第7話
大きな入れ物をこちらに持ってきた。
「スープ皿、人数分合ってるかな?」
「9人だよね」
「合ってるよ」と俺が肯定した。
何故、伊織が問題児ばかりの女子寮に入れられてるのか分からない。そう、あと数分後までは知る由も無かった。
伊織は栗色の髪をロングヘアーに下ろしており、顔も鼻が高くて美人だ。頬も朱色で美しい。
性格もしっかりしていて学級委員長に選ばれそうなくらいちゃんとしている。この中で一番マトモだ。次にマトモなのは紗弥奈である。
スープ皿を何故か重ねて一辺に持ってきており、そのまま俺らの方に直進してきた。
これ、崩れるだろ。
悪い予感は的中し、
「あわわわゎわ……」
伊織はふらつきながら前にスープ皿を倒した。
「ガッシャーン」
大きな音が寮内に響く。
「……またやっちゃった」
「また?」俺が疑問に思いながら呟く。
「この子、ドジっ子なのよ」乃愛はそう説明する。悪口にも聞こえなくないが。
「ごめんね、うるさくして」伊織は謝る。
割れた皿を片付けて、新しい皿を今度は一つずつ持っていく。
ってこの寮、どこまで皿持ってるんだよ!
シチューはよそい、カボチャの煮付けは出来ており、冷蔵庫から取り出そうと後ろを振り返ると伊織は冷蔵庫に頭部をぶつけた。
「痛たたた」
「大丈夫か?」
この展開を予想してたかのようにビニール袋に入れた氷を手渡す。
「ありがとう、拓真くん」
そう笑顔で礼を言われると照れる。
卵かけご飯はご飯に卵をかけるだけだが、一人一人自分でやらずに伊織がかけるらしい。お詫びか。
が、またもややらかし
卵割れない事件発生、茶碗の外に飛び出す事件発生、卵黄を分けた事件発生、床に卵を落とす事件発生、と色々大惨事だった。
何で伊織に任せたんだ? と脳内は?で一杯だった。
食器洗いは霞担当、拭く係は乃愛担当、食器棚に仕舞う係は伊織担当らしい。
絶対、伊織持ってく途中に皿割るだろ。と思ったが口には出さなかった。
乃愛によると伊織が割った皿は累計100を越えているらしい。驚異の数字だった。
伊織がここに居る理由が知れて良かった。また一つ、新たな顔が見れたのは嬉しい出来事だった。
何でも完璧な人っていないからな。
そうして一難去って、机を囲み、夕食を皆で食べ始めた。
皆で囲む食卓は何だか温かくてほのぼのした。
「いただきまーす」
皆で唱え、スプーンや箸に手を付け始めた。
だが、問題発生。
最初は乃愛や麻邪実、愛理、紗弥奈たちと和気藹々《わきあいあい》と楽しくお喋りしてたんだが。
途中で異変に気づいた。
?が食べようとしてない。
「どうした? 食欲無いのか? 嫌いな物でもあるのか?」と尋ねると
「《《食べる》》という人間の当たり前な原理には私は理解できない」と言われた。
言っている意味が分からない。
「それに食べたり飲んだらトイレに行かなきゃいけないじゃない。嫌だわ、そんなの」
そんな事言ってたら埒があかないだろ!
「健康の為に食べるんだ、ほら」
スプーンでシチューを掬ってみせた。
「何日間、飲食してないんだ?」
「食べるのは3日間。只今、絶食中。水はこまめに飲んでる。あと何日間飲食しなかったら死ねるのかしら」
もう水飲んでる時点でアウトだろっ
「死にたいよね、分かる!」と麻邪実が言った。
そんな共感はしてほしくない。
「トイレも我慢してるわ」と銀髪美少女は自慢した。
「我慢するな」
「ほら、食べろ」とスプーンでシチューを掬い、?の口を無理やり紗弥奈に手伝ってもらい、開けさせ、シチューを?の口に含ませた。
それはもう強制的なあーんである。
?は顔を真っ赤にさせ、俺に目配せして、ちょっと不服そうな顔をした。下を向いている。恥ずかしかったのかな。
「気持ち悪い! こんなの! やめて、紗弥奈、綾薙くん」
この子は苗字で読んでくれるんだ、ありがたい。
「もしかして、恥ずかしかったか? 嫌なことされたくないなら、自分で食べるんだぞ。三食」
「恥ずかしくなんて……ない。でも、男性にこういう事されるの初めてだったから、何とも言えない体験だった」
俯きながら小さな声で?は言った。
良かったのか悪かったのか分からないけど、その後自主的に食べてくれたから良かった。
「ずるい、こおりちゃん。あたしにもあーんして、たっくん」
こおりちゃんって?のことか?
ハチャメチャだな。




