吸血姫の復讐
お待たせしました皆様。
待ちに待ったこの時でございます。
「まっ.......待ってくれ!待ってくれよ!な!?」
ん、なんだ?
「お、お前は魔王軍の幹部なんだろ!?だったら、俺を殺して手柄を上げたいって気持ちは分かる!だから、取引しようじゃねえか!俺を死んだことにして、逃がしてくれ!手柄はお前に渡って、俺は死なない!ウィンウィンの関係だろ!?」
.............はあ?
馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけど、これ程とは。
「.......あのさ、それをして私になんのメリットがあるの?あんたをここで殺しても私に手柄が渡ることには変わりないし、むしろこの場で生かしておいた方が後々面倒じゃん」
「そっ、それは.......!そ、そうだ!俺達六人、魔王軍に寝返るってのはどうだ!?勇者の力が手に入るんだ、悪い話じゃないだろ!?」
「アヴィス、流石!良いアイデアじゃん!そ、そうだよ!それなら文句ないでしょ!?」
「おら、どうだ!?これでいいだろ!?」
.............ついにここまで腐ったかこいつら。
いや、違うな。元々このレベルで腐ってたって言うのが正しいか。
私は人間が嫌いだ。嫌いで、大嫌いで、見ただけで反射的にぶっ殺したくなる。
けど、一つだけ。この世界において、魔王軍に下ることによって利益を得ようと考えたり、命を拾おうとする人間が一人もいないことだけは、辛うじて認めていた。
.......けどこいつらはどうだ。
周りが助けてくれると信じ、手伝ってくれと言われたら反抗し、助けがなくなったら命乞いして、寝返りすら提案してくる。しかも取り巻き共に関してはプライドだけは高くて、命乞いしてるのはそっちなのに上から目線。
資源リサイクルが効くだけ産廃の方が幾分かマシな、ゴミクズ共だ。
「.............あはは」
「え.......?」
でも、なんだろう。気分が良い。
ああ、そうか。あいつらが.......かつて私をさんざんいたぶってくれやがったクソ共が。
こんなみっともなく、私に命乞いをしているのが、たまらなく清々しいんだ。
「あははははは!!あははははははは!!.......あーあ、笑った笑った。で、魔王軍に入りたいんだっけ?」
「そ、そうだ!いやー、俺達も人間はおかしいって思ってたんだ!どこに行ってもミザリー様ミザリー様!狂信ってレベルじゃねえよ!な、皆もそう思うだろ!?」
そのアヴィスの言葉に、取り巻きの全員が一斉に頷いた。
へえ、なかなか機転が効くじゃん。人間の狂信に気づいた人間ってのは、ヨミ以外には今までいなかった。
かつて別の世界を経験していた転生者だからこそ出来る発言。魔王軍にとってもポイントが高いだろう。
相手が私じゃなければ。
「あはは、みっともないねー」
「な、なんだと.......?」
「みっともないって言ったんだよ。勇者としてのプライドとか無いの?あんなに見下してた魔族に、頭下げて仲間に入れてくださいって.......歴代の勇者の中で一番情けない醜態晒してんじゃない、今?」
「てめぇ.......」
「あ、一応言っとくと、答えはノーだよ?あんた達は、魔王軍に相応しくない。それは私がよく知ってるからね」
「ああ!?あんたがあたしらの何を知ってるんだよ!?」
「あーもー、煩いなあ.......そのちょっとでも気に入らないことがあると怒鳴る癖、前世から本当に変わらないよね、あんた」
「うるせえ、あたしの勝手.......だ.............ろ...................?」
「.............おい。お前.......今、なんて.......」
「私があんたらの何を知ってるかって?質問に答えてあげるよ。とある女の子のクラスメイトに対して、執拗に痛めつけたり、お金を取ったり。下着姿を校内でばらまいてたこともあったね.......そして挙句の果てには、そのクソな性格を神に利用されて、ガス爆発まで起こした」
「覚えてないなんて言ったら.......転生した事を死ぬほど後悔させてやるよ。まあ、覚えてても後悔させるけどね。.......ねぇ、黒田クン?」
「お、おま、お前、お前はっ.......まさか.......!?」
