間レベルですよ!あひゃっひゃひゃっ!」


不快な笑い声が響く。


「……つまり、天使になりかけてるのね」


ポツリと声が響く。


「セレス!?」


ティアは顔を上げ、セレスを見る。


セレスはデバイスに炎を纏わせお腹に当てた。


ジュ!


「あっ!……ぐっ!」


どうやら炎で刺し傷を焼き、止血したようだ。


そして大きく息を吐き立ち上がる。


出血が多く少しふらつくが、立ち上がりデバイスを構える。


「ああ、そちらは少し理解が良いようですねぇ。

しかしその体で戦えると思っているのですか?しかも相手は父親。

親不孝な娘で泣いていますよぉ?」


「黙れ!!」


セレスは大声で遮る。


「……許さな……」


「何か言いましたか?」


「絶対に許さない!あなただけは、絶対に!」


「許さない?負け犬の遠吠えですかぁ?立っているのがやっとのあなたにには、

負け犬みたいに泣き叫んで、その死体を差し出す程度しか出来ませんよぉ?」


高らかに笑う男に反論したくても不意打ちで大量の血を失い、

ふらつく体を必死で支えているセレスには黙って聞くことしか出来なかった。


「相変わらず、非人道的な実験を繰り返しているのね、ゴラースミ博士」


突如、女の声が新たに現れる。


セレスとティアはその声に驚いた。


その声の主はよく知る人物で滅多に戦場に出ないからだ。


セレスも幼少期に戦っている姿を見たっきりで、

なぜこんな場所にいるのかと問いたいくらいだ。


「その声は……エェクゥゥセェルゥゥゥ……!」


男は積年の恨みを募らせるように女の名前を呼ぶ。


「その名前で呼ばれるのも久しぶりね」


パースレールマスター、アローニャ・E・ハーディが戦場に降り立った。


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