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吸血姫と戦場

 幹部会議から三日後。戦場からゼッドさんが帰還し、代わりに私が指揮に向かう日になった。


「リーン、気をつけてね?」

「勿論。細心の注意払っていくから安心して。.......あ、ゼッドさん、お帰りなさい」

「リーン嬢、それにヨミ嬢、今帰還したぞ。リーン嬢はこの後、ワシの代わりに戦場に出てもらうことになっていたな。よろしく頼む」

「はい、大丈夫です。ちゃんといつも通り務めますから」

「.......ふーむ、やはり感慨深い。八年前、未だ幼く、未熟で、ワシの元で鍛えていた幼子が、今は魔王軍幹部、しかもワシより序列が上。さらに言えば、ワシの後の戦場を任せられるほどに成長してくれるとは」

「あはは、アロンさんには寂しいって言われましたけどね」

「ワハハ、彼ならばそのようなことも言うだろうな。.......おっと、そろそろ時間だろう。まあ、君は転移魔法が使えるから心配なかったか。羨ましいな」


 この五年で、私は武力もさることながら、魔法も随分と習得した。

 その中には勿論、あの超便利魔法な空間魔法の一つ、転移魔法も存在する。


「そうですね。でもまあ、そろそろ行きますよ」

「リーン、本当に気をつけてね?ボクも行きたいんだけど.......」

「ヨミは戦場に出るわけにはいかないでしょ?.......二ヶ月くらいで帰ってくるから」

「うん.......」


 しょぼんとするヨミ。なにこれ超可愛い。ちょっとギュッてしていいかな。


「.......リーン嬢。正気を失ったような目でフラフラしてないで、早く行った方が良いのではないかな?」

「.......はっ、私は何をっ!?.......で、では、そろそろ行ってきまーす.......」

(やはり、リーン嬢はヨミ嬢に気がありそうだな.......)


「えっと、じゃあ、行ってきます。.......あ、そうだゼッドさん。また闘技場壊しちゃいました、ごめんなさい」


「.......ん?待ってくれリーン嬢、今なんて言っ.......」


「じゃあヨミ、行ってくるね!《転移(テレポーテーション)》!」


「リーン嬢ー!!」



 ※※※



 私は指定位置.......人類vs魔族の戦争の最前線に転移した。

 ごめんヨミ。ゼッドさんに二人分怒られて。ほんとごめん。


「お待ちしておりました、リーン様。お越しいただき恐縮でございます」


 その声に振り向くと、そこにいたのは.......メイドさん。

 しかもただのメイドさんじゃなく、所々を戦いやすいように改造した服を着た、ロマン溢れる戦闘メイドさんだ。

 魔王軍準幹部、ダークエルフのシェリーさん。

 元々はフェリアさんの専属メイドだったんだけど、フェリアさんのサポートや周辺への気配りなんかをしてたら、いつの間にか準幹部に昇格していたという、魔族の間では割と有名な伝説を持つ人だ。

 ちなみにティアナさんとは親友らしい。主のフェリアさんが犬猿の仲なのに。


「こちらこそお待たせしてすみません。現況を教えて貰えますか?」

「かしこまりました。こちらへどうぞ」


 うーむ、やっぱり仕事の出来る感じがする人だなあ相変わらず。

 あと、なんかいい匂いする。メイドの嗜みなんだろうか。


「こちらをご覧ください。.......リーン様?」

「えっ!?.......あっ、はい!」

「では、説明させていただきます。現在の戦力は魔族が二千、人類が一万というところです。魔族の戦士であれば、問題なく押し戻せる数なのですが.......」

「その歯切れの悪さだと、何か問題があるんですか?」

「はい。.......どうやら敵側に、かなりの人数の付与術師が揃えられているようで、我々の強みである、種族特性や基礎ステータスの差が多少埋められてしまっています。.......都合の悪いことに、現在、魔王軍の付与術師は聖神国の教会騎士団との戦争に多くが出払っており、こちらに回す余裕が.......」

「今、こちらで戦ってるのってどこでしたっけ?」

「アルヴェラ王国、付与術師と結界術師を多く輩出する、防衛に特化した国です」

「.......てことは、付与術師も結界で守られてる.......か」

「如何しましょうか?現状は均衡状態を保っておりますが.......」

「人間って、捕虜は捕まえてますか?」

「えっ?はい、数十人程度ですが」

「じゃあ、もう少し捕まえてください。そうですね、二百人くらい」

「どうなさるおつもりで?」

「取り敢えず解放します」

「.......え?」

「ああ、説明が足りませんでした。勿論、解放はちょっとした細工はしてからですよ?」

「あ、ああ.......成程。細工とはどうするおつもりで?」


「体の中に爆弾仕込みます」


「成程.......え?」



 ※※※



「クソが、覚えてろ魔族共!」

「この屈辱、必ずや晴らしてやるぞ!」


「.......解放してあげたのにあの言い草.......ま、いいか。どうせすぐ死ぬんだし」

「.......恐ろしいことを考えますね、リーン様は」

「人間がヨミにやってきたことに比べればヌルいと思いますけどね。体内に《時限爆弾(タイムボム)》は仕込んだので、後は時が来ればボン。捕虜になってたともなれば、ちょっとは偉い人の近くに行くでしょうし、相当魔力を詰め込んだので、結構大規模な爆発になりますよ。流石に本拠地が燃えれば軍を退かせて消火せざるを得ませんし、その隙に結界を破壊して、街中の生き残りを皆殺しにしちゃいましょう」


 慈悲?ナニソレオイシイノ?

 里を滅ぼされた日から、そんなもんドブに捨ててきたわ。


(.......『鮮血将』リーン様.......人間に対しての容赦の無さとその鬼神の如き力で、魔族からの畏敬を集める吸血姫。.......流石の無慈悲さですね)


「.......あ、爆発しましたね。ここから数秒毎に爆発します。二百四十人いたので.......二十分くらいですかね。ちなみに、殺されても爆発するように術式を組んだので、それも問題ありません。あの結界は内側から外側への干渉は通すタイプなので、爆発の副次効果である一酸化炭素中毒による全滅は望み薄ですけど.......取り敢えず、結界は出来るだけ早く破壊。あと念の為、水中呼吸用の付与魔法か元素魔法を使える人を集めて、全員にかけさせて下さい」

「え、何故水中呼吸の魔法を?」

「あれって、水中呼吸というよりは、周辺の必要ないものを口に入れないようにして、人体に必要な空気のみを取り入れる魔法なので、煙の中でも有効なんですよ。さあ、時間が惜しいです、早く!結界が破壊出来たら私も出ます。.......一匹残らず殺してやる」


 さーてさて。蹂躙を始めますかね。

後はいつも通り、0時に投稿します!

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