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昔、王宮内にて

小さな子供も集められたが、皆大人しく静かにしている。


これから話す事の重大さを感じているのだろうか?


「まず、お兄ちゃん、お姉ちゃん。これから話す内容はちびっ子には難しい内容だ。

いつかお前達がしっかりと教えてやってくれ。」


全員正確な年齢がわからないらしいが、一番上と思われる子はトウヤと変わらない。


ヨシエフは子供達が頷くのを確認すると話し始めた。




数年前、王宮に魔法使いの旅団が訪れた。


その旅団はある目的のために土地を貸して欲しいと王に頼んだ。


王は拒否したが、旅団が提示した謝礼に喜び土地を貸した。


数日後、旅団は魔法使いの人手を欲しがった。


この国は魔法はあまり発達しなかったが、使える人間はある程度いる。


貴重な存在であるため王は貸し渋ったが、やはり謝礼で手の平を返した。


そして今度は一般人まで王から買い始めた。


そのうちの一人が一般護衛のヨシエフだった。


内容は一般人でも強力な魔法が使える道具の開発だ。


ヨシエフは優秀な成績を修めていたようで、旅団の中から重宝されていた。


そして日に日に強力な道具を扱うまでになった頃、ある違和感に気づいた。


人がどんどん減っているのだ。


旅団からは頼める仕事が終わったり、難しいようなので帰ってもらったなどと聞いた。


だが自分と同じようなことも出来る人が消えた時点で疑いは強まった。


それと同時に自分が扱った道具は危険なのでは?と思い始めた。


そしてそれは確信へと変わる。


道具はただのカモフラージュ。実際は人体を媒体とした魔法の開発だった。


それを知った時には既に遅く、自分の体にも既に幾つか付けられていた。


それからの恐怖は尋常じゃなかった。


もがき苦しむ人。体が水や炎に変わる人。体の一部を失う人。


人の道を大きく外れた行為が平然と行われていた。


だが旅団にも誤算はあった。


ヨシエフの優秀さは旅団の考えを大きく越していた。


そしてそれは旅団自身に牙を剥いた。


ヨシエフは旅団に反抗し逃走した。


ある一人の少女の協力を得て。




物心ついたころから薄暗く汚い場所で過ごしていた。


子供だからと言う理由で優しくされたり慈悲を受けたりしたことはあったが、

毎日飢えと寒さに耐えながら、その日の食料を奪い合い生きている。


周りも同じだったのでこれが普通だと思っていた。


大きくなるにつれてこれが貧民街の暮らしであると知り、

王宮と呼ばれる場所には新鮮な水、野菜などが豊富にあると知った。


幸せになる方法はただ一つ。


男は王の命を守る盾として、女は王の玩具として身を捧げることのみ。


そしてそれを全う出来ない者はまた貧民街に戻る。


それがこの国の常識だった。


その中でもマリアは幼少期から特別の中の一つとして王に見初められ、

初めての友達が出来た頃、無理矢理王宮に連れていかれた。


初めこそ食事に困らなく、快適な環境での生活に自分は特別なんだと喜んだが、

部屋に閉じ込められる日々に恐怖を感じるようになった。


逃げることも考えたが、それに失敗して処刑された人もいるので勇気がなかった。


そんな日が数年続き、ついに王への謁見の日が来て、王の玩具の意味を理解する。


舐め回すように見られ、触られることに強い嫌悪感を抱いてしまった。


それ以降、王に対して恐怖心しか持てなかった。


逃げたい。でも逃げても今を生きることしか出来ない生活に戻るだけ。


そこに追われる恐怖、見つかった時の恐怖が加わると、とても正気じゃいられない。


そうこう悩んでいると事態は思わぬ方向に進んだ。


王宮にとある旅団が現れたのだ。


王は旅団との交流を深め、手伝いとして王宮内の人間を貸し出した。


その手伝いにマリアも選ばれ、初めて魔法の力に目覚める。


旅団の指導の下、魔法の訓練を行い、様々な道具を使うテストを行った。


さらにここで出会った護衛の男、ヨシエフと仲を深めていった。


マリアにとって王の玩具よりも、魔法のテスト、ヨシエフに会う方が楽しみになり、

初めてこれが幸せなんだと実感出来た。


だがこの幸せにも陰りが見えてきた。


一緒にテストを受けてた人が急にいなくなってしまうようになった。


その違和感と不信感はヨシエフも感じていたようだ。


そして二人は協力して逃げることを決意した。


ヨシエフの魔法による屈強な体はマリアを守る盾となり、

マリアの空間操作はヨシエフの動きを助けると同時に逃げることにも役立った。


王の目の届かない場所に逃げられる。


守り守られる存在が側にいるだけで心強く、絶対に成し遂げる自信があった。




しかし現実はそう甘くなかった。


テストの最中、気づかないうちに幾つかの魔法を体に刻み込まれていたようで、

逃げている最中に使われ、大けがを負ってしまった。


マリアは少なかったがヨシエフは尋常じゃない数が刻み込まれていたようで、

瀕死の重傷を負ってしまった。


なんとか逃げることには成功したものの、訳のわからない魔法が体を蝕み続けている。


このままではヨシエフの命に関わる問題が起きてしまう。


そう感じたマリアは、あえて王宮内からこの魔法を解く方法を探していた。




聞いただけで気持ち悪くなった。


小さな子供達は理解出来ない部分もあったようだが、

二人が酷い目にあったことは理解したようで慰めようとしている。


年上の子供たちはどうしたらいいか困っている。


そしてトウヤ達も……


そんな中、一番しっかりしていたのはソニアだった。


「遠隔操作の魔法に体の状態変化。あと強化の魔法も入ってそうね」


一人冷静に魔法の解析を行っていたことで、

どういう魔法が蝕んでいるか当たりをつけているようだ。


「あたしでも何とかなりそうだけど、時間がかかりすぎるわ。

今の話を持ち帰って王宮の方も対処しないといけなさそうだし……」


何とかしたい。でもあちらこちらでやることが増えて手が回らない状態だ。


「なら私が協力する。その代わり、旅団を捕まえて解く方法を聞き出して!お願い!」


マリアのヨシエフを助けたい気持ちは理解している。


だが……


「一般人を巻き込めないわ」


ギルドはクエストを通じて一般人を守っている。


一般人を巻き込んでしまうのはご法度だし、

情報提供ならクエストを通じて出すことになる。


もちろん一般人がクエストを通じてとなる場合、依頼料が発生する。


マリアたちは今を生きるので精一杯。とてもそんな余裕はないだろう。


だがこれを打破するようにトウヤが提案する。


「ならマリア、うちに入らないか?」


「え!?」「はあ!?」


マリアもソニアも驚く。


「ちょっとあんた!今一般人を巻き込めないって言ったでしょ!?」


「一般人じゃない。同じギルドの仲間だ!」


「そのためだけにギルドに入れられるわけないでしょ!」


名目上ギルドメンバーだが、やり方は一般人を巻き込んだ形だ。


トウヤはソニアを押し退けマリアの方に寄る。


「これが終わったら抜けてもらって構わない。王宮攻略のために協力してくれ!」


トウヤは握手のために手を差し出す。


マリアは少し迷ったが、覚悟を決め手を握った。


「わかった!全力で協力するよ!」


これでお互いの合意が取れた。


「あたしは見なかった聞かなかったで通すわよ。絶対助けないわよ」


ポーラの尽きない悩みの種を、ソニアはよく理解した。


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