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吸血姫vs聖十二使徒×3

 四魔神将発足から二ヶ月程が経ち、新たな仕事環境にも慣れ始めた頃。まあ、仕事環境って言っても幹部の時より戦闘が増えて書類が減った程度の違いだけど。まあとにかくその頃。

『その報せ』は、突如私の元へ舞い込んできた。


 ―――勇者パーティの現在地を確認。


 戦場で人間殺戮バカンスを楽しんでいた私は、その報せを聞いてすぐさま魔王城へ戻った。


「魔王様、勇者を見つけたって本当ですか!」

「落ち着け。座れ。水を飲め。.......確かな情報じゃ。四魔神将が発足した頃から、徐々にそれらしき人物を見たという報告は上がっていたのじゃが、イマイチ確証が掴めなくてのう。じゃが今回は確かじゃ。ティアナが一戦交えて、本物と確信できた。そうじゃなティアナ?」

「はい、間違いございません。情報と同じ程度の強さ、取り巻きに加えてS級冒険者四名、更には聖十二使徒を三人目撃致しました。私と準幹部複数人で戦い、逃げられましたが.......」

「いや、十分じゃ。さて、この件に関しては、先の決定通りリーンに一任する。良いんじゃな、リーン?」

「はい。ああ、一つだけ。転移阻害結界を張るために、サクラ君を貸していただければ」

「わかっておる。すまんな、時間がかかって.......というのも、今回は勇者の影武者が複数おったからのう」

「影武者?」

「先代.......ヨミの時の失敗を踏まえ、カモフラージュしようとしたんじゃろうな。じゃが、転移で逃げられこそしたが、その程度でティアナの感知能力は凌駕出来ぬ。完璧に捉えたぞ。.......頼むぞ、リーン」

