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マリア・ウィンタード

「局の仕事と言うのはある生体魔道兵器の調査と破壊。

これを調査していた人の最後の報告がこの国だったことから、

この国にある魔法に関わる怪しいものを調査していたんだ。

マリアを調査していたのは俺が助けた後、魔法を使ってこちらの様子を伺っていたから、

申し訳ないが後をつけさせてもらって調べていたところ、

全身魔法陣に覆われた人を見つけてしまい、それが何なのか見させてもらったんだよ」


トウヤはマリアを監視していた理由を嘘偽りなく話した。


「そう、それは私が迂闊だったわ。あの人のことも知られてしまったのね」


「知られちゃマズいの?」


リリスの問いにマリアは微笑むような顔で溜息をついた。


「あの子たちより少し年上っぽいのに局の魔導士ねぇ。

あまり相手にしたくないのに当たっちゃうなんて運が無いなぁ」


マリアは諦めたように天を仰ぐ。


「ねぇ、局に協力するから助けてもらえないかな?」


「助ける?もしかしてあの人を?」


「ええ、解呪師がいれば一番ありがたいのだけど……」


解呪。封印を解く魔法ならポーラやセレスが使ったことがある。


「解呪師ではないが、何人か解呪が出来る人がいるね」


「その程度じゃダメ。とびっきり強力なのを解ける人が欲しいの」


「そこまでは局に問い合わせてみないと分からないよ」


「そう……」


そう言うとマリアは何かを考え始めた。


「君は局の魔導士だよね?局の事どう思ってる?」


「え?……う~ん、なんかキナ臭い連中が多いよね」


トウヤの回答にマリアか思わず吹き出してしまった。


「あはは、面白い回答するのね」


「そうかな?リリスは亜人なんだけど、それだけで殺されそうになったりしてるし、

正義の味方的な思想を語ってるけど、行動は損得や評判を気にするのが多いし」


「へえ、君は亜人だったの」


マリアはまじまじとリリスを見る。


リリスは不快そうな顔をしたが、黙って立っていた。


「それに、二人とも育ちの環境が悪そうね」


「よくわかったね」


確かに二人とも良い環境とは言いづらいとこで育った。


「勘よ。私も同じように育ったから、なんとなくわかるのよ。

でもいい人に出会えた。だから私たちに無い物を持ってるわね」


「無い物……あの人は違うの?」


「……どうだろう?あの人もあの人で苦労はしてるからね」


「十分だと思うよ?だからこそ子供の世話をしてるんだと思うし」


「……君にも血の繋がらない弟や妹がいたのね」


「ああ」


似た環境を持っている二人には、他人にはわからない部分で共感していた。




「ねぇ、一度その人に会わせてくれないかな?

もしかしたら知ってそうな人に連絡できるかもしれないし」


「そうね。それが一番早いかもしれないけど、こちらも局を信じきれないの。

今まで見向きもしなかった連中が来ても怪しいだけなのよね」


「じゃあ個人で信用できる人じゃないとダメか」


「そうね。誰かいい人いないかしら?」


「う~ん、情報屋って言えるくらいの情報と高い解析力を持ってる人はいるよ」


「どんな人?」


「貴族だけど気さくに話してくれる人で、リリスが亜人と知っても守ってくれた。

それに面倒見がいいのか、いろいろ教えてくれるし友人も慕ってるんだ」


「ふぅ~ん」


話がとんとん拍子で進んでいることにリリスは驚いた。


「ちょ、ちょっと待って。何でそんなに仲良くなってるの?」


「え?」


「仲良く?」


トウヤもマリアも似たような反応をしている。


「う、うん」


その反応にリリスも自分が感じたことに自信が無くなってきた。


「仲良くというか、大丈夫って思えてさ」


「敵対はしないかな?って感じよね?」


「何で?」


「「勘!」」


ガクッとこけそうになった。


(よ、よくわからない……)


リリスは呆けるしか出来なかった。


「とりあえずお互い出せるのは、あの人の解呪と協力って感じかな?」


「協力するなら王宮の中を案内出来るわよ」


「え!?案内出来るの!?」


これは嬉しい情報だ。


「あの中は魔法が使えない空間で遮られてるから中が見れないでしょ?」


「確かに。中が確認出来ないから他の人が潜入している最中だな」


「じゃあ交渉成立でいいかな?」


「うん、早速話を通すよ」


思わぬ成果が得られた。


(意外と良い関係が築けそう?)


トウヤとマリアは同じことを思っていた。


そしてリリスは、なぜこうなったか頭を悩ませていた。




トウヤが呼んだ情報屋みたいな人、もといソニアはすぐに駆けつけてくれた。


「バレてるのに局との通話を切るなんて、どういうつもりかしら?」


「念のためよ。トウヤくんが信じている人だから会わせるけど、

私自身はまだあなたのことを知らないからね」


敵対関係ではあるが互いに理のある情報を出し、平和的に解決させるなら、

お互いこれ以上に良いことは無い。


部屋に案内され現れたのは、例の全身布に覆われた男だった。


敵視した目で睨まれたが、どうこうする気は無いようで、男は黙って座っていた。


「あたしはアルカナフォートのソニア・ホロロギスよ」


「ヨシエフ・サマールだ」


簡単な挨拶を済ませると調査を始めた。


布の下には黒く蠢く何かがある。


「これ――!……よく抑え込めてるわね」


どうやら相当ひどい物のようだ。


しばらく調べると、ソニアは首を横に振りながら姿勢を直した。


「これはどういう魔法かもわからない陣が複雑に組み合わせてる。

悪いけどこれを解ける魔導士はいないと思うわ」


考えていないわけではなかったが、一番嫌な答えが返ってきた。


マリアの目元も潤んでいる。


「ただ、これは原因がわからないからと言うのが大きいわ。

だから……解くためにどうしてこうなったか教えてほしい。

お願いします。私を信じて教えてくれませんか?」


ソニアが頭を下げ頼む。


その姿にヨシエフは驚いた。


そしてしばらく黙って考えた後、重い口を開いた。


「マリア、子供達をここへ」


「え!?」


「全てを話そう。これは子供達にも知らなければならない」


「で、でも……」


「嫌われてもいい。子供達に被害が出る前に知らなければならないんだ」


「……わかった」


そう言うとマリアは子供達を呼びに出た。


「本来なら俺は死ななければならない存在だ。

だが、欲に負けておめおめと生き永らえている」


「その欲って子供達の事?」


「……それもある」


トウヤの問いに濁した返事をする。


もしかしたらこの人もマリアと同じかもしれない。


トウヤはそう感じていた。


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