吸血鬼少女と誕生日
お父さん曰く。
お父さんの異様に高いステータスは、種族『吸血鬼王』と、職業『格闘王』の影響で、能力に大幅な補正がかかってるんだって。
一定以上の知恵を持つ種族に平等に与えられる神の恩恵、《ステータス》。
その力が上昇する要因は、大きく分けて4つ。
レベルアップ。トレーニング。そして、職業選択と種族進化だ。
レベルアップは読んで字のごとく。トレーニングは、体を鍛えたり、魔法の知識を蓄えることで能力を上昇させるというもの。
職業選択は、簡単に言えば『能力に偏りを与える』もの。こう聞くと悪いことみたいに聞こえるけど、今の私みたいに『未定』のままだと、大して強くない器用貧乏になってしまう。だから、職業選択によって自分の進む道を決めるのだ。
選べる職業は人によって様々。つまりは才能だ。
『農民』とかのしょっぼいのしかない人もいれば、『魔術師』『戦士』みたいな戦闘職の人、果ては『勇者』『魔王』とかね。
で、その職業で敵を倒しまくったり、なんらかの条件をクリアしたりすると、上級職が解放されたり、別の強い職業が生えてきたりする。
種族進化は、これは正直、普通は縁のない話だ。
ある一定の条件を達成することによって、種族を上位のものへと昇華させる.......ってものなんだけど、この条件ってのが『一種族の王になる』とか―――お父さんがこの類―――『一度も敗北せずにレベルを100まで上げる』とか、きっつい条件ばっかり。普通に生きていたら、まずこれは起こらない。
ちなみに、お父さんの『格闘王』は超がつくほどの上級職。
解放条件は、職業『武闘家』を選択し、一定以上の格上相手を倒すこと。
え、なんでこんなこと知ってるのかって?
聞いたからだよ、目の前の父に。
さっきから、『どうだパパすげーだろ褒めろ褒めろ』みたいな雰囲気だしてる、このおっさんに聞いたというか、勝手に話してきたというか。
いやまあ、吸血鬼は外見年齢が10代後半から20代前半で固定されるから、お父さんの見た目も20代なんだけどさ。でもこの人、聞いた話じゃ200歳を超えてるらしいし。
※※※
いい加減褒めろアピールが面倒くさかったので、散々褒めちぎってお父さんを悶えさせた後。
だんだんと慣れてきた体を使って、しばらく動き回り、その足で家まで戻ってきた。
お父さん.......は、ダメだ。まだ幸せそうな顔してる。親バカここに極まれりだなこの人。
仕方ないから放っておいて、さっさと家に入り.......
「ただい.......」
「「「「リーン、誕生日おめでとう!!」」」」
「.............はえ?」
家の中には、ご近所さんや友達が集まっていた。
これはいわゆる.......サプライズというやつなのだろうか。
「えっと、これは?」
「リーンちゃん!えへへ、ビックリした?」
「1か月も前から準備してたんだぜ」
「へへ、すげえ顔してら」
そう私に言ってきたのは、この里の年少組.......いつも私と遊んでる、カナちゃんとフレッド君、リウス君。
「.......私の、ために?」
「もちろんだよ!」
.......そう、か。
私のために、お祝いしてくれるんだ。
前世の私を思い出す。
前世の両親は共働きで、しかもどちらも、絵に書いたような仕事人間だった。
家族より仕事という感じで、もちろん私の誕生日を祝ったりしてくれなかった。
だから、私の誕生はもっぱら、自分でケーキだけ買って、ペットのヨミと戯れていただけ。
「.......リ、リーンちゃん、泣いてるの!?」
「.............え?あっ.......」
ヤバい、いつの間にか涙が出ていた。
もちろん、今までの誕生日も皆お祝いしてくれたけど、こんな大規模にお祝いしてくれたのは初めてだ。
それに、3歳までは前世の記憶がなかったし、昨年は記憶が戻った直後で混乱してたから、『今の私』がちゃんとした誕生日を迎えたのは今回が初。
それをここまで盛大にやられてしまったら.......ね。
「ううん、大丈夫!みんな、ありがとう!」
そう言って思わず、カナちゃんを抱きしめてしまった。
「あっ、カナだけずるい!」
「俺も俺も!」
すると、フレッド君とリウス君もなぜか寄ってきた。
私はもちろん、2人も引き寄せて3人いっぺんに抱きしめた。
まあ、腕の長さが足りなくて、抱きしめると言えるか微妙な感じにはなっちゃったけど。
えっ、男を抱きしめるのに抵抗はないのかって?
