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吸血姫と街殲滅

「では、皆さん。結界術師が結界を破壊次第、突っ込んじゃってください。中にいる人間は、目に付いた端から殺して構いませんので!」

「リーン様、捕虜などは如何なさいますか?数人捕まえておきますか?」

「いらないです。殲滅してください。一匹残らず。.......まあ、漏らしても気負わないでください。私が出向いて殺しますから」


 私の命令に魔族達は一瞬呆けたが、次の瞬間には咆哮をあげてくれていた。

 まあ、呆けるのは当たり前だよね。普通、余程のことがない限り、殲滅の指令なんてでないわけだし。

 けどね、それは普通の戦争の場合。相手の言うことを無理矢理聞かせるための手段の場合の話だ。

 私達の最終目標は人類の絶滅。根本が違う。


「.......リーン様、連絡が入りました。いつでも結界破壊が可能とのこと」

「了解です。じゃあ、破壊しちゃってください。.......はい、全軍突撃!四方の門から囲って、袋叩きにしてください!」


 結界が破壊された瞬間、あらかじめ各門に五百ずつ待機させていた魔族の皆さんを突撃させた。

 吸血鬼の視覚と聴覚が、情報をくれるけど.......


 いやあ、正直笑いが止まらないわ。


 阿鼻叫喚、地獄絵図。爆発で多少犠牲が出ても、人間共は数的には圧倒的に多いはずなのに、それがなすすべ無く殺されていく。

 多分、爆破した捕虜の何人かが、付与術師の所に行ってたんだな。それで爆発に付与術師を巻き込んで、人間の強化が切れたんだ。

 元々の優位性を取り戻した魔族達は、一方的に人類を蹂躙していく。


「.......さてと。じゃ、私も出てきます。指揮は多分シェリーさんの方が上ですし、私も暴れた方が効率がいいですから」

「かしこまりました、いってらっしゃいませ」


 そして私は、煙と火と血が混合する、人間共の街.......()()()場所に突っ込んだ。



 ※※※



「.......あー、これ私来る必要なかったかも」


 魔族への被害は僅か、対して人間共は被害甚大。

 煙で視界が悪い状態で、目がいい種族.......人馬族や竜人族なんかが、関係なしに人間を仕留めていってくれているので、実に効率よく人間が狩られていく。


「仕方ない、逃げようとしているやつを優先して殺していって.......ん?」


 あれ、一箇所だけおかしいところがあるな。

 私の生体感知内で、数人の魔族の気配が消えた。

 まずい、かなりの手練がいるなこりゃ。


 現場に駆けつけてみると、そこにいたのは.......おおう、こりゃ凄い。

 金髪、鎧、ポニーテール。王道の女騎士様だ。


「.......この女、強いぞ」

「油断するな、囲め!同胞の仇だ!」

「何体でもかかってくるがいい、卑劣な魔族共め!私は絶対に.......」


「屈しない?まあ、いやでも屈して貰うんだけどさ」


「っ!?貴様、何者っ.......!?」

「あ、リーン様だ!」

「ちょっとちょっと、指揮官が突っ込んじゃダメなんじゃないですか、リーン様?」

「だって仕方ないじゃないですか、そこに人間がいたら殺すでしょう?」

「リーン様レベルの人間嫌いは、魔王軍でも珍しいっすよ.......」


 失礼な。

 まあ、こういう配下.......まあ皆歳上だから敬語使うけど、コミュニケーションって重要だよね。


「質問に答えろ!貴様、何者だ!」

「.......ところで、このうっさい女騎士はだれ?」

「この街の警備兵の兵長だった女みたいです。気をつけてください」

「.......うん、大丈夫です。この程度なら」

「き、貴様っ.......!」

「そっちも怒ってるみたいだけどさあ、私も怒ってるんだよ。よくも私の配下を何人も殺してくれたじゃん。遺体を運んでおいて貰えますか?」

「わかりました」

「それを許すとっ、思うか!」


 そう言って、風のような速さで、遺体に近づいた人を斬ろうとした。


 .......あのさ、私の前でそれが出来ると思うとか、舐めすぎじゃない?


「遅い」

「ガハッ!?」


 というわけで、軽く殴って普通に止めた。

 うん、弱い。


「ぐあああっ.......!」

「.......あんな軽いジャブにこんな威力出るとか、マジでリーン様やべえな」

「凄いよね。八歳であのヨミ様を倒しただけのことはあるよ」

「こ、こ、このぉっ.......!《中級治癒(ミドルヒール)》!」


 おお、回復魔法。

 自分で回復するタイプの魔法剣士か。厄介なタイプだ。

 まあ、それは『強ければ』の話なんだけどね。この女程度なら私の敵じゃない。


「き、貴様っ.......!この場で必ず、殺してやる!」

「さっきからうっさいな.......早く殺そ。あ、そうだ。超手加減したとはいえ、私の攻撃に耐えきったご褒美に、名前覚えといてあげようか?」


 まあ明日には忘れてると思うけど。


「魔族に名など明かすか!.......それに、その必要は無い。この場で私が、貴様を殺すからだ!」

「あっそ。いや無理だけどね。あ、一応私は名乗っといてあげるよ」

「(この人、絶対自分で名乗って相手を絶望させたかっただけだぜ)」

「(間違いないな)」

「そこ、うるさい!聞こえてるからね!」


 ちょっとカッコつけようと思ったのに台無しじゃん!


「ふん!貴様の名など興味もないわ!死ねえ!」

「ほいっ」

「げばあっ!?」


 馬鹿なんだろうかこの女。

 取り敢えず名乗っとこ。


「じゃあ、一応教えといてあげるね?私の名前はリーン。吸血鬼族にして、魔王軍幹部第五位、『鮮血将』リーン・ブラッドロード。よろしく、そしてサヨナラ」

「.............ま.......魔王軍.............幹部.......!?」


 おお、一瞬で顔が真っ青になったわ。

 幹部になって一番良かったことって、この肩書き教えるだけで、人間が絶望してくれることなんだよねー。


「そん.......な.......そん.......なの.......勝てる、わけ.......」

「あ、漸く理解した?じゃあ、死ね♡」


 完全に戦意喪失したらしい女の首に、思いっきり蹴りを入れた。

 首取れた。顔潰れた。


「ふー.......スッキリした」

「.......リーン様ってさ、俺ら魔族には優しいけど、人間に対しては俺らすら引くほど残酷だよな」

「まあ、私達も結構スッキリするけど.......なんかこう、グロいよね。十三歳の女の子が、首もいで清々しい顔してるって」


 外野うるさい!



 ※※※



「.......これで、全作戦終了です。このままここで数日の休息を取った後に、この先にある戦場にて、レイン様と合流、大都市の攻略に移る予定です」

「分かりました。.......あ、そういえば」

「何かございましたか?」

「あの女騎士、私のこと知らなかったんですよね。一応これでも幹部だし、ヨミと違って隠れているわけでもないのに、あんまり顔とか知られてないのかな?」

「それはそうでしょう」

「え、なんで?」

「リーン様は戦場で自分が関わった戦において、人間を一人も生かして返したことがないではありませんか」

「.............あー、そういやそうですね」


 そりゃ、広めたくても広まらないわな。まあ広めようと思ったことも無いけどさ。

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