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第37話

夜になった今、皆は寝に入っている。風邪を引いたちひろが早々に寝ているのは勿論、殆どの子たちは寝ている。そんな中、起きているのは寮のリーダー乃愛だけだ。


乃愛はチェックシートと寮名簿を書いたり、最後の片付けをしてくれたりなど俺たちの為に頑張ってくれている。


俺は乃愛に感謝と謝罪をしなければいけないのだ。忘れてはいけない。


乃愛は集中してチェックシートにちひろの風邪の事を書き記していた。


そんな中、乃愛が立ち上がった。


今だ! と思った俺は乃愛に声を掛けようとしてみるが、行動が早い乃愛は俺を無視してスタスタとあっちへ行ってしまう。


そして冷蔵庫の前で立ち止まった。


「あのさ、乃愛。謝らなければならない事があるんだ。聞いてくれるか?」


乃愛がコクりと頷く。


「乃愛が一生懸命端正込めて作ってくれたお弁当のタコさんウインナーのせいで女子寮の存在がバレたって言ってごめん。乃愛のせいにしてごめん」

「いつもいつも乃愛のせいにして……」


「いいよ。そんなこと。もう気にしてない」


「口利いてくれないと思ってたから許してくれて良かった」

俺は笑顔で肩を広げる。


「あと手紙もありがとう」

「手紙の返信今するけど、元気で良かった。俺も楽しい学園生活送ってる。皆のお陰で寮に帰って来るのがとても楽しみになった。それは乃愛のお陰でもある」


「こちらこそありがとう」


乃愛は嬉しそうに、にっこりと微笑んだ。


だけど、その後の乃愛の表情が困惑顔で。


「何度も喧嘩ばっかりして本当に反省してる。多分、俺も悪い」


「違うの。全部わたしのせいなの」


「わたし、たくま君のこと好きなのかもしれない」


言えた。言っちゃった。口に出した言葉はもう元に戻らない。


「え、本当か?」

「シリアスな雰囲気に悪いけど好き《《なのかもしれない》》って何だよ。好きかそうじゃないかハッキリさせろよ!」


「分からないの」


乃愛の目から大粒の涙が零れ出した。


ぐすん、ひっく。ひっく。


すすり泣く声が俺の耳にも入ってきた。


「高圧的な言い方が悪かったのか?」


「違う。たくま君といるとドキドキする。バカなわたしは一日中たくま君のことを考えてばかり」


あの天然な乃愛が泣くとは思ってなくて、大変驚いた。しかもかなりの乙女。


「それは嬉しいよ」


「好きな気持ちも分からない。だけどモヤモヤする。この気持ちは抑制できない。好きな人にはキツく当たっちゃう、だからごめんね」


「キツく当たるのは癖なのか……成る程な」


「もう泣くな」


「……だって」


俺は乃愛を抱きしめ、頭を撫でた。


「どうしたらいいの! どうすればこの気持ち、抑えられるの! わたし、おかしくなっちゃうよ……っ」


「抑えなくていいんだ。自分の気持ちは大切にして受け止めればいい。俺も乃愛の気持ちは受け止めるから」


「だってこの寮、異性愛交遊禁止なんだよ。わたし、退去しなきゃいけなくなる」


「そうなのか、今初めて知った」


「だからこんなことしないで。ドキドキするでしょ」


そう言われ、抱きしめてた腕を離した。もう乃愛は泣き止んでいた。


「それでたくま君はわたしのこと好きなの?」


「……それが。寮の中に気になってる子が何人かいて、今一人に絞ってる最中で、それに受験があるから恋愛は出来ない」

「乃愛のことも好きだよ。でも、今は友達として」


「受験か……そうなんだ。寮の中に好きな子何人もいるのは良くないね。それに好きな子が誰なのか気になる」


分かってる、という風に俺は頷く。


「もうこのままの関係で居られない。好きって気持ち伝えたから。早いよね、3日で好きになるとか」


「そんな事ないよ。それに皆には内緒にしとくし」


少し収集がついたのか乃愛は人差し指を立てた。

「たくま君はこれから例え何度喧嘩しても許してくれますか」


「うん」


「キツく当たっても分かってくれる?」


「勿論だ」


「次。たくま君は大学生になったら、わたしと結婚してくれますか」


「それは無理かな」


「なんでー」


「じゃあ、恋人になるのは?」


「それは考える」


「やったー」


「でも恋の意味も知らないんだろ」


「グサッ」


乃愛は冷蔵庫からほうじ茶を取り、グラスへと注いだ。


俺と乃愛は「おやすみ」と挨拶を交わして、乃愛は机へと戻った。

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