表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/248

賢神将vs巨弓

 ハサドが飛んで行った先に行くと、既にハサドは立ち直っていて、僕に向けて巨大な弓を構えていた。


「.......なんだ、僕の方に来たのは君かあ。リーン・ブラッドロードを殺せれば、勇者の仇討ちをした英雄ってことで、序列が上がったかもしれないのに。これじゃあ、上がるのはデューゲンさんじゃないか」

「.............」

「ああ、でも君も、一応第三席なんだっけ?サクラ・フォレスター。魔王軍最強の魔術師.......君を殺せれば、僕の序列も上がるかもしれないね」

「.......そんなに、序列が、大事.......ですか」

「勿論。聖十二使徒の第一位は、法皇の座が約束されている。法皇といえば、ミザリー様に最も近い領域だぜ?あの御方の声を聞くことが出来ると言われる、唯一の座だ。いずれは、僕がそこに座ってやるのさ」

「.......ティアナ様を、殺したのも.......その、一環、ですか」

「ティアナ?ああ、あのエルフか。魔王軍幹部だって言うからどれほどのものかと思ったけど、他愛なかったね。この弓で、心臓をぶち抜いてやったさ。体はあれ、半分近く消えてたなあ。蘇生は期待しない方が.......」

「《威力超増加付与(エンチャント)重力刃(グラビティブレード)》」

「うおっ!?」


 言い終わる前に、思わず魔法を撃ってしまった。

 .......でも、収穫はあった。ティアナ様の体は半分以上残っている。なら、僕なら蘇生出来る。

 何処にあるのかも、既に探知魔法で捜索済み。そして、転移魔法で既に所定の位置へと送ってある。

 あとは、この男を殺すだけ。


「よくも.......よくも、ティアナ様を!」

「クソッ、エルフ如きが驚かせやがって!お前なんか、僕の敵じゃないんだよ!」


 そう言ってハサドは、その異名の由来となっている神器、『巨弓ダリオン』の矢を放ってきた。


「《屈曲空間(ベンドスペース)》」


 周辺の空間を捻じ曲げ、あらゆる遠距離攻撃を逸らす魔法。

 槍のような大きさの矢も、僕には当たらず、後ろへ飛んでいった。


「なにっ!?」

「《氷結光線(フリーズレーザー)》」

「ぐっ.......!」

「《熱波竜巻(クリムゾンサイクロン)》」

「うおっ.......!ちょ、調子にっ.......」

「《追尾付与(エンチャント)酸の散弾(アシッドショット)》」

「ぐあっ!?」


 あの男が持つ神器『巨弓ダリオン』の特性は、『防御貫通』。だけど、ヨミさんの持つ魔剣ディアスみたいに、生物のステータス的な防御力を無視する訳じゃなく、ダリオンは結界や盾、鎧といった、防御強化の術を透過する。結界神であるフルーレティア様の天敵のような神器。

 けど、さっきみたいに、『逸らす』魔法は効果があるみたい。

 矢は弓を引けば無限に現れるけど、実体を持つまでに約三秒かかる。

 つまり、この男の攻略方法は一つ。


「《極爆炎(グランエクスプロード)》」

「ぐおっ!?ま、待て.......」

「《威力超増加付与(エンチャント)雷球(ライトニングスフィア)》」

「うわああっ!?」


 この男が、()()()()()を与えなければいい。

 一度魔法を撃ったら、即座に次の魔法を発動して、こいつに神器を使わせない。


 魔法の威力を増加させ、必要魔力は抑え、更にあらゆる魔法を簡略化し、発動時間を極限まで短縮する。それが、僕が魔王様から賜った神器、『王杖ハーティ』の力なんだから。


 実際、この杖は凄い。僕ももう、かなりの高位魔法を連発したのに、僕の使った魔力は、精々、限界の五パーセント。

 普通なら、もう十パーセントは使っているはずなのに.......半分以下なんて。

 けど、蘇生魔法はハーティの力を使っても三割近くの魔力を使うから、その分は温存しておかないと。


 その魔力で.......ティアナ様を殺したこの男を、ティアナ様の分も、しっかり、虐めてやろう!


