吸血姫と邂逅
「...................ん?」
.......おかしい。
なんで?どういうことだ?
聖十二使徒序列第四位、『金剛』のデューゲン。神器の性能を生かし、凄まじい防御力を持つ面倒くさすぎる敵だったけど、私は頭を使って勝利した。
金槍は未だ形状を取り戻しておらず、あっちで自動修復能力によって徐々に元の形を.......うわなんだあのウネウネした感じ気持ち悪っ!
.......まあそれは置いといて。
槍を手放させた後、私は半月の月の加護によって強化された力をフル活用して、デューゲンをボコボコにした。ついでにあいつが緊急用に持っていた転移用のマジックアイテムも破壊し、逃げられないようにした。
私はほぼ完璧に、デューゲンを壊した。そして最後は、トドメの《極火炎球》で、絶対に蘇生が出来ないように、超火力を用いて燃やしてやった。
.......そう、燃やした筈なのだ。
あの状況で、デューゲンに私の魔法を避ける術なんて、絶対に無かった。
「.......なのに、なんで?」
肉が焼ける匂いがしない。
吸血鬼の五感は、感覚が鋭い種族が混在する魔族の中でも、獣人、竜人に次ぐ性能を持つ。
その鋭い嗅覚が、私に告げていた。『今の魔法で、人間は焼けていない』と。
「.......転移した?いや、あいつは魔法を使えなかった。アルスで見たから間違いない。.......転移のマジックアイテムも破壊したし.......複数持っていた?いやそれは無い、それも全部アルスで確認したし.......」
「リ、リーンさん!」
「.......あ、サクラ君」
もう一人の聖十二使徒の相手は.......終わってるよね、さっきものすごい音したし。
空に巨大な影が現れて、一瞬だけ月の加護が切れたから.......間違いなく、《隕石招来》だろうなあ。
「そ、そちらも.......終わったん、ですね。僕も.......」
「そうだといいんだけどね.......」
「.......え?」
「サクラ君、一応聞くんだけどさ。隕石でハサドを、確実に潰した?」
「え?.......は、はい.......。氷で足を、固定して.......確実に、直撃させたと、思い.......ますけど.......」
サラッとえぐいこと言うなこの子。
でも、それなら、ハサドの死体を見ていないってことにもなる。
何らかの手段を使って、二人して逃げた可能性があるな。
「サクラ君、よく聞いて。もしかしたら、ハサドとデューゲンが生きてるかも」
「ど、どういうことですか?」
「んー、なんて言ったらいいか.......」
「伝え聞くよりも、実際に見る方が早いのではないか?」
「―――っ!?」
「へっ.......?」
私達の背後に.......いつの間にか、三人の男がいた。
そのうち二人はボロボロの満身創痍。気絶して倒れてるけど、どっちも生きてる。
あの姿.......間違いない、ハサドとデューゲンだ。
そして、そいつらを掴んでいる、金髪の男。
あのムカつく、傲慢そうな顔.......見覚えがある。
といっても、直接会うのは初めて。魔王様が見せてくれた映像に、こいつの姿が映ってた。
「まずは初めましてだな、四魔神将」
間違いない、こいつは―――
「ル.......ルヴェルズ・ヒューマンロード.......」
「.......なんで、第一位様がこんなところにいるんだか」
聖十二使徒序列第一位、『神子』のルヴェルズ・ヒューマンロード。
メルクリウス聖神国の主、法皇にして、人類最強の男。
あの二人を助けたのはこいつか。
「.......まさか、デューゲンとハサドをここまで追い詰めるとはな。少々、四魔神将という存在の戦闘力を甘く見ていたか」
そう言って私達をジロジロと不躾に見てくるルヴェルズ。
見んじゃねーよ、死ね。
.......けど、これはまずい。
デューゲンとハサドは死にかけだけど、ルヴェルズは回復魔法が使える。それで全快させられて、ルヴェルズと共に、私とサクラ君に二対三でぶつかってこられたら.......九割以上の確率で、私達は負ける。
デューゲンとハサドは道連れに出来るけど、ルヴェルズは殺せない。
こいつのステータスを天眼アルスで見てみたけど、マジでヤバいもの。
平均ステータス十万オーバー。
オマケに、サクラ君ほどではないにしろ、多種多様な魔法を習得している。
こいつ一人を二人で相手にしても、勝率は二割を切ると思う。
多分、今の段階じゃ、世界規模で見ても魔王様に次ぐ実力者だ、こいつ。
ヨミでもまず勝てない。
満月の月の加護が働いてる私ならワンチャン、といったところ。
嘘だろおい、同じ聖十二使徒上位でもここまで違うのか。
「ふっ.......安心しろ。今日はこの二人を回収しに来ただけだ、貴様らを殺す予定は無い。尤も、魔族に生まれたことを悔やみ、人間への転生のチャンスが欲しいと言うのならば、殺してやるが?」
「.......お断りに決まってんだろ」
「だろうな。まあ、余も暇ではない。今回は四魔神将の戦いをこの目で確かめられたということを、収穫としておくか」
.......この目で確かめた?
