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吸血姫と元勇者お披露目会

「.......ふむ、成程。確かに美少女じゃな」

「でしょう?」

「小ささも相まって、レインよりも妖精さんみたいですねぇ」

「ヴィネル、ちょっとこっち来なさい」


 ヴィネルさんがレインさんの作りだした超小規模の台風に追いかけ回されるのをよそに、私たちは魔王の間に集っていた。

 .......いや、正確には集っていたというか、控えていた。


 現在、魔王の間はフェリアさんの空間魔法によって拡張されて、中には百以上の魔族たちが揃っている。

 幹部に選ばれている人たちの種族以外にも、魚人族、巨人族、小人族など、色々な種族がいるみたいだ。

 多分、各種族の長と種族間の精鋭クラスが集まっているんだろう。


「ほ、本当に今から、ヨミの存在を発表するんですか?」

「そうじゃが?こういうのは早い方が良い。下手にもったいぶると後々面倒が起こりかねん」

「い、いえ、そうかもしれないですけど.......やっぱり、人間を仲間にするっていうのに抵抗がある人もいるでしょうし.......」

「まあ、最もな意見じゃのう。じゃが主は少々、イスズ様によって統治されてきた魔族たちを舐めておるな。見ておれ」


 そう言って、魔王様はさっさと出て行ってしまった。

 .......大丈夫なんだろうか、本当に。



 ※※※



「あー.......おほん。親愛なる我が同胞達よ。此度は早くに集まってくれたこと、深く感謝しよう」


 その挨拶で、少しざわついていた部屋の中は静寂に包まれた。


「さて、主らを召集したのには当然理由がある。まず最初に.......人間共が戦線に投入し、我々にそれなりの被害を与えてきていた『勇者』。これを、一人の少女が止めることに成功した」


 その言葉に、部屋の中からおおっ.......という声が聞こえてきた。

 いやあ照れるな。


「その者を紹介しよう―――吸血鬼族の姫君、『吸血姫』リーン・ブラッドロード。さあ、前へ来とくれ」


 ...................ぇ?

 なんて?


「さあリーンちゃん、呼ばれてますよ」

「え、あのっ、ちょっ.......聞いてませんが!?」

「言ってませんからねぇ。さあ早く」

「えっ、待っ.......」


 抵抗虚しく押し出された私は、やむを得ずに魔王様の前へと向かった。

 魔族の皆さんの反応は様々。感心している人、驚愕している人、疑っている人。

 ああ、人前ってマジで苦手.......。


「.......よくやってくれた。今回の功績を称え、主には魔王軍準幹部の称号を与える。また、褒賞はこれじゃ。ただの短剣じゃが、主が使っても壊れない程度には丈夫に出来ておる.......これからも頑張っとくれ」


 .......えーっと、こういう時はなんて言えば.......

 くっ、前世での知識を思い出せ!


「.......光栄でございます、魔王様。魔王軍準幹部の件、しかと拝命いたしました。褒賞も受け取らせて頂きます。この新たな武器で、魔王軍に仇なす愚かな敵を、全て切り伏せてみせましょう」


 .......なんかちょっと違う気がしなくもないけど、乗り切ったか?


「うむ、よろしく頼むぞ。もう下がって良い」


 乗り切ったァーーー!

 セーフ!


 裏手的なところに戻ると、幹部の皆さんが出迎え.......てはくれたけど、なんだかポカンとしていた。


「.......あの、皆さん?どうかしましたか?」

「え?あー、いや.......あのさ、リーンって何処であんな言葉遣い覚えたの?八歳とは思えない礼儀正しさなんだけど。魔王様も顔にはださなかったけど、かなりびっくりしてたと思うよ」

「え?」


 .......しまった、言い方が大人びすぎてたか!


「え、え、えーと.......そう、お母さん!お母さんに習ったんです!」

「へー、しっかりとしたお母様じゃないの」


 ああ、天国にいるお母さん、ごめんなさい。

 貴方の娘は嘘をついてしまいました。

 人間共にならいくらついても良心は痛まないけど、この方々の前ではめっちゃ痛みます.......。



 ※※※



「.......さて、実はここからが本題じゃ。今回、密かに行われた作戦によって、『勇者』の身柄を手に入れることに成功した。そして.......その勇者、いや元勇者は、妾の名において魔王軍に加入させることをここに宣言する」


 直後、魔族たちの間でざわめきが起こった。

 当然といえば当然の反応だ。

 やはり戸惑う者が多いみたいだ。


「静粛に!.......勿論妾とて、なんの理由もなしにこのようなことは言わぬ。彼女には、とある事情があったのじゃ。それは.......」


 さて、ここからは賭けになるんじゃないか?

 ヨミの過去の話を聞いて、魔族の皆さんが彼女を受けいれてくれるかどうか.............ん?


 あれ?これ普通にいけるんじゃね?


 この場にいる殆どの人が、ヨミについての話を真剣に聞いて、人間達への怒りを見せ、ヨミに対しては同情的な感じがする。

 中には涙を流している人すらいるんだけど。


「さて、では来てもらおうか。元勇者にして、これから魔王軍唯一の人間となる存在。勇者として、歴代最強唯一無二の才を持っていた神級の天才.......ヨミ!」


「は、はい!」


 呼ばれたヨミが、返事をして皆の前に姿を現すと.......瞬間、部屋は拍手に包まれた。


 .............魔族、懐深っ!?

 本当にいい人たちばっかじゃん!魔王様の言う通り、魔族舐めてたよ!

 流石はあのイスズ様が創り出した種族達。国民性が違うわ。


「あの、えっと.......ご、ご紹介にあずかりました、元勇者のヨミです.......。えっと、精一杯頑張っていくので、よろしくお願いします.......」


 拍手喝采。

 魔族の皆さんは勇者から生まれ変わり、魔王軍の戦士となったヨミを、なんの躊躇もなく祝福してくれていた。

 ヨミも泣きそうになってる。なんなら私ももらい泣きしそう。


 .......本当に魔族に生まれてよかった。

 人間に転生していたら、私もクズの仲間入りを果たしていたのかもしれないと考えると、ぞっとする。

祭りです!今日は書きまくります!

.......でも今から寝ます!

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