「お任せ下さい」



 ※※※



 サクラ君を連れて転移した先は、旧アルヴェラ王国跡地近くの平原。

 私が蹂躙した国の首都、そのすぐそばだ。


「じゃあサクラ君、お願い」

「わ、分かりました.......《完全なる(パーフェクトディ)次元封絶(メンションロック)》」


 張っている間はサクラ君の魔法発動に対するデバフがかかる代わりに、ほぼ破壊不能と言えるほど強固な力を持つ転移阻害結界。

 それを勇者の周囲に展開してもらった。


「.......ありがとう、サクラ君。じゃあ行ってくる」

「は、はい.......ご、ご武運を!」


 .......さあ。

 いよいよ、対面だ。あの男に。

 現在時刻は、午後五時。もうすぐ冬だ。日も殆ど落ちている。丁度いい時間。

 今夜は.......半月か。いいね。満月だと、加減が難しくてすぐに殺しちゃうし。


 さあ、行こう。前世からの借りを、数十倍にして返してやる。



 ※※※



「おい、なんだよこれ?」

「これは.......転移阻害結界!お気をつけください勇者様、恐らく幹部がおります」

「おいマジかよ.......あのティアナってエルフの女か?」

「分かりません。ですがご安心を、我々聖十二使徒が、命を賭してお守り致します。.......結界の破壊に力を注げ」

「分かりました」


 そんな声が聞こえてきた。

 あはは、サクラ君の結界を破壊とか、無理に決まってるのに。


「そんな無駄な努力するくらいなら、ちょっとでも長い時間生き残るために戦った方がいいと思うけど?」


 一応助言してあげた私ってば優しいな。


 次の瞬間、目の前の人間.......総勢十三人、全員が戦闘態勢に入った。

『天眼アルス』の力で、全員のステータスを盗み見る。


 .......弱いなー。

 四魔神将やレインさんに比べたら雑魚だ。

 一応警戒すべきは.......聖十二使徒と勇者アヴィス。


 序列第八位『蛇拳』のベルザド。

 序列第九位『強人』のルーカス。

 序列第十位『天鎧』のスーティ。


 強いといえば強い。平均ステータスは全員1万超えてるし、職業も全員『王級シリーズ』の格闘王、付与術王、重装王。

 けどさあ、私にその程度で勝てるわけないよね。


「.......貴様、何者だ」

「別に名乗る必要ないし.......あんたらに用はないから、とっとと死ね」


 先手必勝。

 私は真っ先に、重装兵であるスーティの元へ迫った。


「なんっ.......!?」

「ほい」


 不意打ちの蹴りで決着.......と思ったけど、予想外にスーティは防いでみせた。.......甘く見すぎたか。

 けど、彼女が装備していた盾は粉々に砕け、更に吹っ飛んだ。


「スーティ!?」

「馬鹿な、あの盾を一撃で.......?」

「間違いなく幹部級だ!S級冒険者と勇者様達も、加勢を!」

「はあっ!?お前ら聖十二使徒.......人間の守護者だろ!?だったら人類の希望である俺を守れよ!」

「そーだそーだ!あたしら守れないで、何が守ってみせるだよ!」

「ぐっ.......!」


 うわー、前世と何も変わってない。

 特に、あの、アヴィス.......黒田に引っ付いてるクソ女。今世での名前はアメリア・スーランだけど、確か前世では.......根元星(ねもとキララ)だっけ?キラキラネームだったから覚えてる。

 黒田の金遣いにすがって、色々と.......そう、本当に色々とやってたビッチだ。私からお金を巻き上げてたのも、主にこいつだった。後で絶対殺す。


 で、動かない勇者一行と違って、S級冒険者達はすぐに動いた。

 人数は四人。すぐさま散開して、私を囲おうと.......


「目障りだから死ね。《誘導(ホーミング)付与(エンチャント)月光線の雨(ルナティックレイン)》」


 吸血鬼同様、月の満ち欠けによって威力が増す闇系統魔法。

 超高密度の月光を連想させる光線が、私の周囲へ降り注いだ。

 暫くは避けていたけど、誘導性能を付与しておいた私の光線はどこまでも追尾する。

 最終的には、一人を除いて全員光線に全身を貫かれて死んだ。一人はまあ.......あえて生かした。


「.......は?」

「な、なんなの?何なのあいつ!?強すぎでしょ!?」

「おい、マジかよ!?どうすんだアヴィス!?」

「こんなんがいるなんて聞いてないぞ!」


 あーもー、転生者連中が耳障りだなー。

 心配しなくても、聖十二使徒を殺したらちゃんと殺してあげるから。


「うおおお!喰らえ、《蛇手の連拳》!」


 その声に振り向くと、第八位のベルザドが自分で名付けたのであろう技名を叫びながら、私に飛びかかってきた。

 うわー、こいつ痛い。存在が痛いから死んで。


「ルーカス!」

「おう!《付与(エンチャント).......》」

「させるか」

「ぐはあっ!?」


 おっと危ない。

 付与魔法を使われるのは流石に面倒だ。


「クソっ、なんなんだこいつは!?」

「落ち着いてベルザドさん!私がっ.......」


「もういいや。聖十二使徒はメインディッシュじゃないし、序列下位じゃ殺してもぶっちゃけ大した意味は無いから、一気に殺そう。《紅炎の襲撃(プロミネンスレイド)》」


 《紅炎の襲撃》。太陽の上層大気で突出する、紅炎(プロミネンス)を象った炎の元素魔法。

 摂氏八万度の超高温ガスを、私が狙った所に発生させることが出来る。

 ただし、燃費が悪すぎて、半月以上の月の加護が働いてる状態じゃないとマトモに使えない。

 なお、夜の種族である吸血鬼たる私が、太陽の魔法を使ってもいいのか、という質問は受け付けない。


「まあ、序列八位から十位じゃこんなもんか。.......ってあれ?」


 第十位.......スーティは生きてやんの。

 全身爛れて大火傷負ってるけど、生きてる。まあ、曲がりなりにも重装王.......防御系職業の超上級職か。


「あ、ああ.......ぐぅ.......」

「これで死んでれば楽だったのに。固すぎるってのも困りものだねぇ.......」

「き、貴様、には.......必ず.......み、ミザリー、様の、天罰.......が.......」

「あっそ。あんたはこのまま放っておくよ。熱硬直で殆ど動けないみたいだし、このまま苦しんで死んでもらった方が面白そう」


 さて.......じゃあ。メインディッシュといきますか。


 そこでガタガタ震えてる勇者アヴィス君と、その取り巻き諸君?

ぶっちゃけ、聖十二使徒の下位は今のリーンにとっては雑魚です。

半月(三倍)の時どころか、月の加護が働いてない時ですら、二、三人程度なら互角以上に戦えます。

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