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吸血姫と邪神3

キリのいいところで終わらせるため、短めです。

 心の修復が望めないようなら、勇者を殺すしかない.......か。

 正直、同じような被害者として気は進まないんだけど.......仕方がないか。

 これは戦争だ。私個人の感情でどうこうすべきじゃない。


「まあ、とは言っても、私とて勇者を簡単に見捨てる気はありません。無事に保護できた暁には、魔王を通じて、私も手を貸しましょう。.......今の彼女は、もう崩壊寸前です。数日前に1()()()()()()()が、聖十二使徒の第三位によって蘇生させられました。死によって、漸く苦しみから逃れられると思っていたのに、生き返ってしまったというのが、かなり崩壊を加速させてしまったようです」


 一度死んだ?

 勇者を殺したの?

 しかも、私と同い年、まだ5歳の女の子を?


「はい。彼女を痛めつけていた騎士が加減を間違えまして。勇者はレベル1現在の時点で全ステータスが100を超えていますが、神都の騎士ともなると、最低でもステータス300はありますからね。まず勝てませんし、当たり所によれば死んでしまいます。しかも聖十二使徒がいますから、無制限では無いにしろ蘇生が可能。ともなれば、遠慮も無くなるのでしょう」


 蘇生可能とはいえ、5歳の女の子を死ぬまで痛めつけたっての?

 しかも、それが人類のためになる、正義の行いだと信じきって?

 腐ってるなんてレベルじゃない。最早そのレベルを超えて、おぞましさすら覚える。


「.......そうですね。助けられないのが心苦しいです。.......しかし、彼女にばかり構ってもいられないというのが、正直な所。先程、貴方が思った通り、これは戦争です。正義も悪もない、より合理的に、より最善の行動を多く取った方が勝つ。今、勇者を助けるのは.......最善ではありません」


 そう言うイスズ様は、厳しい目をしていたけど.......ちょっとだけ、手が震えているのを、私は見逃さなかった。

 イスズ様も、勇者は助けたいんだ。

 でも、イスズ様の神託次第で、魔族が滅んでしまうかもしれない。

 そんな立場にあって、半端な、私情を挟んだ神託は下せないんだろう。

 やっぱりいい神様だ。



「.......さて、これで私の話は終わりです。わざわざお呼び立てして申し訳ございませんでした」


 いえいえ、そんな。

 美味しいお菓子もご馳走になりましたし、全然いいですよ。

 むしろもっと呼んでください。


「.......お菓子に惹かれたんですね。神にたかろうとは、なかなかいい根性してますね貴方」


 しまった、この人心読めるんだった。現在進行形で読まれてるのに、この会話の仕方に慣れすぎて忘れてた。


「心読まなくても分かりますよ。.......では、意識を戻しますね。私も、何度も連続して貴方に干渉出来るわけでは無いので、暫くはお菓子食べられませんよ」


 マジかよ!

 前世の知識があるのに、甘味がフルーツしかない私の気持ちわかります!?

 美味しいけど、私が求めてるのではないんですよ!


「自作すれば良いのでは?異世界系ハーレム主人公の定番でしょう、前世の知識を使って胃袋を掴むって」


 なんでそんなこと知ってるのかってのはさておき。

 甘いですねイスズ様。


 私に料理スキルなど、ない!!!


 チートハーレム主人公みたいな、いやに持ってる異世界料理知識も.......知識があったとしても、それを作り出せるスペックなど、私は装備していないのです!


「.......そ、そうですか。それはその、大変ですね?.......で、では、準備が出来たので、貴方の意識を送還します。修行、頑張ってください」


 ありがとうございます。大丈夫です、人間を全員ぶっ殺す為に、頑張りますから。

 あ、次はモンブランとかザッハトルテとかお願いします。


「結構図々しくなってきましたね貴方!?.......そ、それでは、今後の成功を期待しています!では!」



 ※※※



 目が覚めると、ベッドの上だった。

 寝惚け眼でも、イスズ様と話していたことはハッキリ覚えてる。

 美味しかったなあ、お菓子。

 .......あ、違うそっちじゃない。


 勇者の件。

 今のこの瞬間も、彼女は人間共に痛めつけられているのだろう。

 彼女には.......救いが無いんだ。


 私には、イスズ様と魔王軍という、私を匿ってくれて、一緒に戦ってくれる、志を同じく出来る人達がいた。

 でも、彼女にはそれが無い。何故なら、人間として、勇者として、正義の味方として生まれてしまったから。

 自分の『味方』が、クズしかいないから。


「.......ダメだ、変なこと考えるな」


 これは戦争だ。イスズ様の言う通り、正義も悪もない。

 私とて、人間を滅ぼすのは自己満足だ。自分が正義だなんて、これっぽっちも思ってない。

 そう、私達は正義の味方じゃない。牢に囚われて痛めつけられている哀れな少女1人の為に無謀な特攻をする、そんな『勇者』じゃないんだ。


 イスズ様の言う通り、勇者の保護は三年後。それまでに私は強くなっておかなきゃならない。

 イスズ様曰く、私の才能は生物第三位。今から修行とレベル上げを積めば、案外、勇者を倒せるくらいになるかもしれない。


 そうと決まれば、早速トレーニングだ。

 ここに来たことで、日課だったお墓参りも出来なくなってしまったけど、その分を人間を滅ぼす基礎体力作りに使える。

 .......吸血鬼の里のみんなも、復讐が果たされればそれで浮かばれるはずだ。

 そしてまずは準備運動から.......と、考えて、そこであることに気づいた。


「.......そういえば、今日は久しぶりに悪夢を見なかったなあ」


 ここ一週間、私を苦しめ続けていた悪夢を、私は今日は見なかった。イスズ様に干渉されていたおかげだろう。


「もしかして、その為に.......いやいや、ないない」


 ない.......よね?

もう(仮題)取りました。これでいきます。


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