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ゼフィリーヌドルーアンその6

霊園の駐車場に車を停め、俺は、黄色のバラの花束を抱えた美咲が向かう方向に、黙ってついていった。

言葉が少なくなった美咲の表情からは、その考えが、まったく読めない。

ただ、美咲のしたいようにさせるしかなかったし、今日だけは、それに付き合うと決めていた。

霊園の敷地は、全体が芝生で覆われたなだらかな丘となっており、どういう計算になっているのか、そこここに、墓石が並んだ区画がバランスよく配置されていた。

美咲は、迷うこともなく、ある区画に向かって歩いていった。


同じような花崗岩の墓石が並んでいたが、美咲には、はっきり分かっているようで、目的の場所に立つと、そのまま屈んで、花束から包み紙を剥がし取り、横にして置いた。

鮮やかな黄色が、灰色の墓石の色と対照的に見えた。

両手を併せ、静かに俯いている横顔は穏やかだった。

俺も、手を併せる。


「ごめんね。こんなところにまで、付き合わせちゃって。」


美咲はそう言って、俺の方を見上げた。右手の指を庇うように、左手で押さえているのが分かった。


「手、どうかしたんですか?」

「う~ん。バチが当たっちゃったかな? 黄色のバラなんか持ってきたから。棘が刺さった。」


包み紙を剥がす時に、棘の部分を掴んでしまったらしい。


「大丈夫。すぐに洗うから。」


そう言って、水道のある場所に向かって歩き始めた。

俺も、その後についていった。


蛇口を捻って、流水に指を晒す。まだ、戸外の水道水は冷たそうだった。

鞄の中に、丁寧に折り畳まれた包み紙が入れられているのが見えた。そして、その鞄の内ポケットから白いハンカチを出して、手を拭くと、ハンカチには小さな赤い染みができた。


「少し長めに押さえておけば、血は止まるから。棘の部分は土で汚れているわけじゃないから、問題無いよ。」


心配させまいとしてか、美咲は、説明してみせた。


「お線香って、要らなかったんですかね?」


ふと思い出して、訊いてみた。


「忘れてた。あぁ、それがいけなかったのかも。お線香って、ご飯らしいからね。食べ物の恨みは怖ろしいよ。」


なぜか、おどけた様子で、美咲は笑ってみせた。


「まぁ、いいでしょ。どうせ、月命日には、玉子さんがお線香をあげに来てるんだもん。5月には、法事もあるし。」


美咲は、何かさっぱりとしたような表情になっており、少し伸びをしてみせてから、敷地の出口方向へ向かって歩き始めた。と、突然体の向きを俺の方へと変えた。


「ねぇ、次はいつ? 路上の練習にも付き合ってくれるんでしょ?」


俺は、美咲の脱ペーパードライバーに、引き続き、付き合うことになった。

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