突入
無数のロボットが所狭しと並んでいる。
前情報で数万と聞いていたが、目で見える限りその数倍はあってもおかしくない。
それが全て敵でなかったらどんなにありがたかっただろうか。
アローニャは大きく溜息を吐いた。
もう作戦は始まっている。今更止めようにも遅すぎる。
ここは戦っているメンバー達を信じるしかない。
「先遣部隊突破しました!」
リサから良い知らせが届いた。
予想以上の結果に今回の士気の高さを感じる。
こんなにも慕われていた。こんなにも無念を憂いていた。
力は小さくても、皆いつも以上に力を発揮し、通常以上の結果を残している。
皆、あの人の炎を胸に戦っている。
そして、今度はそれを継ぐ者を育てねば……
「セレス……あなたに継いでほしいの……」
一度躓き、絶望を味わい、どん底から這い上がったから。
「プランA、全軍突撃!殲滅しなさい!!」
「「「了解!!」」」
号令と共に一筋の閃光が走る。
所々、大きな爆発が起こるとロボットが木端微塵に吹き飛ぶ。
「トウヤ!一人で突っ走らないでよ!!」
「わかってる!」
閃光と爆発を生み出しているのはトウヤだった。
自身の強化で閃光を、デバイスの効果で爆発を起こしている。
切った個所を爆破する効果を持つ発破の剣と、
音速の速さで切る音速の剣の効果を持たせたデバイス要は
ロボット相手に非常に強力な効果を持っていた。
相手の方が数が多い分、最小限の動きで破壊する様は頼もしい。
「うにゃあん、やっぱり魔道合金にゃ~。予想通りにゃ~」
リンシェンが破壊されたロボを見て納得した。
この素材ならある作戦が使える。
「だったら……リリス!」
空中を飛んでいたリリスがロボット軍団の中心に着地する。
それを見たロボット軍団は即座に四方を囲み、襲い掛かった。
しかし、ロボット軍団の攻撃はリリスに届くことなく砂となり消えていった。
「元々重い素材だからかな?飛ばないで落ちていくのね」
普段の効果と違う崩れる石像の効果に驚きつつも、
それを気にも止めずに、悠然と歩いていく。
魔道合金は魔力を含んだ人工金属であるため、崩れる石像の効果の対象になる。
そのためロボットが密集している箇所で使うと一気に破壊することが出来る。
「ははっ!あれを見てると自信を無くすな」
局内で一二を争う攻撃を繰り出すリーシャも一体一体、確実に破壊していくやり方だ。
一気に殲滅していくリリスの姿に力自慢のリーシャも劣るのでは?と感じていた。
「リリスには条件があるんだ。汎用性のあるリーシャとは別物だろ」
ファイゼンは破壊されたロボットに触れる。
すると鈍色の水状のものが浮き上がり、形を剣に変えた。
「ここは俺も攻撃に参加できるいい環境だ!」
鉄の生成、操作が得意なファイゼンは破壊されたロボットから鉄を抽出。
そしてそれを無数の剣に変え、相手を切り刻む。
もちろん魔道合金も対象になるため、ロボットの数以上に剣を作り出せる。
「セレス……突っ走ってないでしょうね?」
メンバーだけで無双状態なのでポーラは戦況を確認しつつ友人の心配をした。
「大丈夫……と思いたいな。今回はアローニャさんもティアもいる。
あんなことがあったけど、前みたいにはならないだろう」
「それよりも、うちはトウヤの連れてきた女の方が気がかりだ。
あいつは本当に信用出来るのか?」
「……まあ助けたい人もいるみたいだし、嘘は言ってないと思うよ?」
「ここまではあの女の言う通りだが、この先もその通りとは限らない」
「いや、信用してもいいと思うぞ。その助けたい人ってのも想い人だろうし」
「……」
「……」
「な、なんだよ」
「ま、女のことに関してはお前も鼻が利くんだ。そういうことにしといてやるよ」
「……なかなかの美人だったもんね」
「そこは関係ない!」
美人に甘いファイゼンはそれなりに痛い目も見ている。
それでも懲りないあたりは、どう判断すべきやら。
ドン!
そうこうしているうちにトウヤ達が大部分の軍隊を殲滅した。
深部への道が見え始める。
ここで後続部隊を呼べば道が繋げる。
そう思ったとたんレーダーに大きな反応が現れた。
「深部から大きなエネルギー反応!何か来ます!!」
サポーターのウィンリーから警告がとぶ。
「これは……双頭竜!?」
「を真似したロボットね」
厳つい見た目に驚くレナの情報をウィンリーは冷静に訂正した。
「随分とゴツイなあ。あれで動けるのか?」
ファイゼンの言う通り、いろいろ詰め込んでいるのか胴体がかなり大きい。
双頭竜、と言っても胴体は卵を縦に半分にしたような感じで、
四足の足は太くとても素早く歩くのには向いていない。
おそらくホバーと同じような原理での移動で地上で動いているのだろう。
そして頭の大きさの割には首が細く長い。
実物がいたら生物として生きていけない気がするアンバランスさがある。
「さっさとぶっ潰――!?」
リーシャが手早く潰そうとしたが、
口を開けた竜から凄まじい勢いの火球が放たれた。
火球はリリスの結界に当たり消えたが、衝撃波と熱風が威力を物語っている。
「まてまて、何の前触れ無しにあんなのが撃てるのか!?」
リリスの結界が無かったら躱し切れるか怪しかった。
しかも今のは一つの頭での話だ。
二つの頭で同じことをやられたら厄介だ。
「こんなのいくら大きくても一緒!」
同じロボットであれば素材も同じ魔道合金を使っている。
つまり崩れる石像の対象になり、簡単に破壊できるだろう。
そう判断したリリスは竜に突っ込んでいく。
それに反応した竜はさっきの火球を撃つがかき消される。
熱風と衝撃波が残るが、リリスは耐え突き進む。
また竜から火球が放たれる。
「よし!行け――」
「逃げて!!」
進む掛け声をするリーシャの声をかき消すようにポーラは叫んだ。
正反対な声にリリスも一瞬ポーラの方を向いてしまい判断が一瞬遅れてしまった。
崩れる石像でかき消された火球の陰から金属の槍が無数に飛んでいた。
しかも崩れる石像で消せない。
AMZ対策として搭載された非魔道製の金属だろう。
これを警戒してリンシェンに調べさせた後でリリスを出したが、
武器として後出しされてしまった。
魔法に対して絶大な力を持つ崩れる石像も、これを使われたら成す術がない。
逃げられない。そうわかると動けずにいた。
「リリス!消せ!!」
咄嗟に聞こえた声がトウヤの声だとわかると、即座に崩れる石像を消した。
そしてすかさずトウヤがリリスを抱きかかえる。
これで逃げられ……るほど余裕はなかった。
判断が遅れた影響で槍は逃げれない距離まで迫っていた。
このままでは槍に刺される。
そう思ったリリスは目を閉じた。
だがトウヤは諦めていない。
そして名前を呼んだ。
「マリア!!」