よく考えてみてよ、前世の私を含めるなら私は二十歳超えてるんだよ?近所の少年にスキンシップしたって別に不思議ではないじゃん。仮に含めないのだとしたら、そしたら私は5歳児。パーソナルスペースなんてあってないようなもんでしょ。
なので私は、遠慮なく抱きしめ続けた。
※※※
「そうそう、リーン。早めに『職業』を決めてしまいなさい」
私の楽しい楽しい誕生日会が終わり、みんなが帰ったあと、お母さんがそんな言葉をかけてきた。
「職業.......かあ」
「職業は1度決めてしまうと、それを極めるまでは変更出来ないからな。慎重に決めるんだぞ」
『職業熟練度』みたいなのがあるんだろうか。
で、それをMAXにするまでは『クラスチェンジ』的なことを出来ないと。不便だなー。
私は「ステータス」と呟いて、出てきた窓の、職業の欄をタップした。
***
《選択可能職業》
武闘家、魔術師、神官、盗賊、農民、蛮族、呪術師、付与術師、踊り子
***
.......ふむ、9つか。この中から選べると。
.......っておい、蛮族ってなんだ、蛮族って。
「お父さん、いっぱい出たんだけど、どれがいいと思う?」
「ふむ、みせてみなさい。.......おおお、9つも職業があるとは!流石だぞリーン!」
「.......うん、それはいいから。どれがオススメ?」
「そりゃ勿論、武闘家だな。相手が武器を持って襲いかかってくるのを、正面から素手だけでねじ伏せる!.......かっこよくないか?」
お父さんが200歳を超えてなお、中二病を卒業しきれていない件について。
しかも、女の子にかっこよさを求めんなし。
「.......お母さーん、お父さんが役に立たなーい」
「ぐはあっ!?」
「いつもの事じゃないの」
「ぐふぅっ!?」
Lv92の吸血鬼王、家族の口撃によって地に伏せる。
あ、本気で落ち込んじゃった。でも若干構ってちゃんアピール入ってるのがめんどくさいからほっとこう。
「さて、ちょっと見せて。.......んー、選択肢が多いのはいいことだけど、多すぎても困り物ねえ」
「とりあえず、農民、蛮族、踊り子はないよね?」
「そうねえ。あとは.......呪術師も微妙ね。名前はかっこいいけど、神官系の聖職者が相手だとほぼ終わりだし」
そりゃそうだろうな。
呪いかけても、浄化されるだけだろうし。
「んー、難しいところねえ。付与術師は結構オススメだけど.......でも魔術師と神官も捨て難いし.......」
「.......ねえ、職業って今すぐ選ばなきゃいけないわけじゃないんだよね?」
「ええ、そうよ。未定のままにしておけば、いつでもセット可能。1度決めるとしばらく外せないけどね」
「うん、だからさ、しばらく決めるのはやめとくよ。じっくり考えて、それから決める」
「あらそう?.......貴方くらいの年頃だと、はしゃいでネタ職業を選んじゃう子も少なくないって聞くのに。我が娘ながら、大人びた子ねえ」
そりゃまあ、前世の記憶あるからね。
「じゃあ、そうしなさい。ちゃんと悔いのないように選ぶのよ。.......あと、あそこで一向に構って貰えなくて落ち込んでる人に、仕方ないから声掛けてあげなさい」
お母さんに言われて振り返ると、お父さんが膝を抱えて蹲ってた。
マジかよ、200歳越えて傷心アピールとか.......いや違うわあれ、しばらく傷心アピールしてたけど無視されて普通に落ち込んでるやつだ。我が父ながら、なんてめんどくさいんだろう。
.......仕方ないので声をかけて慰めてあげたら、泣きながら抱きつかれた。
だめだこの親バカ、早くなんとかしないと.......
所用により、明日の投稿はお休みします。
次回は月曜日投稿です。