「ふふ.......あはははは!!!《暗黒砲(ダークネスカノン)》!」

「畜生、イカレ野郎め!僕を舐めるなっ.......」

「《効果増大付与(エンチャント)激痛の波動(ウェイブオブペイン)》」

「.......ギャアアアアアアアア!!」


 何故だろう。

 この男に限らず、僕は.......人を追い詰める時の、あのゾワゾワする感覚が、なんとなく癖になっている。

 ティアナ様も同じだと言っていた。もしかしたら、エルフ族の種族特性なのかもしれない。


 もっとだ。もっと、こいつを痛めつけてやろう。


「僕の家族を殺した男.......遠慮する必要なんて、ないよね」



 ※※※



 流石弓士と言うか、この男は僕の魔法を、結構避け続けた。

 腐っても聖十二使徒序列第五位なだけのことはある。平均ステータス二万三千、弓を引くための筋力と、距離をとるための速度のステータスは、三万を超えていた。

 実際、何度か僕の魔法を掻い潜って、神器の弓で殴りかかってきた。

 けど、防御貫通効果は弓そのものにはないらしくて、僕の結界を破ることは出来なかった。


 そのうち、僕が空中爆撃の戦法に切り替えてからは、二度ほど僕から身を隠して矢を放つことが出来たみたいだけど、全て逸らした。

 そんなものでは、僕の魔法は破れない。

 魔王軍最強の魔術師、魔王軍第三位にして、魔力ステータスが十万近い僕を、容易に倒せると過信して油断したのが、あの男の運の尽きだ。


「クソ!クソクソクソぉ!!なんだよあれ、あんなの反則だろ!」

「《穿つ光(ルミナスシューター)》」

「うわあ!.......ぼ、僕は悪くない!あいつが強すぎたんだ!だから、これは.......逃げるんじゃない、戦略的撤退だ!そうだ!」


 そう独り言を呟いたハサドは.......速度ステータスにものを言わせて、一目散に逃げ出した。

 .......フヒヒ、それくらいで逃げられるわけがないのに。


「《次元返し(リターンズ)》」

「よし、これで.......え?」


 周辺の空間を操り、対象者が一定以上離れると、元の立ち位置に戻ってきてしまう、逃亡阻害の魔法。

 リーンさんがこの魔法を見た時、『.......ボスからは逃げられないってこういうことか』と、よく分からないことを言っていた。


「な、な、なんっ.......」

「おかえりなさい。《天炎(ヘヴンリーフレア)》」

「う、うわああああ!」


 何度も逃げようとするけど、その度に元に戻されるハサド。

 本当に聖十二使徒の上位かと疑いたくなる風景だ。


 でも、まだ足りない。

 もっと絶望して、痛みを感じてもらわないと.......ティアナ様の死に釣り合わない。


「《威力超増加付与(エンチャント)水飛沫(アクアスプラッシュ)》」

「《破壊光線(ブレイクレーザー)》」

「《四属性槍(エレメンタルランス)》」


 高位魔法、及び高位化した魔法のオンパレード。

 直撃こそしなかったけど、少しずつ、あの男の命を削っている。


「クソおおお!魔族如きにいいいいい!」

「.......《万年氷(イモータルアイシクル)》」

「っ!?う、動けな.......」


 足元を氷魔法で固めて固定。

 これでハサドは動けなくなった。


「まっ.......待て、待ってくれ!僕を殺していいのか?ここで僕を殺せば、お前の恐ろしさを伝える者がいなくなるぞ!僕を逃がせば、お前には手を出すなと命令しようじゃないか!だからっ.......」

「別に.......僕は、戦いが嫌いとか、そういうのじゃないんです。だから、そういう事は、言わなくていいです。それに.......魔王様に、あなたは殺せって言われてるから。そして、ティアナ様を、殺した、あなたを.......僕は許さない」


 そして、僕は発動する。

 僕が使える魔法の中でも、五指に入る破壊力を持つ、土の元素系最上位魔法の一つ。

 本来は儀式を必要とする魔法であり、僕でも発動に数分かかる魔法だけど.......王杖ハーティが、それをものの数秒で処理してくれた。

 直撃したもののほぼ全てを破壊し尽くす、最高の破壊魔法。

 その名は―――



「《隕石招来(メテオフォール)》」



 瞬間、遥か遠い空から、巨大な石の塊が超速で降ってきた。

 氷で足を固められたハサドは、もう逃げられない。


「.......ちくしょおおおおおおお!この、バケモノがああああああああああああああ!!!!」


 その言葉が終わると同時に.......隕石は、ハサドのいた場所を中心に、地面へと衝突した。

魔法少年サクラ☆マジカ



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 四魔神将3位はやっぱり凄かった サクラくん圧倒的でめちゃくちゃ面白いです
[一言]  ボクと契約して魔法少年になふぐっ(隕石喰らった)
[良い点] リーンの方よりも一方的な展開でサクラくんと王杖ハーティの強さがよくわかりますね。というか相性の問題かな? 序列上位が殺されたことで人間がどんな対応をするのかが気になる… [一言] これから…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