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第3話


「じゃあ、名前合ってたら返事してくれ」


「まずふわふわしてるのが乃愛」


両手を挙げられたので丸印を付けた。


「病んでるのが麻邪実」


「うん」


「それから伊織いおり


「はい」と小さな震えた声でおどおどしながら返事してくれた。

この子が伊織か。一番しっかりしてそう。明るい茶髪で背が高くて、風紀委員とか学級委員長とかしてそう。


「それから君は?」


前のめりになって興味津々そうに話を聞いていた子だ。ミディアムヘアーをストレートに下ろし、日本のJKという普通の雰囲気である。


あたし紗弥奈さやな。よろしくねー」


明るくて活発そうだ。瑞々《みずみず》しくて好印象だ。話が通じそう。


「演技してたお前の名前は?」


「演劇部に所属している愛理あいりでーす! 皆の人気者で学園アイドル、可愛いでしょ? ツーショット撮ろうよ」


「愛理な、分かった」


「ちょっとっ、もう少し私の顔見て? ツーショット、ツーショット」


目立ちたがりやらしい。自意識過剰も程々にしてほしいところだ。


「それでかすみは何処にいる?」


「我を探せたら真の神になれる」

腹からの声で重く、強い声質だった。


「あ、ここにいた」


声でバレた。カーテンの裏に隠れてないで出てくればいいのに。


「霞で名前合ってる?」

一応、聞いてみる。


無視された。


「あの、」


身体に触ると、

「我が見えるというのはそなたの魔力と千里眼も大したものだな」と返された。


「いや、普通に見えるから。この目で」


「そりゃぁぁああっ!」


もう話が通じない。


「霞で名前合ってるな、分かった。丸付けとく」


「我の名は魔王様や魔神様にしか教えてはならない」


中二病すぎて何言ってるのやら。学校でもそんな調子じゃ、置いてかれるぞ。


「それで、そこのお前。服を着ろ、服を」


布団を退かそうとした。いや、見ないように目を逸らしてきてたが、これ以上悲惨になるとは。


「布団を退かすな」

「じゃあ、俺はこの部屋から出るから。その内に着替えておけよ」


「はーい」という元気な声が聞こえてきたので、5分戸の前で待った。


もういいか? と聞いてYesと答えたので見てみると……布団が増量されただけだった。


「着替えてるんじゃ、ないんかーい」


もう恥じらいを通り越して呆れ返っていた。


「この子の洋服は布団なの」

乃愛がそう説明する。


What's?


「洋服は持ってないのか」


「持ってない」


「制服は?」


「ある」


質疑応答が続く。


「じゃあそれを着ろ」


「りょ」


目を離して、部屋を出ようとしながらチラ見したら――


下着を着ずに制服を紗弥奈にパスされ、着ようとしていたのである。

これは不味い。


「下着はないの?」


「うん」


「誰か貸してやれ」


えー

皆、一斉にそう言う。


「だって誰も胸のサイズDの子いないもん。それにパンツは貸したくない」


「そんな事言うなよー」


「たっくんがもう少し性欲を抑えて我慢すればいいだけ。気にしなきゃいいじゃん」


何? 俺が悪いのか……?


制服をノーパンノーブラで着た?はそのまま立った。ぼんやりとした虚ろな目である。


「男性の管理人が来ると思ってなかったから。男の人が入ってくると思ってなかった。ここ、女子だけの居場所だし」

「皆、うちのこと、心が綺麗な人にしか見えない服着てても、布団被ってても責めたりされなかったし。皆、受け入れてくれてた」

「だから、おにーさんが悪い」


と?は持論を語る。それはまるで俺がここのバイトをしなければいいと言われてるそのものだった。


「男の人が来る時もあるんだ。今日だけは許してやる。下着は後日必ず買えよ」


もう透け透けだからブレザー着てほしい。


「それで名前は?」


「うちの? ちひろです、よろしくお願いします」ペコリと頭を90°下げた。礼儀は良いんだな。


露出狂はちひろっと。


で、残る一人が。

存在はいるのだが、名前欄が白紙になっている。寮の管理人の双方にも電話を掛けてみるが繋がらない。これは印刷ミスか?


「あのー名前は」


「名無しです、私には名前はありません」


えっ、そんな事ってある?

本気で名無しという渾名なのか、或いは名前が無いのか、驚いて口が開いたままだった。


自己紹介の幕がもうすぐ閉じるはずなのに閉じれなかった。









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