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吸血姫&元勇者vs界断将

「さてさて.......戦う前に、場所を広げなきゃね。それ」


 フルーレティア様が指を鳴らし.......その瞬間、私達は見た事もない空間に囚われた。


「なにっ.......!?」

「これは!?」

「ここは、私がこの場に作りだした異空間結界。広さが足りなかったから拡張したのよ。月明かりはちゃんと入ってくるし、文句ないでしょう?」


 この人.......私が吸血鬼であることを知った上で言ってんのか。

 今宵は三日月。強化率は二倍.......微妙なところだ。

 満月だったら絶対に負けないのに。


 私は『天眼アルス』の力で、フルーレティア様のステータスを覗き見た。



 ***



 フルーレティア  古竜人  Lv204

 職業(クラス):結界神

 状態:健康


 筋力:42150

 防御:32540

 魔力:43870

 魔防:19820

 速度:22410


 魔法:結界魔法



 ***



 確かに、単純なステータスではヨミやグレイさんに匹敵している。

 けど、二人がかりならまあ、なんとかなる強さだ。

 .......数値だけ見るなら。


「ちょっ.......結界神って.......神級シリーズ!?しかも、レベル204!?」

「あら、なんでそれを?.......ああ、天眼アルスを持っているのね?それ、昔はワタクシが使ってたのよ」


 マジで!?


 神級シリーズとは、『本当の意味でその力を極めた究極の使い手』のみに与えられる、下手をすれば勇者や魔王に匹敵するほどの力を持つ最強の職業だ。

 最強にしか与えられない故に、同時期に二人は存在しない。つまり私達の目の前にいるのは、結界魔法に関してはサクラくんすら優に超える怪物ということになる。


「さてさて.......それじゃあ楽しみましょうか。ふふふ、久しぶりに血が滾るわあ。勿論、手加減なんてしないわよ?」

「そうでしょうね.......《暴風の大槍(テンペストランス)》!」


 まずは小手調べ。

 本当に彼女に魔法が効かないのか確かめる。


「おっと.......!危ない危ない」


 私が放った魔法を、フルーレティア様は辛うじて避けた。

 .............。


 ()()()


 魔法は効かないって話なのに.......なんで?


「.......ねえ、リーン。あの人に魔法は効かないんじゃ?」

「そのはずなんだけど.......魔王様が嘘をつくはずもないし、何か無効化の条件があるとか?」

「ふふふ、今、『魔法が効かないはずなのになんで避けたんだ』って思ったわね?」


 お見通しですかそうですか。


「ワタクシはね、別に魔法が効かない体質とか、そういうわけじゃないのよ。ただ、魔法を一時的に消し去れるだけ」


 .......??

 魔法を、消し去る?


「困惑してるわね。.......答えはこれ。《異界結界(ワールドトリップ)》」


 フルーレティア様がその魔法の名を呟いた瞬間。

 ゴトッ.......という音がした気がした。



 そして、暫く待って.......。

 .......。


「.......何も起きませんけど」

「あら、そうかしら?.......ふふふ、失敗かしらねぇ?」


 そう言ってコロコロと笑うフルーレティア様だが、こっちはそれどころじゃない。

 《異界結界》なんて物騒な名前を呟いたんだから、必ず何かあるはずだ。


「.......ヨミ、これ以上なにか仕掛けられる前に一気にいくよ。身体強化魔法を。.......で、私の魔法が合図ね」

「分かった!」


 さて、行こう!


「《雷連槍(サンダーファランクス)》!」


 十を超える雷の槍が、周囲に形成され.............あれ?


「.......魔法が発動しない?」


 失敗か?そんな馬鹿な。

 私が何度も使った魔法だ、こんな初歩的なミスするなんて。

 そういえば、そもそも、魔法を使う時の魔力が体を巡る感覚も無かった。これは一体?


 .............まさかっ!?


「ヨミ、もしかして、身体強化魔法.......!」

「う、うん.......使えない.......これってもしかして.......」


「あらあら、困ったわねえ。魔法が使えないの?」


「フルーレティア様、これはまさか.......!?」

「そうよ?ワタクシの最上位結界魔法《異界結界(ワールドトリップ)》は、普通の結界魔法とは次元が違うの。最早、結界という枠組みを超えた力。.......即ち、結界内部に、外界とは隔絶された異世界を作り上げる」


 異世界転生者としては、他人事では無い話に聞こえるな。


「異世界の中では、ワタクシたちが生きる世界とは違う法則(ルール)が発生する。基本的には同じだけど、一つだけ。この世界には、『結界魔法以外の全ての魔法を消し去る』という法則が書き加えられているのよ」


 .......なんだそれ!?

