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転生少年とステータス

短めです。

というか、不思議なことにリーンやヨミ視点の話を書いている時はめっちゃ指が進むのに、野郎視点で書いているときは全然進みません。何故だ。

「ゼノ、起きなさい。朝よ」


 母さんのその声に、元々半分は起きてた俺の頭は完全に覚醒した。


「.......うん、おはよう、母さん」

「ええ、おはよう。そして、五歳の誕生日おめでとう、ゼノ」


 そう、今日は俺の五歳の誕生日だ。

 .......まあ、『前世』を含めたら二十二歳だけどな。



 そう、俺には、前世の記憶がある。

城谷翔太(しろやしょうた)』という、日本の男子高校生だった時の記憶だ。

 ある日、クラスでいじめを行っていたグループが起こしたガス爆発事故によって死に、気がついたらこの世界に赤ん坊として転生していた。


『ゼノ』と名付けられた今世の俺は、A級冒険者の父と、その幼馴染だった母の元に生まれ、それなりに裕福な暮らしを送っている。



 ※※※



「.......それでは、今日まで生きる糧に困らなかったこと、そして我が息子ゼノが、五歳まで成長したことに、ミザリー様に深い感謝を。.......ゼノ、本当におめでとう」

「うん、ありがとうお父さん」

「さて、お前は五歳になった。ということは、ミザリー様より『能力下ろし』が成されたということだ。《ステータス》と言ってみなさい」

「分かった。《ステータス》」



 ***



 ゼノ(翔太城谷)  人間  Lv1

 職業(クラス):無職

 状態:健康


 筋力:20

 防御:20

 魔力:10

 魔防:15

 速度:25


 魔法:なし



 ***



 .......え?

 前世の名前が記載されてる!?


「.......おおっ.......素晴らしい。通常は10のステータスが普通、一桁も珍しくないというのに、20を超えるものまであるか.......!」

「凄いわゼノ!将来は優秀になること間違いなしね!」


 .......あれ?

 父さんと母さんには見えていない.......俺にしか見えないのか?

 なんだ、良かった.......。


「ああミザリー様、我が子にこのような素晴らしいステータスを授けて下さったこと、深く感謝致します.......!」

「ええ、ミザリー様には本当にもっと.......もっと感謝を捧げなければ.......」


 そんな風に祈りだした両親をよそに、俺は深く安堵していた。



 ※※※



 自室に戻って、俺はこれまでのことを考えてみた。


 出た結論.......この世界の人間は、前世の人間より少しおかしい。

 いや、おかしいってのは正しくないな。この世界ではこれが「正常」なんだから。前世の記憶がある分、俺が違和感を勝手に感じているだけ。


 その違和感とは、信仰心の強さ。

 誰も彼もが.......道行く人も、あそこの露店で店を開いてる豪快なおじさんも、裏路地でそっち系の夜の店を開いているお姉さん達も。職種も性格も違うけど、一つだけ絶対的に共通している点。それが、女神ミザリーへの信仰だ。

 確かに前世でも、宗教というものはあったし、それに伴う戦争などもあった。狂信的な信仰をしている人もいた。

 .......けど、この世界は少し違う。人間全員が、女神ミザリーを信仰.......いや、狂信している。そして同時に、ミザリーを信仰せず、邪神イスズを信仰する人間以外の種族、つまり魔族を酷く嫌い、絶滅させようとしている。

 まあ、俺だって『死と憤怒を司る邪神』なんてものを信じてる魔族の気持ちは分からないけど、流石に女神を信じすぎなんじゃ.......という気持ちはある。


 気になることはもう一つ。俺以外の転生者の存在だ。

『あの日』、俺はクラスの皆と一緒に、ガス爆発に巻き込まれた。ならば、他の皆もこの世界に転生している可能性はある。出来ることなら会いたい。

 けど、俺にはそれを確認する術が無い。すれ違った人が転生者だったとしても、俺には分からないんだ。

 今日、ステータスを得たことで、転生者は今世での名前の上に前世の名前が記載される.......ということはわかったけど、前世で言うところの『鑑定スキル』みたいなものもないこの世界では、人のステータスを勝手に見ることも出来ない。

 というわけで、転生者に会える可能性は望み薄だ。


(.......出来ることなら、もう一度.......会いたいんだけどな)


 前世で助けられなかった、()()に。


 千条夜菜。俺らの学年で、五指に入る美少女だった。

 けど、一年の時に、とある男の告白を断ったのがまずかった。その男は、後のいじめの主犯.......黒田新一の取り巻きだったのだ。

 逆恨みした男は黒田に復讐を依頼し、黒田も面白そうだからとそれに乗りやがった。

 それ以来、彼女はいじめられ続けたのだ。


(.......まあでも、この世界にいる可能性は低い.......か)


 あの日、彼女だけは理科室にいなかったから。

 黒田の一派が彼女をいじめていて、それに耐えていたことで、遅れたんだと思う。

 だから、千条さんはガス爆発に巻き込まれていなかったのかもしれない。

 .......それならそれでいい。黒田は死んだ。他の取り巻き連中も死んだし、別のクラスの取り巻きも、黒田がいなければ滅多なことはしないはずだ。

 それで彼女が、平和な暮らしを取り戻すことが出来たのなら.......俺はそれで満足だ。


「ゼノー?買い物に行くわよー」

「.......今行くよ、お母さん」


 そう自分を納得させながらも、胸のモヤモヤが取れないまま、俺は母の元へと向かった。

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