第34話
餌をあげる為に蓋を開けたが、じゅるり、と美味しそうな目で見つめる刹那と麻邪実と乃愛がいた。
なので、その三人を掻い潜り餌をあげた。
筒タイプの餌とお椀タイプの餌があったので両方あげようとするが、狙う三人が邪魔で思うようにあげられない。
「ちょっと返して!」
すかさず刹那が奪おうとする。それを高い所へ持ち上げて攻撃を避け、死守する。
筒タイプの餌に気を取られているとお椀タイプの餌が狙われた。
「ちょっと! おい! 食べるな!」
乃愛がスプーンで掬って食べていた。そして麻邪実も。
「乃愛、食べてなかったもんねー」
「うん。食べれて嬉しい」
そのタイプの丸い粒の餌も食べるのか。女子トークしてるどころじゃない。
「皆、魚たちに餌をあげないか? そして、もう皆は食事が済んだだろうが」
「そうだよ。魚たち、餌が貰えるのお腹空かして待ってるんだよ」
「拓真の言う通り」
マトモメンバーの説得のお陰で刹那、麻邪実、乃愛の三人は大人しく水槽を観察するようになった。
「じゃあ、餌をあげるか」
餌をあげると魚たちは我も我も、と言わんばかりに勢い良く食いついてきた。水しぶきがバシャバシャと鳴り響く。
本当にお腹を空かしていたようだ。餌を食べ終えると下へと戻っていく。そしてまた、優雅に泳ぎ始める。
魚を見ていると本当に癒される。もっともっと魚のことを好きになりそうだ。何故今まで水槽の存在に気づかなかったのか。
エンゼルフィッシュ用の餌、グッピー用の餌、金魚用の餌がそれぞれあるらしい。筒の餌がグッピー用でお椀の餌が金魚用の餌だ。寮内の一部の人々はグッピー用の餌が好きらしい。
それよりエンゼルフィッシュと普通の魚を一緒の水槽で育てていいのか? とツッコミたくなる。ダメに決まってるはずなんだが。問題が起きてない事が不思議なくらいだ。
そういえば乃愛と麻邪実、スプーンに口つけてなかったか?
洗わないと……。
それからは普通に餌をあげた後の魚の様子を観察していた。
魚の餌やりを終え、気づけば20:30を過ぎていた。
皆、好きな事をしていた。特に人数が多いのはTVを観る事。丸テーブルを囲いTVをだらだらとお喋りしてたり、無言だったりしながら観ていた。本当に自由で素の姿を見る事が出来て嬉しい。
と、そういえば乃愛にお礼をし、謝らなければいけなかった。例え、自然淘汰のようにスッと怒りや悲しみやバチバチが消えてたとしても。口を利いてくれるようになってもこれだけはきっちりさせないと。
乃愛を見てみるとミシンを使って裁縫をしていた。
邪魔しちゃいけないな、と思ったが気になったので話しかけてみた。
「あの、何作ってんだ?」
「寮で使う三角巾とかエプロンとか、あと制服」
制服っ!?
「制服作ってんのかよ、マジかよ……一から作ってるのか?」
「制服は糸が解れた所とか破れた所の補修」
「なんだ。紛らわしい事言うなよ」
そう言うと乃愛はやっと意味が分かったように頷いた。
「そうか。頑張れ」
「うん」
それにしても乃愛って本当に女子力高いな。嫁にしたいくらいだ。
と、隣の椅子を見てみると霞と刹那が何か書いている。この寮の椅子とセットの机は横に広がる長机になっている。寮には居間の丸テーブルと勉強などに使う長机の二つがある。