「あんた、もしかして.......その二人が私達にぶっ飛ばされるのを、陰で見てたの?」
「ああ。お陰で、お前達のデータを頭に入れることが出来た。この二人には後で褒美を与えてやらねばな」
「.......趣味悪いね、下衆が」
「なんとでも言うがよい。.......第一席の『戦神将』ヨミとやらの戦いも観察しておきたかったが.......この場にはいないようだな」
あっちで軍相手に無双してるだろうね。
けど多分、ヨミの存在を外部からの干渉からも隠す為に、レインさんが軍そのものを濃霧で覆っているはず。この男にヨミがバレる可能性は少ないと思う。
「あちらの軍は.......霧と雷。レイン・フェアリーロードがいるのか。あの妖精の相手は余でも面倒だ。諦めるしかないな」
サラッと二万人もの仲間を見捨てたなこいつ。
随分とドライな性格ですこと。
「ではな、リーン・ブラッドロード、サクラ・フォレスター。次に会う時は.......確実に浄化してやろう」
そう言い残し、ルヴェルズは二人を掴んだまま転移した。
.......パル〇ナの鏡じゃあるまいし、殺しを浄化とか言うんじゃねーよゴミ野郎。
.......しかも、しれっと金槍と巨弓も持っていきやがった!あの槍便利だったから貰おうと思ってたのに!
※※※
「リ、リーン、さん.......よかったん、ですか?」
「ん?なにが?」
「そのぉ.......あの二人に、トドメを.......刺さなくて」
まあ確かに、私とサクラ君が不意打ちすれば、あの二人のどちらかくらいは殺せたかもしれない。
実際、サクラ君はあの二人を殺す算段の作戦を含めた念話を、会話中、私に飛ばしてきていた。
けど、流石にそれはやめておいた。
「.......あのままアイツらのどちらかを殺して、ルヴェルズの気が変わって襲ってきたりしたら、私達じゃ勝てなかっただろうしね。この場では見逃すのが賢明だよ」
「そ、そう.......ですよね。ごめんなさい」
「いやいや。.......でもやばいなー、あの二人は消し炭か肉片にしろって魔王様に言われてたのに.......」
「ふ、二人共、殺せなかったですね.......」
「怒られるかなあ.......でも、あれはイレギュラーすぎでしょ.......第一位が出てくるなんて誰も予想出来ないって。だから大丈夫.......だよね?」
「わ、分からないです.......」
「取り敢えず、戻るか.......。サクラ君、魔力に余裕ある?」
「は、はい。あと.......七割くらい」
これだけ長い時間魔法を連発しても、消費した魔力は半分以下ですかそうですか。
つくづく魔法チートだなあ、この子。
「じゃあ、蘇生魔法の余裕はあるね。よし、帰ろうか。.......ティアナさんを生き返らせてあげなきゃね」
「.......はい!」
部屋の掃除をしていたら、ps2を発見。
熟考コンマ一秒、即座に掃除を中止してテレビに接続、ド〇クエⅤ天〇の花嫁を起動。
やっぱビア〇カだよなあ.......としみじみと感じていましたが、自分の書いているこの作品とのあまりのギャップに、何故か心が痛くなりました。
ミ〇ドラース応援するようなもんだもんね、この作品。