第27話
帰ったらいつものように迎え入れてくれた。
今日は猫耳メイド服ではなく、普通の服装で、だ。
「おかえりなさいませ、ご主人様」と刹那が言う。
「だからご主人様じゃないって言ってるだろ! 奉仕でもしてくれるのか」
「するわけないじゃない」
「だったら言うな」
帰って来てからのカバンの中の整理をして、皆で談笑してたりしてあっという間に2時間くらいが経った頃、部活のあるメンバーが帰ってきた。
もう夕食の準備は出来ている。
「お疲れっしたー」と帰って来たのは愛理と霞だ。
愛理はご存知の通り演劇部。霞は何といってもあのオカルト研究部なのだ。通称オカ研は部員たったの5人。それでいて、不定期で活動している。学校の七不思議、学校で起きた数々の怪現象を解明しているらしい。といっても怪現象なんて起こるはずがない。それを言ったら部が崩壊するから言わないが。たまに廊下にオカ研新聞が貼られてる事もある。
「今日の収穫はミステリーサークルを書いた! みんなで」
それ毎日書いてないか?
あとみんなで校庭に書いてたらミステリーサークルだらけになるからやめてくれ。
しかも部長が霞なのだ。これじゃ部の全員が霞の中二病心に染まってしまいそうで怖い。
「もう夕食の準備出来てるから、テーブルに集まってー」
「はーい」
そうだそうだ。もう夕飯の時間だ。部活組と話してたら遅くなってしまう。
「じゃあ、いただきます」
皆で手を合わせて掛け声をした。
今日のメニューは鯖の味噌煮と野菜炒めと竹輪と味噌汁とご飯だった。和テイスト。
乃愛の作る料理はどれも美味いから飽きない。
「……それで、乃愛の作る弁当から女子寮でバイトしてる事がバレた。大問題だ」
「いぇーい」とはしゃぐ麻邪実。
「いぇーいじゃない」
「わたしのせいでバレたって言いたいの? わたしが悪いの?」
「まあ、そうだな。タコさんウインナー入れたから」
「じゃあもう作ってあげない! 食べないで」
「乃愛は悪くないよ。いつかバレるって言ったじゃん」と麻邪実が言う。
「何でバレるんだ……しかも嫉妬の目と哀れみの目を向けられたんだ。友達との二人きりの秘密にしようとしてたのに……受験があるからいじめられたくない」
「いじめられはしないよ。あと嫉妬は女子に囲まれてるから。哀れみはいわくつきの女子寮だから」と伊織が冷静に話す。
「いじめられたらたくまのこと守ってあげるよ」と紗弥奈。
いじめられはしない、と安心感に包まれた。
「あと何で唐草女子寮の存在、皆知ってるんだ?」
「それは高校附属の女子寮だからじゃない? HPにも載ってるし。いわくつきで有名だよ。だから給料も高いの」
「なるほど。でも全然俺にとってはいわくつきって感じしないけどな」
「それはありがとう」
これで謎は解決できた。だが、まだ心のどこかでいじめの心配が残っていた。友達との距離も変わらなければいいけど。
「これで一緒に登校しても平気だねー」と麻邪実は嬉しそうに言う。
「まあ気が向いたらな。あと顔面偏差値下げろ。美少女に囲まれたら町ゆく人々の目が、うっ。俺の身にもなれ」
「美少女!? えっ。嬉しい、ほんと?」
自覚無かったのか。
「ちが……違わないけど。まあ見た目だけ皆良いよ」
見た目だけという棘のある言葉にも喜んで近づいてくる。
抱きついてきた。
「んー嬉しい」
「ありがとう」
「たっくんもイケメンだよ」
「あたしの顔もっと見て! 美少女なんでしょ」
「まあまあ。皆落ち着け」
乃愛は口を利いてくれなくなった。まただ。もっと感謝したい事、いっぱいあるのにな。俺はただ一人で乃愛との接し方について悩んでいた。
そして、さっきから気になっているのがちひろが微動だに動かない。何かあったのだろうか。
箸が全然進んでないから声を掛けてみる。
「ちひろ、ほら美味しい鯖の味噌煮だよ。さっきから一口も食べてないじゃん」
「ちーちゃんもわたしのご飯不味いって言うの? もういい」と乃愛が冷たい態度を取る。
「乃愛、そういうわけじゃ。落ち着いて」と紗弥奈に諭される。
「ちひろ、さっきからどうしたんだ。学校から帰ってきて様子がおかしいぞ」
「服脱ぎたい」
ちょっと待て、と止めに入る。
「体が熱いの……苦しい」
ちひろはそのまま倒れこんだ。刹那を膝枕にして。
「なんなの、この熱。大丈夫?」
「ちーちゃん、しっかりして」
「すぐ布団ひくよ」
ちひろは応対に答えられなかった。
俺はちひろが心配だ。