「取り巻きの奴らも久しぶりー。根元さんに.......島野君、岡澤君、水谷君、後藤君だったよね?あはは、私ってば本当に幸運だなあ!かつて、私を散々な目に合わせてくれた面子が、最初から全員揃ってるなんてさあ!!」
「せ.......千条.......?千条なのか.......?」
「そうだよぉ?かつて、千条夜菜って名前だった.......お前らがいじめていた、私だよぉ?」
「う、嘘、でしょ.......?」
「私が貴方達の前に現れたのは、手柄を貰うためじゃないんだよ。.............理由は分かるよね?」
「な、なんで.......なんで、人間のお前が、魔族に加担して.......」
そこまで言った取り巻き.......島野の足を、私は太ももの辺りで踏みにじり、そのまま踏み砕いた。
「え?.............ぎ、ぎゃあああああ!!!ああああ!!!お、俺の足っ、足がああああああっ!?」
「お前今なんつった?私がなんだって?人間?私が人間だと?」
「ひっ、ひぎっ、があっ、ひいっ.......」
「.......ああ、ごめんね?そういえば言ってなかったね。.......私はね、人間に生まれ変わる選択肢がなかったんだよ。だから、代わりに吸血鬼に転生した。リーン・ブラッドロード、それが今の名前なんだぁ。ほら見て?赤い目してるでしょ?」
「ま、待ってよ千条!ぜ、前世では悪かったよ!あたしもほら、色々とストレス溜まってたせいで、ね!?だからっ.......」
「だから、私をいじめて発散してた?.......ふざけんなよビッチ」
「ひっ!?.......や、やめて。やめてやめて!!ぎゃあああああ!!!」
「どうしたのー?貴方だって私にしてたじゃん、暴力。じゃあ私が振るったって文句は言えないよね?つか、騒ぎすぎでしょ。腕引きちぎっただけじゃーん」
ああ.......なんて素晴らしい気分だろう。最高だ。
今まで、こんなに充実した気分になったことがあっただろうか。
取り巻き連中をいたぶっただけでこれだったら.......黒田はどうなんだろう?
「さて、黒田君」
「ひいっ!?」
「もう満足したでしょ?前世では十七年、今世で十三年。沢山の人を不幸にしたにも関わらず、誰にも裁かれない勝ち組人生。.......そろそろさあ、貴方が不幸にした人間に、報復されてもいい頃だと思わない?思うよね?」
「や、やめてくれ!謝るから!土下座でもなんでもするよ!だから、頼む!俺を.......」
ちゃんと手順通りに痛めつけないとね。
まず、左手かな。
「助け.............ぎゃあああああああ!!!痛っ、痛いいいいいいいい!?」
「ぶっ.......あははははは!!あははははは!!いい叫び声上げてくれるじゃん!!これだよ!お前のこの声が、ずっと!!ずっっと聞きたかった!!最っ高!!」
「て、てめぇ.......調子乗んじゃねえぞ、クソアマあああああああああ!!」
取り巻きの一人、未だ無傷の水谷が特攻してきた。
せっかくいい気分だったのに.......。まあ、いいか。お楽しみは最後に取っといて、こいつで先に遊ぼ。
「死ねぇぇえ!.......え?」
「ねえ、どうしたの?私を殺すんじゃないの?ほらほら、やってみなよ。あれぇ?剣折れちゃったね?返してあげるよ.......ほらあ!」
ザクッ
「ひぎゃああああっ!?」
「ほら、もっと叫んでよ!私が受けた仕打ちに比べて、採算が合わないんだからさあ!ほら、ほらあ!」
「ひぎっ、ぎゃ、ぎゃああ、やめ、やめて.......やめ.......あああいいいいあああああ!!!」
「ああ、そうだ.......ちゃんと自己紹介しないとダメだよね。ごめんね、再会が嬉しくて、ずっと忘れてたよ.......」
絶望したような顔で私を見る黒田達に向けて.......私はとびきりの笑顔で、自己紹介をしてあげた。
「私の名前はリーン。魔王軍四魔神将第二席、『鬼神将』リーン・ブラッドロード。.......強さだけなら、魔王軍のナンバー3、って言えばわかってくれる?.......お前らのちゃちな攻撃なんて、ダメージにすらならないんだよ。.......さて、今世での実力の差が分かって貰えたことだし.......続きしよっか♪」
.......私の自己紹介を聞いて、その場にいた全員の顔が、最早青を通り越して白くなった。
さあ、お楽しみはこれからだ。
もっと、もおっと、痛めつけてあげないとね♡
続きマース!
書くの楽しぃぃぃぃイイ!!!
もっと酷い目に合わせてやろーっと!!