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今、王宮内にて

王宮内に一般兵として入ったファイゼンは、すぐに異様さに気づいた。


(あっちこっちに遠隔操作型の魔法があるな)


外から中を魔法で見ることは出来ない。


王宮内で魔法が使えないようにしているのかと思ったが、

中の部屋を見ることは出来るし、遠視も出来る。


つまり外壁に仕掛けがあって魔法を阻害する構造だ。


さらに場内の床、壁に魔法の仕掛けがある。


おそらく罠として設置している可能性が高い。


一般兵が触れても問題ないということは誘発型ではなく遠隔操作型だ。


いや、遠隔操作はオンオフだけで誘発型かもしれない。


そこは用心すべきところだろう。


そして


(一般兵でも扱えるデバイスか)


一般兵には銃型の魔力補填機付きのデバイスが渡されている。


仕組みはトウヤの考えたデバイスに近い。


これにより一般兵でも新人魔導士と同等程度の力がある。


と言っても体の強化が無いので、反撃を受けたら簡単に倒れてしまう。


さらに行ってはいけない場所がある。


王と玩具の部屋、そして地下室だ。


前情報から王と玩具の部屋は何も無いと考えると、怪しいのは地下室だ。


魔法使いをまだ見ていないので、地下に潜伏していると考えていいだろう。


となると


(地下室を調査したいな。いや、王宮内に呼ぶのが先か?)


不透明な部分が王宮から地下室に変わっただけ。


なら地下室を後回しにして、先に王宮内で得られる情報を先に取るべきか。


(いや、一般兵として潜り込んだんだ。この状態をまだ守っとく方がいいな)


つまりファイゼンはこのまま一般兵を装い、他のメンバーに調査を託すと言うことだ。


こうすれば一般兵の配置を確認しながら潜入しやすいように導くことが出来る。


(となると、外回りになる前に確認しないとな)


王宮内の魔法による監視が無いか確認しなければ潜入がバレてしまう。


ザッと見た感じ無かったが、物陰などは見れなかったので調査のやり直しだ。


ペアを組まされた先輩一般兵との話を上手く熟しながら、

ファイゼンは潜入計画を立て直した。




「ほう、あの新人見込みありか」


モニターに映る新人兵士を見て呟いた。


「はい。いかがいたしましょうか?」


「早々に実験へ協力させろ。局に情報が洩れないうちにな」


「局?こいつ魔導士ですか!?」


「この国の人間は大体調べた。見たところあいつはそれなりに高いランクだ。

そんなやつ見逃すと思うか?あり得ない。なら局の関係者だ。

ついこの間も局の魔導士が現れたから間違いないだろう」


「な、なるほど」


少し魔法で見れば魔法使いかそうでないか、高ランクか低ランクかはわかる。


その程度もわからないやつが監視と言うのも滑稽だが、今は人手が欲しい。


見つけられただけでも良しとしよう。


「よい頃合いだ。また数人の兵士達を実験に使う。その数人にその新人を入れろ」


「承知しました」


局の魔導士が嗅ぎつけたようだが、地下に入れてしまえば関係ない。


あそこは魔導士にとって地獄。


さらに外から攻めようものなら外壁の仕掛けで一網打尽。


それでまた別の実験が出来る。


「さて、準備でもしておくか」


男はニヤニヤしながら奥の部屋に進んだ。




「実験……ですか?」


思わぬ提案に驚いたが、これはチャンスだと思った。


ファイゼンを始め、数人の兵士に実験の協力要請が出たのだ。


これは秘密の地下室を調べる絶好の機会でもある。


「報酬もある。参加してみないか?」


先輩兵士もノリノリだ。


「はい、ぜひ参加させてください」


ファイゼンも参加を決意する。


「じゃあ、他の連中にも声かけてみますね」


「いや、その必要はない。すぐに行こうぜ」


行く前に報告しようと思ったが、先輩兵士にグイグイ押され出来なかった。


(まあ調べた後でも問題ないか)


そう思い地下へ進むと既に数人並んでいた。


(女?兵士だけじゃないんだな)


兵士の男に給仕の女。確かに誰でも参加出来る実験なんだろうと思った。


実験の研究員と思われる人に案内された部屋はかなり広く昼間のように明るかった。


(ここにも強力な魔法使いはいないのか)


新しく現れた研究員は多少魔法の知見があり、使えるようだがよくてCランク。


魔法が得意な一般人程度である。


研究員は一人一人にデバイスを渡すと、簡単に操作方法を教えた。


そしてファイゼンにデバイスを渡すとき、研究員は気づいた。


「ほう、あなたはなかなか才能がありそうですね」


ヤバいと思ったがランクまではわからないようで、他の人より上手だろうくらいだった。


そのため、一人だけ別メニューが用意され、デバイスも大型の物に変えられた。


今のところ不審な感じは無い。


本当に一般人でも使えるデバイスを作ろうとしている感じだ。


(これは……ハズレか?)


ポーラ程魔法に詳しいわけじゃないので推測だが、

場内の壁に仕掛けてたのは城を守るための強化魔法の可能性もある。


それなら至る所にあるのも納得だ。


だがここはもう一度疑ってみた。


「そういえば研究員さん達はこの国の出身なんですか?」


何気ない会話のようにして話しかける。


「いや、我々は国外の人間だ」


「国外の?」


「知らないのか?我々は旅をしながら研究出来る場所を探してた旅の者だよ」


「へぇ、そうだったんですね」


「この国の王は国民に厳しいからな。そういうの伝えてなかったんだろうな」


「そのようですね」


「我々にとっては土地と協力者を提供してもらっている同胞だ。恨まないでやってくれ。

それにこの国の事情は少しだけ知っている。貧しく今日を生きるので精一杯だろ?

だからこうやって報酬が君たちに行くようにさせてもらっているんだよ」


「それはありがたいです」


話した感じ悪意を感じない。本当に研究をしているだけのように思える。


だとするとあの男は何処であの魔法を貰った?


こことは別だったか?


あれこれ考えていると実験の準備が整ったようだ。


「奥にその大型武器用の的が幾つかある。操作は基本的に小さいのと一緒だ」


「わかりました」


「では、頑張りたまえ」


そう見送られ、ファイゼンは大型用の実験場に進んだ。


(デバイスとしてはかなり貧相だな)


見た目は肩に機械を乗せて両腕それぞれに砲身を持つ銃型のデバイス。


見た目より軽いが、大きすぎて的になってしまう気がする。


砲身も細いのが四つ。ガトリングガンをモデルにしているのだろう。


「さあ、実験を始めるよ」


室内に声が響く。さっきの研究員とは別の声だ。


真面目に実験に付き合おうと思ったファイゼンは身構えた。


()()()くん」


ファイゼンはその言葉で自分の危機的状況を理解した。


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