 つまり、この結界.......というより異世界では、私達の魔法が一切使えない?

 この人、『魔法が効かない』んじゃなくて.......『魔法を封じる』力を持ってるのか!


「『界断将』.......どういう意味なのかと頭を悩ませてましたけど、そういう事でしたか」


 世()()ち、別の空間.......自分の有利な領域に閉じ込める。故に『界断将』。

 全ての魔法使いにとって、天敵のような人だ。


「他にも、『魔術師殺し』なんて呼ばれたこともあったわね。戦場では、他の魔族の子達の魔法を邪魔しないために、この結界を()()()()()()()()。それで、ワタクシに魔法が効かないなんて話が出回ったんだけどね」


 そりゃ、この超高ステータスで魔法も効かないとか、悪夢以外の何者でもないわ。


「リ、リーン、どうする?ボクが斬りに行こうか?」

「.......落ち着いて。よく考えて、神器の特性はそのまま残ってるはず。私がアルスでサポートするから、ヨミは普段通り戦って」

「分かった!」


 天眼アルスの特性、『未来予知』と『読心』を使えば、月の加護がない私でもある程度戦えるはず。


「作戦は決まった?.......じゃあ行くわよ」


 そう言った瞬間、私の目に、フルーレティア様が瞬時に私の目の前に現れ、私の体を貫き、私から血がドバっと.......


「.......うわっとっ!?」


 という、未来が見えたので、慌てて飛び退いた。

 直後、一瞬で距離を詰めてきたフルーレティア様が、コンマ二秒前まで私がいた場所に貫手を放つ。


「ふーん.......自分が使っていた神器に言うのもあれだけど、厄介ねえ、天眼アルス。.......この勝負でワタクシが勝ったら、それ、ワタクシに返してくれない?」

「勘弁してくだ、さい!」


 たたらを踏みながらも、なんとか後ろに下がりながら追撃を躱す。

 すると、一瞬の隙を突いて、ヨミがフルーレティア様の背後に回った。

 そしてそのままディアスを抜き、腕を.......


『《反撃結界(カウンターバリア)》』

『っ!?がっ.......』


 .......今のはっ!?


「ヨミ、ダメ!下がって!」

「!.......ふぅ」


 セーフ.......未来予知が無ければ、ヨミの腕が斬り飛ばされてた.......。


「あらら、チャンスだったのに。それにしても面倒ね、リーンちゃんのサポート。ヨミちゃんとの息も凄く合ってるし.......厄介だわ」


 そりゃどうも。

 私とヨミの仲ですもの。


「このまま、月の加護が働いたらさらに厄介になるだろうし.......仕方がないわね、リーンちゃんから先に潰すわ」

「っ、させない!」


 瞬間、ヨミがディアスを振る。

 未来予知には.......ダメだ、フルーレティア様が避けてる。

 伝えようにも、念話が使えない今じゃ、フルーレティア様にも指示が聞かれる!

 結局、ヨミの剣は当たらず、フルーレティア様は普通に避けた。


「ぐっ.......!」

「ふふふ.......さて、リーンちゃんを早めに倒しておかないと。ヨミちゃんは暫くこれと遊んでて頂戴。《解放(リリース)》」


 フルーレティア様がそう呟くと、ヨミの近くに大きな結界が現れ.......そして中から、巨大な、虎のような姿の魔獣が現れた。


「なっ.......なに、これ.......!?」

「私の技の一つでね.......私は、結界魔法で封じた物を、目に見えない程極小に小さくして、そのまま保管しておけるの。.......その魔獣は捕らえるのに苦労したわ.......頑張って倒してね?死にそうになったら流石に助けてあげるから」

「ま、待て.......うわっ!?」


 .......ヤバい。

 ヤバいヤバいヤバい!

 ヨミと分断された!?


「さて.......これで一対一ね、リーンちゃん。月の加護が発現するまで耐えきれるかしら?」


 そう言ってフルーレティア様は、竜人なのに悪魔のような顔を浮かべた。

この人どうやって倒せばいいんですか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] ……今までの戦った相手の中でもダントツで強いなぁ(魔王様はおいといて) どうやってこれを切り抜けるのか気になる! ……ヨミの職業が神級シリーズに目覚めて 「どんなに硬い結界でもそれごと切っ…
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