第26話
学校に着いたらすぐに授業が終わった。
昼飯の時間がやってきた。
俺はいつも通り「友達」と食べる。
友達に名前はあるが作者は名付けするのが面倒くさいのだ。ここは友達でいこう。
弁当箱の蓋を開けてみる。すると可愛らしいデザインのメモ帳が入っていた。
そこには『愛情込めて作ったから食べてね。元気にしてる? わたしは楽しい学園生活を送ってるよ。寮に帰ってくるのが楽しみだね』の文字。
こんなの嬉しいに決まってるだろ! 楽しく学園生活を送ってるの文字に安堵していると……
メモ帳を見ながらニコニコしているのがバレたのか、友達は怪訝そうに見つめてツッコんできた。
しまった!? 友達の存在を忘れていた。
「そのメモ何? 誰から貰ったの?」
「ああ……これは、これはっ。食材を覚えておくメモが入りっぱなしだったんだよ」慌てて誤魔化す。
「そうか。珍しいな」
プラスチックの蓋を開けてみると玉子焼き、タコさんウインナー、その他唐揚げやサラダ、そして下の段に白米が入っていた。
タコさんウインナーはマズイだろ。いや、味の問題じゃなくてバレる方の意味合いの問題で。
タコさんウインナーは女子しか作らない。はず。
「お前ってやけに料理格段に上手くなったよな。それに雰囲気なんて一昨日くらいから変わったし」
一昨日くらいから。リアルにドンピシャに当たってるの名推理。あざっす。
乃愛、料理上手だって。褒められてるよ。
そうじゃなくて……! 誤魔化さないと。
「たまたまだよ」
友達が目を逸らした隙にタコさんウインナーを掴む。そして食べる。
ここはセーフ。
2個目。
掴もうとした瞬間、なんとあろうことか滑ってしまった。あらら。
そのまま机の上に転がった。
緊張して手が震えていたのだ。
拾おうとした所、友達の目線は元に戻り、びっくりした顔になっていた。
「……タコさんウインナー」
掴んで勢いよく食べる。見られてしまった事は仕方ない。
乃愛にも寮の事はバレちゃいけないから男らしい弁当でよろしく、と言ったんだけどな。
「拓真、絶対女出来ただろ。普通男子がタコさんウインナーなんて作るか?」
「彼女だよ、ほら。彼女に作ってもらったんだ」
「彼女だろ。いつから付き合ってるんだ?」
「違う。彼女は母親のことだよ。女性の事は彼女とも言うだろ?」
「なんて紛らわしい言い方なんだ」
自分でも言ってから紛らわしいと気づいた。
弁当箱は黒の二段重ねのシンプルなやつだ。自前で実家から持ってきた。中身は乃愛に昨日から作って貰っている。バレないと思っていた。だけど、友達にはタコさんウインナーで察しがついていると思う。
「もう吐いちゃいなよ」
「食材をか?」
自分でも分かりやすいボケをする。
「ちげーよ。抱えてる秘密についてだよ」
「いつかバレるんだからあたしらの関係早めに言った方がいいよ」という麻邪実の言葉が脳裏に過った。
「誰にも言うなよ」
この場の空気が変わった。やけにも慎重かつ真面目なトーンで言った。
「実は2日前からここの高校の女子寮のバイトをしてるんだ」
「はっ。女子寮のバイト!!? それほんと?」
かなり大声で驚かれてしまった。声、大きいよ……秘密って言ってるのに……
「本当だけど声大きい。皆ビビる」
皆一斉にこちらへと近づいてきた。クラス中にバレてしまった。あーあーあ。どうしてくれるんだよ。
「美少女だらけ?」
「可愛い?」
「何年生?」
口々に質問攻めに遭う。
「高校一年生で美少女だらけだけど変人ばかりですー」
嫌々答えた。
「俺もやりてーなー」
「大変だよ? 重労働だし、オススメしない」
「もしかして唐草女子寮ってやつ?」と友達が聞いた。
なんで知ってるんだよ。
「そうだけど」
答えた瞬間、哀れみや同情の目を向けられた。
そんなこんなで騒がしい非日常な昼飯タイムと昼休みが終わり、授業を終え、放課後になった。
帰る頃には綺麗な夕焼けが空一面に広がっていてしんみりとさせられた。




