第38話
乃愛から告白を受けてからというもの、寝れないだけの時間が過ぎていく。俺は確かに告白を受けた。曖昧ではあったが、しっかりとこの耳で聞いた。
もう一日が終わっていた。時計を見れば1:16分。いつまで夜更かししてるのだろう。
女子から告白されたのっていつぶりだっけ。確か小学校の頃か。それからは自分から告白してばっかだ。多分告白された回数よりフラれた回数の方が多い。中学校の頃3年間、付き合ってた彼女は中学の卒業式で別れたし、高2から約1年間付き合ってた彼女は寮のバイトを始める3日前に別れた。もしかすると女に飢えていたのかもしれない。女子寮のバイトを始めたきっかけは時給が高かったから。それもあるが、無意識に女の子を求めていたとも考えられる。
乃愛を抱きしめたい。髪をくしゃくしゃしたい。一緒にお風呂に入りたい。
そりゃダメか。
いやでも巨乳……服脱ぐとどんな感じなんだろう。想像するな俺。想像するな。
ふわふわな髪。髪を触りたい。もふもふ。それに甘い匂い。くんくん。
あー寝れない。
乃愛は俺とキスしたいとか思ってるのだろうか。あの乃愛がだよ! ……まさか。俺はいいけど。
性欲が高まってる。ダメだ。理性を保て……ない。
封を開けたポテチを貪り食べる。食欲と性欲は襲ってくるのに睡眠欲は全然襲ってこない。
こりゃダメだ。
もう秘蔵の睡眠薬でも飲むか。寮に持ってきたほんの7粒の薬。7回分。
薬を飲みに女子専用の大部屋に行く。もう皆スヤスヤと目を閉じていた。告白したのに平常心で寝静まってる乃愛、すごいな。寝るのにどれくらいの時間が掛かったのだろうか。
寝ている子達を起こさないようにそーっと水を入れ、薬を飲む。それから自分の部屋へ戻った。
恋愛感情が芽生えたばかりの女の子っていいよな。
そんな事を考えながらも睡眠薬の効果が効いてきたのか3:00を過ぎた頃、綾薙拓真は眠りに就いた。
朝が来て、大部屋へと向かった。勿論、顔洗いなど済ませ、制服に着替えてからである。
もう既に皆起きていた。
乃愛はせかせかと台所で料理を、他の皆はテーブルを囲んでいた。
「今日は起きるの遅いねー。何かあった?」と紗弥奈が問う。
「いや何も」平然を装った。
見ての通り、俺は寝不足である。欠伸が止まらない。授業中、寝ようと思う。
「もしかして~昨日のことで寝れなくなっちゃった? なんてね」刹那は悪戯に微笑む。
何でお前がそれを知ってるんだよ。二人だけの秘密じゃなかったのか? ひょっとして乃愛がバラしたとか。なわけ。
乃愛は刹那の発言に気づいたのか頬を真っ赤に染めている。
「昨日のことって何だよ。何もねーよ」
「もしかして自殺しちゃうんじゃないかーとか考えたり、悪夢見たりとか。小説の事、覚えてないの。あの小説呪いの小説なんだよ」
「一欠片も無いし、心配ご無用」
俺と刹那の会話を耳にして、乃愛の頬が段々元通りになった。
「もうご飯だよー」
乃愛の点呼で一同集まる。
「あ、ごめ……」
皿を持つ乃愛の指先が俺の手に当たる。
「大丈夫」
「隣座ってもいいか?」
「別に……いい…………けど」
呂律が回っていない。緊張してるのか?
乃愛の隣が一席空いてたのでそこに座った。
「大ニュース!! 今日ね、小型隕石がかすみんの額に命中したの」
「本当か! 麻邪実が言うなら嘘臭くないな」
「やはり今日が崩壊の日だったか……隕石が降ったぞ。痛い」
隕石降ったのにやけにテンション低いな、と思ったら怪我してるのか。
って、え!? どこから!
まさか……
霞の皿の右斜め上に置かれた白っぽい灰色の石。
まさか。俺は立ち上がり、霞が寝ていたとされる場所の天井を見上げる。
「……あ」
壁が破れて崩落してるじゃないかぁ!
霞の所に置かれた白っぽい灰色の石が破れた天井に沢山敷き詰められている。そして床には砂が落ち、散らばっていた。
「たっくん、どうしたの? 真剣な顔して」
どうしたの? じゃねーだろ。よく皆平然と食べてられるな。優等生メンバーまで。
「壁が壊れてたら言えよ! 早く」
「だからと思って大人の人が来るまで待ってたの」
俺は急いで寮の修理専門の業者と女性管理人二人に電話を掛ける。
「電話ならもうしたよ。女性の管理人さんに業者さんに連絡するようにって」と伊織が言った。
「なんだよ……」
「綾薙くんだと頼りないかなって」
頼りない、だって?
「え?」
「だってまだバイトでしょ? 高校生だし」
そうですけど……。何も言えなくなった。
それから床に散らばった砂を掃除した。
「いつ降ってきたんだ?」
話題変更した。霞を配慮し、壁が壊れたとは言わない。
「朝の5時くらい」
「そしたら霞も寝足りないだろ」
コクりと霞は頷いた。
「それで、この石何だ?」
「隕石」
「そうか」
「霞が毎日隕石降ってくるぞーとか言うから本当に降ってきて怪我したんだ。言霊になるからもうあまり言うなよ」
「分かった。もう言わない。今度からは人とお金が降ってくるって言う」
「それはそれで怖いだろ。お金は嬉しいけど」
霞はガーゼにテープを貼り、額を覆ってて、氷の入ったビニール袋で抑えている。本当に怪我してるのだ。
「お大事に、な」
「感謝承る」
それから俺たちは玄関を開け、学校へと出発した。




